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HashiCorpがIPO申請 クラウドインフラ自動化ツールで成長

 HashiCorpが11月4日、IPO(新規株式公開)を申請した。同社はITインフラの管理・運用を自動化するオープンソースのツール群で知られ、マルチクラウド、DevOps、DXの追い風を受けて急成長している。米証券取引委員会(SEC)に提出した届出書などから、このユニークな企業の姿をまとめてみよう。

自動化ツールで地位を確立

 HashiCorpは2012年、ワシントン大の学生だったイラン系アメリカ人のArmon Dadgar氏と日系三世のMitchell Hashimoto氏が共同で設立した。サンフランシスコに本拠を置き、従業員は現在、約1500人。社名はHashimoto氏の名前からとったものだ。

 昨年度(2020年1月ー2021年1月期)の売上高は2億1190万ドルで、前年(1億2130万ドル)の75%増と好調だ。ただ利益を出すまでには至っていない。収支は昨年度が8350万ドルの赤字(前年度は5340万ドルの赤字)で損失が拡大したが、今年2月以降、改善している。

 Bloombergは消息筋の話として、上場時の目標評価額を100億ドル以上と伝えている。さらに200億ドルに達する可能性もあるとみる関係者もいるという。

 同社の代表的な製品「Terraform」は、ITインフラのプロビジョニングツールでエンジニアの人気が高い。コードで設定を記述して管理・運用を自動化する「Infrastructure as Code(IaC)」のソフトウェア製品で、ネットワークやサーバー、ストレージの構成を定義し、管理の手間を削減する。

 また、オンプレミスとパブリッククラウドにまたがって使用でき、「全ての主要なパブリッククラウドとプライベートクラウドをサポートする」ことを特徴とする。大きなシステムでは管理者の作業時間を数週間短縮できるケースもあるという。

 このほかの製品として、機密管理およびデータ保護の「Vault」、アプリケーション・トラフィック管理の「Consul」、ワークロード・オーケストレーターの「Nomad」などがある。いずれもオープンソースを基盤に、特定のクラウドに縛られないベンダーニュートラルが特徴だ。

 これらの製品群は「HashiCorp Stack」と呼ばれる。個別の導入も可能だが、より大規模で複雑な課題を解決するために、スタックとして連携するように設計されているのだという。昨年6月には、マネージドクラウドサービスの「HashiCorp Cloud Platform」を発表して、個別ツールを提供している。