Infostand海外ITトピックス

GoogleがAIの兵器利用を放棄 議論はテクノロジー企業と国の関係に

倫理、安全保障、ビジネス――Googleの難題

 AIの兵器利用を危惧する声がある一方で、こうした動きに反発する声もある。

 保守系誌のNational Reviewは「米国は世界の歴史を通じて自由と善の最大の力で」「ときには武力をもってその任にあたった」とした上で、「(世界のほとんど誰より、よい生活を送り、自由を享受している)Googleの社員が防衛のために働くことを拒否するのは、“恩知らず”なことだ」と厳しく非難した。

 さらに別の記事では、「中国、ロシア、それにフランスなどの国がAIの国家戦略を持っているのに、米国は大きく遅れている」と指摘。GoogleのAI利用原則は流れに「逆行する」ものであり、「国家安全保障に携わる者は、シリコンバレーのパートナーの力を借りて(技術企業との)議論を発展させるべきだ」と主張している。

 Business Insiderは、Googleが直面する「ビジネスと倫理とのバランス」という難しさを指摘する。

 Greene氏は、Project Mavenの契約を更新しないと約束した一方で、クラウド事業を成長させるというミッションを負っている。Business InsiderはGoogleの幹部が「クラウド事業を2020年までに広告事業と同じぐらい、またはそれ以上に大きくする」と述べていたことを引用しながら、連邦政府が年間950億ドルを技術に費やしていること、国防省の技術への支出はその半分近くの464億ドルに達していることを指摘する。

 つまり、GoogleがAIの軍事利用を拒否する場合、大市場を自ら捨てることにつながるというのだ。

 一方、クラウドでのライバルAmazon、IBM、Oracleなどは、AIとクラウド技術を軍に提供しようとしている。例えば、Amazonは100億ドル規模の契約を国防省と締結すると見られている。こうした1社独占契約に、GoogleはOracleらと共に抗議しているが、もし複数契約になったとしてもGoogleは参加しないことになる。

 従業員の良心、ビジネス、保守派の批判。Business Insiderは、それぞれが、どのような影響を与えていくのかに注目しているという。