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VRはメインストリームになるのか? 2016年から見る

課題は、価格、ファーストコンタクト…

 欧米の多くのネット企業が参加するオンライン広告の推進団体IAB(Interactive Advertising Bureau)は9月下旬、レポート「Is Virtual the New Reality?」(バーチャルは新しいリアリティか?)をまとめた。特にVRの広告媒体としての可能性について調べたものだが、その中で、コンシューマーに広く受け入れられるにあたっての弱点と、懸念される点を分析している。挙げたのが(1)「高価格」(2)「第一印象での失敗」(3)「閉ざされた体験」(4)「既存メディアからの孤立」――の4点だ。

 「高価格」はしばしば指摘されている。Oculus Riftは600ドル、HTC Viveは800ドル。さらに、どちらも1000ドル超のハイスペックのWindows PCが必要だ(Oculusは500ドル程度のPCで利用できるようにする技術を開発すると発表したが、なお計1000ドルを超える)。PSVRは400ドルだが、接続するPlayStation 4本体や、必須周辺機器のカメラをそろえれば、800ドル程度になる。

 「第一印象での失敗」は、過大な期待を持ちながらVRに触れたユーザーが、つまらない、ひどいと感じたり、気分が悪くなる(VRには特有の“酔い”がある)という体験をするケースだ。ファーストコンタクトの失望は、コンシューマーをVRから何年も遠ざける結果になるかもしれない、という。

 「閉ざされた体験」は、VRが外界と切り離される没入型であるため、近年のサービスで重要なソーシャルの要素が(少なくとも今は)欠落していることだ。仮想世界で孤独にならないためには、誰かが同じ空間にいることを感じられるソーシャルアプリが求められる。

 「既存メディアからの孤立」は、VRコンテンツが既存メディアの延長上にはないということ。例えば、既存のビデオ資産を、360度全周ビデオやVR対応ビデオに再利用することはできない。このため広告や出版の業界は、VRのコンテンツをどう開発するかを考えねばならないという。

 それぞれ興味深い指摘だが、だいたいは解決されそうだ。新しいコンシューマー向けデジタル製品の価格は、いずれ下がるものだ。手頃なモバイルVRもある。ソーシャルVRアプリはFacebookが実際に開発中だ。コンテンツもCG系は活発に制作されている。

 VRが主流になるのを阻むのは、兄弟技術であるAR(拡張現実)の存在かもしれない。