週刊データセンターWatch:

【データセンター用語集】ワット・ビット連携とは

 2025年2月、閣議決定された国家戦略「GX2040ビジョン」において明記された取り組み。電力インフラの整備には時間がかかること、脱炭素電源に地域偏在性があること、レジリエンス(災害などに対する回復性)といった観点から、データセンターの地域分散を進める必要があるとの方針が示された。

 ワット・ビット連携という用語は、2025年上半期にいきなり注目されたといってもよいだろう。初出とみられるのはその半年前、2024年7月23日開催の「GX2040リーダーズパネル」(第2回会合)で、東京電力パワーグリッド株式会社の副社長によって行われたプレゼン。関連資料は内閣官房のWebサイトにて公開されている。

 この後、前述の「GX2040ビジョン」が公表され、デジタル行財政改革会議の2025年2月開催分資料(総務大臣提出分)にも記載がある。翌3月には「ワット・ビット連携官民懇談会」の第1回が開催された。2025年下半期の時点では、ワット・ビット連携を受けての報道発表が相次いでいる。

 ワット・ビット連携は比較的新しい概念であるため、さまざまなメディアやシンクタンクによって解説が試みられている。どのポジションから俯瞰するかでも捉え方に差は出るだろうが、まず「GX2040ビジョン」自体は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)によるエネルギー安定供給、経済成長の実現、脱炭素目標の達成が大前提に据えられている。

 その上で、こうした目標を達成するための方向性として、今後の産業構造について考え、また産業集積も進める必要があると指摘。有望とみられるAIは、稼働に膨大な電力を必要とするが、GXを標榜する以上では脱炭素電力で賄わなければならず、しかしその供給拠点は地域偏在性がある。

 なにより、電力インフラは通信インフラに比べて整備に時間もコストもかかるという。よって電力インフラの観点から望ましい地域にデータセンターの立地を促進することの意義は大きい。そしてデータセンターが大手町や印西市のような集積地以外にも広がれば、災害耐性(レジリエンス)は高まる。

 ワット・ビット連携は端的に「電力と通信の効果的な連携」とも解説される。ただ、いちユーザーの視点からは「電力インフラ構築上の課題に伴う、データセンターの地域分散化方針」と解するのも間違いではないだろう。