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IIJ、Azureクラウドへの閉域網接続を可能にするネットワークサービス

複数クラウドとオンプレミスを連携させたセキュアなシステム構築が可能に

 日本マイクロソフト株式会社と株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は10日、クラウドサービス事業において提携を発表した。IIJの「IIJ GIOサービス」と、日本マイクロソフトの「Microsoft Azure」を連携させたマルチクラウドサービスを提供する。第1弾として、IIJは日本初のMicrosoft Azure閉域網接続サービス「ExpressRoute」パートナーとして、同サービスの受注活動を10月から開始するとのこと。

左から、日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の佐藤久氏、日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏、IIJ 代表取締役社長の勝栄二郎氏、IIJ 専務執行役員 クラウド事業統括の時田一広氏

閉域網でMicrosoft Azureへ接続可能に

 IIJは、同社のバックボーン上に顧客専用のプライベートネットワークを構築する「IIJ GIOプライベートバックボーンサービス」を経由し、ExpressRouteを利用できる環境を提供。「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」として、10Mbps、50Mbps、100Mbps、500Mbps、1Gbpsという接続帯域ごとの課金メニューを用意した。

 東京および大阪のアクセスポイントを通じて、社内ネットワークから同サービスのゲートウェイに専用線やWAN回線経由の接続を行うことで、Microsoft Azureリソースへの閉域網接続ができるようになる。インターネットの公衆回線網を経由しないため、より信頼性が高く、強固なセキュリティ環境を維持しながら、Microsoft Azureが利用できる。

 これにより、オンプレミスと複数のクラウドとの間で、データやアプリケーションを自由に、安全に移動し、配置したいニーズに応えることができ、Microsoft AzureとIIJ GIO、オンプレミスという3つの環境を最適な形で選択し、シームレスに連携。拡張性、俊敏性を持ったマルチクラウドサービスの利用メリットを活用できる。

 具体的には、オンプレミスに蓄積された、個人情報など機密性の高いデータをクラウド上から利用したり、クラウドストレージへのバックアップやディザスタリカバリのためのレプリケーションを行ったり、高解像度の動画や画像など、大容量のデータを信頼性の高い経路を利用して、安全に低コストで送信したり、といったことが可能になる。

 接続回線は、NTT東日本、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンクテレコム、NTT西日本、TOKAIコミュニケーションズ、KVH、アルテリア・ネットワークス、ケイ・オプティコムの9社へのマルチキャリア対応とのこと。

閉域網を利用することで、セキュアで安定したサービスが実現するという
Microsoft Azure閉域網接続サービス「ExpressRoute」を利用する
9社のネットワークに対応したマルチキャリアサービス
お互いの強みを生かしてマルチクラウドサービスを提供

 日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の佐藤久氏は、「Microsoft Azureは、オープン化とエンタープライズ対応機能の充実に取り組んできた。データのやりとりは、Azureに閉域網性に接続し、公衆回線網を利用しないために、セキュアな環境でリスクを回避できること、さらには、レイテンシの低減などによる安定性も実現できる。エンタープライズニーズに対応し、オンプレミスとクラウドの融合をシームレスに実現。日本で本格的なエンタープライズクラウドサービスがスタートし、新たなフェーズに移行することになる」と位置づけた。

 また、IIJ 専務執行役員 クラウド事業統括の時田一広氏は、「IIJ GIOサービスでは、1200社2000システムが稼働している。IIJ GIOサービスの顧客が、Microsoft Azureの一部を使いたいという場合や、Microsoft AzureのユーザーがIIJ GIOサービスを利用したいという場合に簡単に接続することができる。これまでクラウドで利用されていた用途ではなく、アプリ開発やテスト、ビッグデータやIoT、メディア配信、ハブリッド型アプリケーション、基幹アプリケーションといった、これからクラウドで活用される用途での利用シーンを想定している」と語った。

「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」の利用イメージ
IIJ GIOとMicrosoft Azureが相互に補完しあうマルチクラウド環境
マルチクラウドの利用シーン
IIJ GIOとMicrosoft Azureがもたらす価値

今後3年間で200社への提供を見込む

 なお、MicrosoftはExpressRouteに関して、欧米で数社のパートナーと協業しサービスを提供している。IIJは国内初のパートナーとして、自社のバックボーン設備とMicrosoft Azureデータセンターを相互接続し、プライベートネットワークを構築して、サービスを提供することになる。またEquinixが、ExpressRouteのグローバルパートナーとして展開しており、今後、日本においてもパートナー契約を進めることになる可能性が高いという。

 IIJ 代表取締役社長の勝栄二郎氏は、「当社は、2010年5月からIIJ GIOサービスの基盤に、マイクロソフトの仮想化技術を採用した経緯があり、2013年実績では、IIJ GIOサービス利用者の55%以上、600社以上がWindowsとの組み合わせで利用している。クラウドサービス市場の広がりとともに、用途にあわせて複数のサービスを適宜使い分けたいというニーズが高まっている。今後はマルチクラウドサービスが主流になると考えている。この市場に向けて両社で提案活動を行っていく。今後3年間で200社への提供を計画している」とコメント。「他社のパブリッククラウドとの連携も可能だが、いまはそれを検討する段階にはない」とした。

 また、日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は、「オンプレミスからパブリッククラウドまで連携したサービスを提供できるのがマイクロソフトの特徴。クラウド時代においてもパートナーシップは重要だと考えている。IIJは、新たな技術を早期に評価、導入していただき、スピード感をもって取り組んでいただけるパートナーの1社。今回の提携により、細分化するクラウドニーズに対応できる体制が整った」と述べている。

握手をする、日本マイクロソフトの樋口社長【左】と、IIJの勝社長【右】

大河原 克行