Windows Server 2012研究所

Windows Server 2012 R2の使命は「クラウドOSビジョン」と「Server 2003からの移行促進」 (Windows Server 2012 R2が持つ“裏の役目”)

Windows Server 2012 R2が持つ“裏の役目”

 実は、Windows Server 2012 R2は、クラウドOSやマルチデバイス対応だけでなく、Windows Server 2003/2003 R2からのマイグレーションを促すという“裏ミッション”があるんです。

 日本国内では、Windows Server 2003が45万台ほど残っているというデータがあります。これをWindows Server 2012 R2に移行させていきたいんです。

 Windows Server 2003/2003 R2はご存じの通り、メインストリームサポートが2010年7月で切れ、延長サポートも2015年7月に終了します。現在、クライアントではWindows XPのサポートライフサイクル終了が大きな話題になっていますが、サーバーOSのライフサイクル終了は移行や検証に時間がかかるため、2015年7月でも時間が足りないくらいです。

2015年には、45万台のWindows Server 2003がサポートライフサイクルの終了を迎えるため、どのようにWindows Server 2012 R2などの新しいOSへマイグレーションしてもらうかが、重要なミッションとなる

 残っているWindows Server 2003/2003 R2をWindows Server 2012 R2にマイグレーションさせるためには、それなりに魅力のある機能が必要なんです。

 そのための重要な機能が、Windows Server Essentialsなどで提供されてきた機能の取り込みです。今までのWindows Server 2012などでは、中小企業向けのWindows Server Essentials(Essentials版)だけに、クライアントPCのバックアップ機能や、簡単に利用できるコンソール画面などが提供されていました。

 ところが、Windows Server 2012 R2では、StandardやDatacenter上でも、こうしたEssentials版だけに提供されていた機能(Essentialロール)が利用できるようになりました。25台までの制限といった、Essentials版特有の制限もありませんから、EssentialsからStandardなどへのマイグレーションが行いやすくなるでしょう。

 もう1つ、Windows Server 2012 R2は、多種多様なクライアントデバイスに対応したことです。Windows Server 2003の時代は、ほとんどがクライアントがWindowsパソコンでしたが、2013年になりiPhoneやiPad、Androidスマートフォン、Androidタブレットなど、さまざまなデバイスが企業でも利用されています。

 こういったデバイスを、先ほど説明したようなワークプレースジョインなど、Windows Server 2012 R2の標準機能としてサポートすることで、Windows Server 2003などから移行していってもらいたいんです。

 確かに、クラウドとオンプレミスの融合を果たすクラウドOSというビジョンは、今後10年以上サポートされる、大きなテーマです。ただ、クラウドOSというコンセプトだけでは、Windows Server 2003のユーザーは移行してくれません。やはり、目の前にメリットが見えないとダメでしょう。

 地味な機能かもしれませんが、Essentialロールとマルチデバイスサポートは、ユーザーにピンポイントで“刺さる”機能だと思っています。

 ただ、Windows Server 2003からのアプリケーション移行ツールなどは、パートナーと組んでいきたいと思っています。

 Windows Server 2012では、Hyper-Vを利用してWindows Server 2003を仮想化し、継続利用するというシナリオがありましたが、Windows Server 2003自体のライフサイクルが終了してしまうため、仮想化というシナリオも難しくなります。こういった意味では、Windows Server 2003が使えなくなることは、ユーザーにとっては大変になりますが、Windows Server 2012 R2ではそれを越えるメリットが提供できていると思っています。

例えば、大塚商会はWindows Server 2003からWindows Server 2012 R2への移行サービスを提供している
さまざまな移行サービスを提供することで、さまざまな問題を抱えている企業を支援するという

山本 雅史