クラウド特捜部
国内データセンター開設から4カ月、Microsoft Azureの今を聞く
(2014/6/25 06:00)
Microsoftならではの“ハイブリッド”が強み
――クラウドサービスのライバルとしてはAmazon Web Services(以下AWS)が挙げられます。Azureは、AWSに比べるとまだサービスメニューがそろっていないという指摘もありますが?
AWSに比べると、Azureはサービススタートが約4年遅れました(注:AWSのAmazon EC2は2006年8月スタート、AzureのPaaSは2010年1月の正式スタート)。クラウドサービスのスタートが遅れましたが、新しいCEO(注:サトヤ・ナデラ氏)に変わってから、Azureへの投資や提携を積極的に行っています。
在職中にAzureにおいてOracleとの提携、SAPとの提携、先日はsalesforce.comとの提携が行われるということは、信じられない事態なんです。ある意味ライバルだった企業と提携しても、Azureを多くのお客さまに使っていただけるプラットフォームにしていこうと考えているのです。
Microsoft自体は、企業が社内に持つサーバーがすべてクラウドに移行するとは考えてはいません。今後10年を予測しても、オンプレミスのサーバーは絶対に存在します。こういったオンプレミスサーバーとクラウドを透過的に利用できる環境を構築していくことが当社にとって重要になっています。
サトヤ・ナデラ(CEO)は、ハイブリッドな環境を構築していけるように、Windows OSやサーバーアプリケーション、管理ツールなどを、Microsoft全体で開発を進めています。
こういった部分はAWSにはありません。Microsoftでは自社が持つオンプレミスの資産を生かしながら、ハイブリッドのクラウドサービスを構築しようとしています。以前のようにすべてを当社の製品で囲い込むのではありませんが、オンプレミスのソフトウェア群をクラウドサービスに統合していけるのは、当社だけが持つ強みだと言えるでしょう。
ただ、われわれとしてもすべてのサービスを自社のテクノロジーだけで作るのではなく、OSSなど多くのコミュニティで利用されているテクノロジーを積極的に採用して、Azure上でサービスを提供していくつもりです。
新しいサービスに関しても、AWSに負けないようにリリースしていきたいと考えています。実際、IoT分野などに向けては、Microsoft Azure Intelligent Systems Serviceなどのプレビューを開始しています。このサービスを利用すれば、ネットに接続されているハードウェアやセンサーなどからの生成されるデータを収集して、セキュアに接続・管理することができます。
さらに、Intelligent Systems Serviceで収集したデータは、HDInsightやPower BI for Office 365などのビッグデータを扱うサービスを利用して、分析することが可能になっています。
――今後、日本マイクロソフトとしては、Azureをどのようなユーザーに利用してもらいたいですか?
私としては、マイクロソフト製品をお使いになるすべてのお客さまにAzureを利用してほしいと考えています。まずはこの一年で、日本マイクロソフトが直接営業担当を置いている一部上場企業に対して、積極的な営業を行ってAzureを利用してもらうようにしたいと考えています。
また、(マイクロソフトボリュームライセンスの)Enterprise Agreement(EA)契約を行っている企業にも、できるだけ早くAzureを使ってもらえるように、積極的に営業やコンサルタントを行っていきます。
もちろん、われわれが直接営業するだけでなく、AzureパートナーというAzureを販売していただくパートナーやシステムインテグレータとも協力して、Azureのエコシステムを構築していきたいと思っています。
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佐藤氏とのインタビューでは、Azureの新しいサービスやユーザー事例に関して、すぐにでも発表したいことがあるようだ。このあたりは、発表スケジュールがあるため、今回のインタビューでは話をしていただけなかった。ただ、多くのパートナーから顧客からのAzureに対する関心が高く、積極的にAzureの採用を考えているという話を聞く。このため、多く企業でAzureが利用されていくのも時間の問題だろう。
米国では、政府向けのAzureというサービスが提供されているため、日本国内でもある程度のビジネスになるようなら、中央官庁や地方公共自治体向けのAzureというのもあり得るだろう。