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「テレコクラウド」時代到来? 5Gで進むネットワークの仮想化とクラウド

 通信にも仮想化とクラウドの波が押し寄せている。世界最大のモバイルイベント「Mobile World Congress 2019」(MWC)では、一部の国で商用化が始まった5Gが主役となったが、同時にクラウドも重要な話題となった。ITで実現したソフトウェアとハードウェアの分離が「モノリシックな」モバイルネットワークの世界でも始まりつつあることがうかがえる。

仮想化とクラウド技術をフル活用する楽天

 「MWCでは楽天のネットワークが一番話題になっている」と会場で記者会見した楽天モバイルネットワークの山田善久代表取締役社長は満面の笑みで語った。2017年にMNO(Mobile Network Operator)となることを発表した同社は現在、今秋のサービスインに向けてネットワークを構築中だが、そのネットワークアーキテクチャはこれまでのMNOのそれとは大きく異なるからだ。

 楽天を率いる三木谷浩史社長はMWCの基調講演で、完全に仮想化し、クラウドを活用したネットワークアーキテクチャを披露。「アンテナから全てがソフトウェアで専用のハードウェアは使わない。全てがソフトウェア化され、クラウドに置かれる」と構築中のネットワークの特徴を説明した。各機能がソフトウェアになるので、動かすのは安価なサーバーで良いという。「われわれのハードウェアは全てコモンなハードウェアだ」と三木谷氏は述べている。

 そのメリットはコストだけではない。5Gのアップグレードも簡単で、管理も自動化される。特にメンテナンスは通常のネットワークオペレーターより少ない人数で済み、障害があった際の復旧も簡単にできるという。

 そして楽天が組んだパートナーがCisco Systemsだ。Ciscoのモビリティ&5G担当グローバルディレクター、Bob Everson氏は「グリーンフィールド(何もない状態)から構築するので、スクラッチから意思決定ができた。そのため革新的なアプローチを取ることができた」とZDNetに語っている。

 無線通信ネットワークを構成するRAN(Radio Access Network)を例にとり、「RANはモノリシックなシステムでソフトウェアとハードウェアが統合された形で実装されるのが普通だが、われわれは仮想化を進めた」と説明。完全に仮想化されたクラウドベースのネットワークが出来上がりつつあるとした。

 楽天とCiscoとの蜜月関係は、三木谷氏がCiscoのCEO、Chuck Robbins氏の後に基調講演を行ったことからもうかがわれる。Robbins氏は、米国の大手キャリアVerizonがCiscoの技術を利用してソフトウェア定義(SD)WANを構築していることなどに触れながら、5Gのネットワークはソフトウェア定義が重要になるとした。