クラウド特捜部

Windows AzureからMicrosoft Azureへ

 4月に米国サンフランシスコで開催された米Microsoftの開発者向けカンファレンス「Build 2014」では、「クラウドファースト」「モバイルファースト」というキーワードとともに、「オープン性」を大きな柱としてアピールするようになった。

 今回は、これらのテーマのうち、Microsoftの「クラウドファースト」に関して解説していく。

Windows AzureからMicrosoft Azureへ

 Microsoftでは、自社のクラウドサービス「Windows Azure」を、を3月末にMicrosoft Azureへ名称変更した。“Windows”という名称のために、Windows OSやWindows用のアプリケーションしかサポートしていない印象を与えていたからだという。

 実際にはIaaSを始めたことで、Linuxベースの利用も増えてきていた。こうしたことから、Windowsという製品名ではなく、Microsoftという社名をクラウドサービスに冠するようになった。

 そのMicrosoft Azureは、25万個のWebサイトが稼働し、2000兆個のストレージオブジェクトが生成され、毎秒200万件リクエストを処理しており、2010年のサービス開始後4年で、世界有数のクラウドサービスへと成長している。

Microsoft Azureは、巨大なクラウドサービスに成長してきている。規模としては、AWSやGoogleなどに匹敵するほどのIaaSやPaaSになってきている

 Microsoft Azureが持つフレキシブルな拡張性の例として、米Respawnが開発したFPSゲームTitanfallのオンラインゲームサーバーとして使用されている。単なるマップなどの管理だけでなく、NPCキャラクターをAIでコントロールしたり、クラウド側で物理演算をしたりすることで、今まで単体のコンソールゲーム機ではできなかった新しい世代のゲームソフトになっている。実際、Titanfallは、常時10万台以上の仮想マシンによって構成されている。

Titanfallでは、10万台の仮想マシンをMicrosoft Azureで動かして、オンラインFPSゲームを実現している

 また、Xbox 360用のHalo 4では、Microsoft ResearchのHPC(High Performance Computing)グループと協力して、Microsoft Azure上にFPSオンラインゲーム専用の汎用フレームワーク、Orleansプロジェクトを開発した。Orleansプロジェクトでは、NPCキャラクターの行動モデル(Actorモデル)のプログラミングを容易にしたり、動的に変化するゲームマップの管理、ユーザー数によって仮想マシンの増減をオートマチックに行ったりするシステム管理側の機能などが開発された。

 ちなみにOrleansプロジェクト自体は、Microsoft Azureの一般的なサービスとしては提供されていないが、CodePlexにおいてサンプルコードが公開されている。

Halo4では、OrleansというマルチプレイFPS用のフレームワークがMicrosoft Azure上に構築された。NPCのプログラミングやマップ管理、サーバー管理なども行える
Orleansは、クラウドベースのマルチプレイゲームのフレームワークとなっている。現在、サンプルコードがCodePlexで公開されている

 また、2月に開催されたソチ オリンピックのネット配信(米国)では、NBCがMicrosoft AzureのMediaサービスを使用することで、1億人のユーザーがWebやモバイルで視聴した。特に、アイスホッケーのアメリカvsカナダの試合では、210万人のユーザーがHDクオリティの映像を同時にネット視聴していた。

 これらのことは、Microsoft Azureのクラウドサービスとしての規模、急激な負荷の上昇に対するフレキシビリティの高さなどを表している。オンラインゲーム、オリンピック映像のネット配信などは、非常に高い耐障害性、高度な負荷分散機能などが必要になるので、巨大なクラウドサービスのインフラが整っているかどうかを判断するにはぴったりな案件だ。Microsoft Azureのタフさが証明されたといえるだろう。

ソチオリンピックのネット配信では、HD映像の配信も行われた。PCだけでなく、スマホやタブレットなどにも配信された

 価格に関しても、Windowsインスタンスの仮想マシンの価格は最大27%、ストレージ(ブロックBlob)の価格が最大65%(LRS)安くなった。このあたりは、ライバルとなるAmazon Web Services(AWS)と対抗するため、AWSなどの値下げに対抗して価格改定が行われたものだ。

(山本 雅史)