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5Gで覇権を狙う中国 インフラで米国に大きく先行

5G機器は皆「Mede in China」

 おりしも、“米中貿易戦争”のまっただ中、無線通信や5Gは、その重要項目で国益に直結する。ZTEがイランなどへの輸出規制違反で米企業との取引禁止の制裁を受けたことや、シンガポールのBroadcomが年初にQualcomm買収を図った際の米政府の介入も記憶に新しい。Qualcommは無線通信で多くの特許を持ち、5G対応チップの研究開発にも力を入れてきた。

 5Gは、人間の移動通信のための技術だった3G、4Gとは異なり、IoTを考慮した通信規格だ。自動運転車をはじめ、工場のロボットから家庭のスマート電球まで、さまざまなモノをつなぐインフラとなる。効率よく実現する5Gを実装すれば、多くのサービスと“ネットワーク効果”が生まれる。

 「5Gを早期に実装した国は、大規模かつ持続したマクロ経済メリットを得られる」「5Gがもたらす潜在的なメリットは、都市が企業や住民を引き付けるにあたって重要な差別化になる」(Deloitte)ということだ。

 Deloitteのレポートの発表は、周波数帯を管理する連邦通信委員会(FCC)が5G周波数帯の入札ルールを発表した直後だった。通信政策への提言も含み、「米国が競争優位を保ち、最終的にリーダーとなるためには、5Gに向けた競争を注意深く評価しながら、迅速にアクションにつなげる必要がある」と警告。実装時間を短縮するポリシー調整や、無線キャリアが協調できる環境づくりなどを方策として挙げている。

 この5Gへ向けたレースはさらに安全保障まで絡んで、話は複雑になっている。

 米国当局は、中国製ネットワーク機器にスパイ活動の懸念を持っており、数年前、キャリアに対してHuaweiやZTE製の無線通信機器を調達しないよう勧告した。年初には5Gネットワークの国営化を提案する動きもあった。

 同様に中国製機器阻止の動きのあるオーストラリアでは、The Sydney Morning Heraldが中国メーカーの機器を閉め出すのは難しいだろうと伝えている。

 Huaweiで豪州・ニュージーランド地域を統括するJeremy Mitchell氏は同紙に、Huaweiからの調達を禁止するのは「ばかばかしい」と語った。Nokiaの機器は中国政府が所有する上海の工場で製造されており、Ericssonも同じようなものだとする。「サプライチェーンには中国が組み込まれている。Huaweiであってもなくても、豪州の5Gネットワークは“中国製”になるのだ」