Infostand海外ITトピックス

AI搭載「自律型致死兵器」が近い? テクノロジー業界の悩み

 AIには、映画「ターミネーター」に出てくるような自動殺人マシンを野に放つかもしれないという深い懸念がある。テクノロジー企業の中にも憂慮する者は多く、従業員が団結して抗議し、会社を動かした例も出ている。だが、AI兵器は次々と現実のものとなってきており、開発も簡単に止まりそうにない。

AI殺人マシン?「ATLAS」

 今年2月中旬、米陸軍が連邦政府調達サイトのfbo.govに「ATLAS Program」という新しい技術開発についての公告を出した。ATLASは「Advanced Targeting and Lethality Automated System」(高度標的・致死性自動システム)の略だ。

 公告では、「陸軍は、火器制御技術と統合された自動標的捕捉技術を、近年のコンピュータービジョンとAI/機械学習の進歩で強化したいと考えてきた。これによって戦闘車両の標的の特定、識別、交戦を、手動による現在のプロセスより、3倍に高速化したい」と説明。産学の参加を求めている。

 必要とする画像処理の技術には「標的追跡」「標的認識・分類」「人的標的」「車両標的」などにフォーカスするとの説明もある。AIで標的を認識し、自動的に撃破する火器を搭載した車両。戦車のようなものだと考えられる。

 Quartzは「米陸軍の新しいイニシアチブは『自律型致死兵器』(LAW)に向けた重要なステップを示唆している」と伝えた。「LAWS」(Lethal Autonomous Weapon Systems)は、人間を介することなく致死力を行使しうる兵器システムを言う。

 ワシントンDCのシンクタンク「CNAS」(新アメリカ安全保障センター)の技術・安全保障プログラム・ディレクター、Paul Scharre氏は、「自動あるいは半自動のミサイル防衛システムは、既に数百も運用されているが、ATLASは地上戦闘車両に適用する(米国で)初の例になるだろう」とQuartzに述べている。

 一方、防衛産業専門メディアのBreaking Defenseは、「ATLASは標的を識別するだけで、発射はあくまで人間が行う」「軍は『Lethality』(致死性)という言葉を、兵器の性能を高めるという意味で使ってきており、一般に想像される殺人とは違う」など、軍関係者の説明を紹介している。

 ATLASが、殺人マシンであるかは議論が分かれるのかもしれない。しかし、AI技術を活用した非常に高度な兵器は、既に世界のあちこちで登場しつつある。