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「エグレス料金」なしで挑む Cloudflareの「R2 Storage」

「エグいエグレス料金」

 エグレス料金は、ここ数年、業界で注目されているクラウドのコストだ。リージョンをまたがってデータをクラウドから「取り出す」(egress)際にかかる料金で、クラウドにデータを「入れる」(ingress)際は課金されないのが普通だ。

 開発者がWebサイトやアプリケーション構築にあたってデータを書き出す場合やオンプレミスにデータを戻す場合にもかかる。もちろん別のクラウドに移す際にも課金されるので、乗り換えを思いとどまる要因になる。

 AWSのS3の現在の料金表をみると、米国リージョンからインターネットへのデータ転送では最初の10テラバイトまで、1GBあたり月額0.09米ドルとなっている。10テラバイトを超えると、単価は段階的に下がってゆく。また最初の100GBまでが無料枠だ。

 データ転送料金は小さな額のようにも見えるが、クラウドの利用が増えるに従って無視できない額になる。膨れ上がっているユーザーも多いという。

 2019年10月付のThe Informationは「AWS顧客はデータ転送に多額を支払っている」と題して、AWS社内のセールスデータの内容を報じた。それによると、Appleは2017年、データセンター間のデータ移行に年間5000万ドル近くを払ったという。この額は、Appleが2017年にAWSに支払った総額7億7500万ドルの約6.5%にあたる。Appleだけではない。AWS顧客の10社中7社が、データ転送コストが前年よりも高くなっていると付け加えている。

 CloudflareのPrince CEOは2021年7月、公式ブログに「AWSのエグいエグレス」(AWS’s Egregious Egress)と題して投稿。AWSはネットワーク事業者から帯域幅を購入していて、そのコストは劇的に下がっているのに、エグレス料金はそれに見合うだけ下がっていない、と批判した。

 同氏は「帯域幅の卸売価格はこの10年で93%も下がっているのに、AWSのエグレス料金は25%しか下がっていない」との試算を披露した。さらに、AWSほどの規模ならダークファイバーやネットワーク機器のコストも取るに足らない額だとも主張した。

 エグレス料金を設けているのはAWSだけではない。Microsoft Azure、Google Cloudの3大クラウドは皆それぞれ同じような課金をしている。「専用回線」「パートナー接続」「定額無制限」などさまざまなオプションがあり、複雑な料金体系になっている。