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新型コロナで脚光のZoom セキュリティやプライバシーの問題で一転逆風

 新型コロナ(COVID-19)が猛威を振るう中、在宅で仕事をするツールとしてビデオ会議の利用が急増している。中でも利用の簡単さや、無料の会議ができることなどで「Zoom」が躍進。日あたりユーザーは、わずか3カ月で20倍の2億人に激増した。しかし、Zoomは、ここ1週間ほどの間に噴出したプライバシーやセキュリティの問題で逆風を受けている。

Zoomのアプリにプライバシー問題

 外出禁止やテレワークへの移行などの措置で、Cisco Systemsの「Webex」や、Microsoftの「Teams」などビデオ会議の利用は爆発的に増えている。例えば、MicrosoftはTeamsのユーザーが3月中旬の一週間で1200万人増加したと発表している。これを大きく上回るのが、昨年上場したばかりのZoom Video Communicationsが運営するZoomだ。

 Webブラウザから利用できる手軽さや、無料版でも100人まで最長40分間使える安価さが受け入れられているようだ。ビジネスだけでなく、オンラインの飲み会“Zoom飲み”といった使い方も生まれ、一気に浸透した。株式市場が空前の大暴落をする中、Zoomの株価は急上昇。1月は70ドル台で推移していたが、3月に跳ね上がり、一時は164ドルの最高値をつけた。

 そのZoomにプライバシー問題が浮上したのは3月27日。同社がiPhone/iPad向けに提供するiOSアプリについて、不必要な情報をFacebookに送信している、とMotherboardが報じたことからだ。

 サードパーティのアプリやサービスがログインにFacebookアカウントを利用する「Login with Facebook」はFacebookのSDKを使うことで実装できる。Motherboardによると、Zoomもこの仕組みを使っているが、ユーザーがアプリを開くと、Facebookにデバイス情報などが送られるようになっていた。送られるデータには、タイムゾーンや都市、通信キャリア、さらにはターゲティング広告を可能にする広告識別子なども含まれていたという。

 「これは衝撃的なことだ。(Zoomには)対応するプライバシーポリシーがない」と、プライバシー擁護団体Privacy MattersのPat Walshe氏は、Motherboardにコメントしている。

 Zoomは2日後の29日、iOSアプリをアップデートし、Facebookにデータを送信するコードを削除した。しかし、これで落着というわけにはいかず、30日には、同意を得ずにユーザーデータを転送していたことがカリフォルニア州のデータ保護法に違反する、としてユーザーが集団訴訟を起こしている。