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クラウドOSビジョンに基づいたWindows Server 2012 R2の新機能を説明~日本マイクロソフト

日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 吉川顕太郎氏

 日本マイクロソフト株式会社は7日、11月1日にリリースした「Windows Server 2012 R2」「System Center 2012 R12」の製品概要と、昨年発表した「クラウドOSビジョン」に基づいたサーバー市場に関する説明会を実施した。

 マイクロソフトではサーバー製品の開発体制を、「サーバー関連の技術革新はパブリッククラウドの開発現場から生まれている。マイクロソフトも自社で運用するパブリッククラウドサービスで新しいサーバー技術を実践し、そこで得た経験や知見を製品開発に生かす体制となっている」(日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 本部長の吉川顕太郎氏)と変更している。11月1日にリリースした2製品も、Windows Azure運営で得たノウハウが入った製品となっている。

 また、2015年4月にWindows Server 2003のサポート期限が切れることから、「サポート切れでWindows XPが大きな話題となっているが、クライアントに比べサーバー製品は切り替えに時間がかかる。今のうちから切り替えに向けた準備が必要」(吉川本部長)であることを広く訴える。パートナーとの連携も重要として、パートナーの一社である大塚商会と共同で進めているユーザー向け移行支援プログラムを紹介。Windows Server 2003の移行の必要性をアピールした。

 日本マイクロソフトが昨年発表した「クラウドOS」は、オープンな開発環境、一元的なシステム管理、共通のID管理、共通のデータベース、基盤としての仮想化の実現を標榜している。

 「このビジョンに基づき、製品開発を行っている。ビジョンのすべてが完全に実現されているわけではないが、ビジョンに向けて開発が行われている」(吉川本部長)。

Windows Server 2012 R12の製品構成
クラウドOSビジョン

 このビジョンが最初に実践される場が、マイクロソフト自身が運営するクラウドサービスだ。「年間出荷されるx86サーバーのおおよそ1割をマイクロソフト自身が購入し、現在は200以上のクラウドサービスを自社で運営している。この規模でサーバーを購入しているのは世界でも3社程度。マイクロソフト自身が開発した新しい技術をファーストパーティとして活用するのが自社サービス」と最新サービスを実践する場ともなっている。

 パブリッククラウドでの実践を優先するという開発サイクルの変更を行った結果、「Windows Server 2012から1年という短期間でR2をリリースすることができた」のだという。

 今後も具体的なリリース時期は明らかにしていないものの、「これまでの3年おきといったペースではなく、早いタイミングでアップデートする体制となる」という。エンタープライズ製品は評価などの期間が必要となることから、「すべてアップデートに対応する必要はない。ユーザー側でアップデートするタイミングを選んでもらって問題はない」という

 パブリッククラウドでの実践と、そこで得たユーザーの声を反映した結果、Windows ServerとWindows Azureはシームレスなハイブリッドクラウドとして仮想マシンの相互利用、データベースの同期、アプリケーションの接続とメッセージング、サーバー間のVPN接続、サイト間のVPN接続、共通のツールで統合的に管理などを実現。

 さらにテクニカルサポート、機能の差を払拭するLinuxへの対応強化を行った。ミッションクリティカルな環境でもサーバー仮想化が活用されることを示すために、Windows Server 2012 Hyper-V、SAP 3層構造、SQL Serverで世界記録を達成した。データベース分野では最大のライバルであるOracle社との提携も実現し、データベースではOracle VM以外にWindows Server Hyper-Vが唯一のハイパーバイザーとなった。

シームレスなハイブリッドクラウドを実現
Linuxへの対応強化

 競合製品との比較についても、シェアでは6四半期連続で上回り、機能についても「機能的にVMware vSphereに後れをとっているというイメージを完全に払拭したい。Windows Server 2012 Hyper-Vで、vSphere 5.1 Enterprise Plusを上回り、新しい5.5では機能の一部はキャッチアップされたが、集約率では依然としてHyper-Vの方が圧倒的に上。これはパブリッククラウドを運営しているマイクロソフトだからこそ」とアピールした。

