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「Libra」は世界を変えられる? Facebookが仮想通貨打ち上げ

必要とする多くの人には届かない?

 プラットフォームとしての展望はどうだろう。世界最大級の仮想通貨取引所であるBinanceが発表したレポートは、運用が始まる2020年上期時点では、仮想通貨の世界で匹敵するほどの規模を持ったライバルは現れないとする。

 短期的にはウォレットを通じて日常のアプリケーションとなり、中期的にはFacebookがデジタルアプリやECのためのオープンソース・ツールのプロバイダーとしての地位を高めるチャンスになるとみる。Libra自体は、アクセシビリティの向上とともに、そのボリュームを増やしていくだろう予想している。

 そして長期的には、決済業界の再編、新しい金融サービスの提供、資本規制の壁の低下による資金の流動化などにつながる可能性があり、「もし、大規模に採用された場合、新しい貿易通貨を出現させ、世界の“脱ドル”化を起こす」こともありうるという。

 政府・金融関係者が神経をとがらせるは、こうした懸念からだ。現在、国際送金は世界の銀行で組織するSWIFT(国際銀行間金融通信協会)の管理下にあるが、その枠を飛び出してゆくことさえ考えられる。Libraは、それほどに“破壊的”なアイデアを内包している。

 ユーザーの面からはどうだろう。Libraは「既存の銀行を利用できない17億人」の送金に「安価に、早く、簡単に」活用してもらうことを目標として掲げている。だが、その多くが暮らすアフリカ、アジアの通貨当局からは否定的な反応が出ている。

 インドの経済紙Economic Timesは当局者の話として、同国ではブロックチェーン通貨のトランザクションを利用することは禁じられており、Libraがインドで利用可能になることはない、と伝えた。

 Quartz Africaは、欧米からアフリカ大陸への送金需要が極めて大きい(今年、北アフリカを除く地域だけで400億ドル近くになる)ことを指摘しながらも、Libraは各国政府・当局の規制に直面するだろうと伝えている。

 Quartz Africaがインタビューした、ナイジェリアのフィンテックスタートアップSureRemitの役員Laolu Samuel-Biyi氏は「Libraに対してアフリカ諸国の政府が好意的になるとは想像しがたい。なぜなら、(Libraの普及は)彼らの力の多くを奪い取ることになるだけだからだ」と語っている。同氏は、現にジンバブエが昨年、Bitcoinを禁止した例を挙げた。

 Mashableによると、Libraプロジェクトの最初の兆候は昨年1月のCEOのMark Zuckerberg氏の年始メモ「暗号化と暗号通貨は、中央集権システムから力を奪い、人々の手に取り戻す」にみられるという。Zuckerberg氏の理想はここにあるのだろう。

 その構想は壮大だが、立ちはだかる壁はあまりに多い。