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成長するクラウドインフラ市場でOracleが伸長 “レガシーの逆襲”

宿敵とも手を組む

 それでもOracleの躍進は注目に値する。

 パブリッククラウドに出遅れたOracleは、独自のアプローチで戦略的にビジネスを進めてきた。顧客のデータセンターにOCIやOracle Fusion SaaSを置く「Cloud@Customer」、パートナーがデータセンターでOCIサービスを展開できる「Oracle Alloy」など、Oracleのクラウドを顧客の自社サービスであるかのように利用できる仕組みをそろえた。

 長年の宿敵Microsoftと手を組むこともいとわなかった。

 Oracleは2022年に「Oracle Database Service for Microsoft Azure」を、そして2023年秋には「Oracle Database@Azure」を発表。その際、創業者で現在もCTOを務めるLarry Ellison氏とMicrosoftのSatya Nadella氏が顔をそろえたことは、大きなニュースとなった。

 業界ウォッチャーのBob Evans氏(Acceleration Economyの共同創業者兼アナリスト)は当時、「Larry(Ellison氏)の素晴らしい動き」と絶賛。MicrosoftがAzureデータセンター内に20のOracleのマルチクラウドデータセンターを構築し、それぞれ2000台のExadata Databaseマシンが含まれるという情報を紹介した。そして「Larryは、Microsoftを複数の分野で競合する宿敵関係から、密なビジネスパートナーへと転換するのに大きな役割を果たした」とした。

 Oracleの強みの1つが、これまで築いてきたデータベース、アプリケーションだ。これはAmazon、Microsoft、Googleとの大きな違いでもある。

 OracleのEMEA(欧州・中東・アフリカ)地区でテクノロジーエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのJason Rees氏はChannel Futuresに対し、「Oracleは最もコンスタントかつ包括的なAI戦略を持つ」と述べている。またOCIのインフラ、データベース、アプリケーションにまたがって「AI機能をポートフォリオ全体に組み込む」とアプローチを説明している。

 例えば、データベースでは最新の「Oracle Database 23c」で、AIベクトル検索などの機能を加えている。

 実はOracleをはじめ、"レガシー"と呼ばれている企業が盛り返しつつある。ライバルSAPの時価総額はこの1年で50%以上となり、IBMも11年ぶりに株価が高値を更新した。Oracle、SAP、IBMの復活ぶりをまとめたTechCrunchは、既存顧客基盤とリソースを生かしてAIやクラウドなどの新しいトレンドに適応している、と動きの背景を分析している。