Hyper-Vと競合製品との比較
仮想化プラットフォームナンバー1

 製品としては、11月1日にリリースされたWindows Server 2012 R2は200以上の新機能が付加されているが、今回は(1)実運用環境を見据えたHyper-V、(2)ストレージ機能の向上、(3)BYOD/リモートワークへの対応、(4)Windows Azureの技術を企業/ホスターに提供、(5)ハイブリッドクラウド環境管理という5つの機能強化について紹介された。

 まず基本仕様については、Windows Server 2012がそのまま踏襲される。今後のアップデートについても、メジャーアップデートは数年おきに行われ、短期間でのアップデートでは基本機能以外の新しいデバイスへの対応など基本以外の部分が新機能として提供されることになる。

Windows Server 2012の基本仕様はそのまま

 機能変更の一点目となるのが第2世代となったHyper-V。OS起動ディスクのオンラインリサイズを行い、レガシーデバイスをすべて排除した。その結果、起動速度が大幅に速くなることがデモで紹介された。また、強化されたHyper-Vレプリカを活用した災害対策、障害対策として利用する場合にも大幅に利便性が高まった。

第2世代へと進化する仮想マシン
Windows Server 2012 R2 Hyper-Vレプリカ

 ストレージ機能は、ストレージデータの重複除去、階層化ストレージ機能の追加などを実施。アクセスが多いデータはSSDに、アクセス回数が少ないデータはHDDにWindows Server側で配置することで、パフォーマンス向上などを実現している。

階層化ストレージ機能の追加

 BYOD/リモートワークへの対応については、「サーバーだけでなく、クライアントも提供していることを生かし、エンドユーザーがたくさん持つデバイスを会社でも使うための機能を提供する」(日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャー 岡本剛和氏)と、ユーザー自身が自分のデバイスを会社で利用できるように登録するワークプレイスジョイン機能を提供。管理された環境下で企業情報にアクセスできる設定がユーザー側から行える。

日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの岡本剛和氏
ワークプレイスジョイン

 企業のServer管理者やホスティング事業者向けにはWindows Azureの技術をパッケージ化した「Windows Azureパック」を提供。Windows Azureの技術がパッケージ化され、事業者はUIや課金システムとのつなぎ込みなども可能となっている。

 ハイブリッドクラウド環境の強化としては、オンプレミスとパブリッククラウドに共通の運用管理基盤をデータセンター管理者向けに提供。これまでは別々に管理していたものが一元的に管理できる環境とした。

Windows Azureパックの提供
ハイブリッド環境管理の強化

 ライセンス、エディション概要は従来のものを踏襲。Windows Server CALは2012のものをそのまま利用できる。

 新バージョンの提供に加え、2015年7月にサポート期間が終了するWindows Server 2003が国内で45万台残っていると推測。「サポート期限が終了後も使い続けることはセキュリティ面から考えても危険が大きい。できるだけ早期に移行していただきたい」(吉川本部長)とアピールした。

いまだ45万台残るWindows Server 2003
2003サポート終了まであと1年8か月

 移行に当たってはパートナーとの連携が不可欠となることから、パートナーの1社である大塚商会の移行支援策が紹介された。大塚商会では移行を希望するユーザーに対して、「従前の移行と比べて選択肢が非常に増えている。そこでプランニングからが重要となるため、プランニングから含めて幅広い選択メニューを用意し、移行計画から導入後のサポートまでトータルに支援を行っていく」(大塚商会 TSC MSソリューション課 課長の板垣智和氏)という姿勢をアピールした。

大塚商会 TSC MSソリューション課 課長 板垣智和氏
大塚商会の移行計画から導入後のサポートまでの支援体制
Windows Serverの標準機能の活用を提案
Windows Server 2003の移行を支援する体制をアピール
移行支援サイトも用意
いまだ45万台残るWindows Server 2003

三浦 優子