Infostand海外ITトピックス

100億ドルの契約は7月に決定か ペンタゴンのクラウド「JEDI」

“オタクたちのSWATチーム”の決断

 ペンタゴンは「単一ベンダー方式しかニーズに応えられない」として強い態度を取ってきた。その背景には、DDSの判断があったようだ。

 DDSの始まりから今年4月までの約4年間、トップを務めたChris Lynch 氏は、Federal Timesのインタビューに、「(反発には驚いたが、)もし圧力によって混乱が起こったら、成功のチャンスが少なくなることは明らかだった。だから、われわれは、ますます方針を貫くことを決めた」と語っている。

 Lynch氏は「今のペンタゴンにはなく、重要な課題を解決するために必要なこと」を検討し、商用エンタープライズクラウドという結論に達したとする。その要件は「誰かが書いたコードが機密システム上で動作し、その開発環境は秘密(あるいは最高機密)システムにまで達する」、また「全て完璧で穴がなく、いつでも世界のどこにいてもデプロイできるもの」だった。

 DDSは、2014年に米国のデジタル戦略で新設された「U.S. Digital Service」(USDS)の一部で、民間企業出身のテクノロジー専門家を集めたチームだ。シアトルの起業家であるLynch氏はスカウトされてマネジャーに就任。チームを作り上げ「Digital Guru」と呼ばれた。

 その業績では、2016年に連邦政府のWebサイトのバグ発見に懸賞金を出した「Hack the Pentagon」が有名だ。ちなみにITプロジェクトをサポートしてきたDDSは“オタクたちのSWATチーム”の異名を持つ。JEDIの名称も「スターウォーズ」から取ったものだ。

 JEDIを巡る騒ぎで、予定よりも長く勤めることになったというLynch氏は、DDSでの体験を「オタクの服務期間」(nerd tour of duty)と表現しながら、「(条件を)一つたりとも変更することはできなかった」「われわれは正しい道にあった」と振り返っている。

 業界では「単一ベンダーへの固執は、テクノロジーの変化の中で時代遅れに陥る危険がある」など依然として批判が出ているが、現時点で大きな障害はクリアされた。夏には進展がありそうだ。