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EUが世界初の包括的AI規制案発表 その評価は

生体認証の例外容認に反対意見

 欧州のAI規制で焦点の1つとなったのが、生体認証技術だ。市民団体などから監視社会を実現するという反対が出ていた。中国政府がウイグル族への弾圧で世界の非難を浴びている中、AI対応監視カメラでウイグル民族を特定していると伝えられたことも、関心を高めた。

 規制案の発表の前の週、政治ニュースのPOLITICOが草案をスクープしたが、明らかになった内容では不十分として、欧州議会の議員の中から生体認証の禁止を厳格にするよう求める運動も起こっている。

 では、EUは生体認証にどのような姿勢をとっているのか? 公開された案では、「公共にアクセスできる空間において、法の執行を目的に、遠隔からの生体認証システムの使用を禁じる」と記している。群衆の中から顔認証対応カメラで特定の人物を見つけ出すといったことが想定される。

 だが、例外も認めている。例えば、「迷子を探す」「テロリストの攻撃の予防」など、ケースバイケースで対象外となるようだ。だが、例外規定には早くも反対の声が湧き上がっている。

 ドイツ・緑の党のAlexandra Geese欧州議会議員は「例外がたくさんありすぎるし、専断的だ」とThe Vergeにコメントしている。また、欧州ベースの権利保護団体European Digital Rights(EDRi)のLotte Houwing氏は「顔は1つしかなく、取り替えられない。そのデータを守ることができなければ、コントロールを失ってしまう」と声明で述べている。

 同じくEDRiでポリシーとキャンペーンを担当するElla Jakubowska氏はZDNetに対し、「十分と言うにはほど遠い。犯罪予測(Predictive Policing)、国境での移民向けのAI使用なども禁じるべきだ」とコメントしている。

 同氏はそれでも、現在、AIは野放し状態にあり、これが規制に向けた一歩になるとは評価している。