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“企業向けクラウド端末”の「HoloLens2」 その向こうにある世界

デジタルの「ミラーワールド」

 Microsoftは発表に合わせて、HoloLens2のパートナー企業とのさまざまな活用例を動画で公開した。マニュアルを見ながらの配線の修理、エンジンの組み立て、建設中の建物の完成形を見ながらの作業――などを挙げている。同社の言う「firstline worker」(小売業やサービス業での顧客対応、製造業での現場作業などに従事する人)の現場だ。

 基調講演でNadella氏は「われわれの生活を変える技術ブレークスルーは、テクノロジー企業だけでなく、小売、ヘルスケア、製造業などの企業からもやって来る」「そうした対象に向けて、われわれはテクノロジーを構築している」とも述べている。その先には何があるのだろう――。

 Wired誌の創刊編集長で著述家のKevin Kelly氏は、ARが「ミラーワールド」をもたらすと予測する。この世界は、今はARヘッドセットを通して垣間見えるだけだが、いずれ「現実世界のあらゆる場所やモノ、あらゆる通り、街灯、建物、部屋などのフルサイズの『デジタルツイン』(digital twin)が存在する鏡の世界」が出来上がるのだという。

 デジタルツイン(デジタルの双子)は、現実の対象物と同じデジタルデータを作成して、産業(特に製造業)で、企画、設計、製造、管理などのあらゆる段階で活用するというコンセプトだ。HoloLensが当面のターゲットにしているのは、このデジタルツインの企業向けクラウドサービスだろう。目前には広大な世界、そして市場が広がっている。

 Kelly氏は、ミラーワールドは「世界の残りをデジタル化する第三のプラットフォーム」だと言う。第一は「Web」、第二は「モバイルで動くソーシャルメディア」、そして第三がミラーワールドになる。

 ミラーワールドは「全てのモノと場所が機械に可読で、アルゴリズムが支配する世界」だという。Kelly氏は、ミラーワールドは今、黎明期にあるとした上で、「誰であれ、これを制した者が、歴史上、最も裕福で力を持つことになるだろう」とも述べている。