トピック
シャープのDNAを受け継ぐAIoTクラウドが、設備点検DXサービス「WIZIoT(ウィジオ)」に込めた思いとは
- 提供:
- 株式会社AIoTクラウド
2025年3月31日 09:00
工場では多数の機械などが動いており、その設備点検は欠かせない。そのためには、人間が工場を巡回してメーターやランプなどの計器類を確認して回り、その点検結果などを後からPCに入力して管理している企業は多い。しかし、現場では高齢化にともなう労働者不足に直面している。
通信機能を持ち、情報を直接デジタルデータで取り込めるようなスマートメーターであれば労力が削減できるのだが、すべてのメーターでそういった製品が提供されているわけではないし、提供されていたとしても、コスト面などからすべて入れ替えるというのも現実的な話ではない。
こうした課題に応えるため、シャープ株式会社の100%子会社である株式会社AIoTクラウドでは、計器類をスマートフォンで撮影すると、AIで値を読み取ってクラウドにデータを集約する設備点検DXサービス「WIZIoT(ウィジオ)」(以下、WIZIoT)を提供している。
本稿では、このWIZIoTの特長や機能、ユーザー企業にとってのメリットなどについて、株式会社AIoTクラウド SaaSビジネス部 マーケティング担当 係長の中村康洋氏に話を聞いた。
工場の生産設備の計器類にスマートフォンにかざすだけで数値をクラウドに集積
AIoTクラウド社は、シャープのIoT開発部門を母体として2019年に設立された会社だ。社名が「AI」「IoT」「クラウド」といった要素から構成されているように、「もともとはシャープの中で、家電のIoT化や、スマートフォン、クラウドなどの開発を担っていたメンバーが中心となって設立されました」と中村氏は言う。
こうしたバックグラウンドから来るAIoTクラウド社の強みとして、中村氏は「IoT機器連携で蓄積したノウハウ」「スマホアプリの開発で蓄積したユーザビリティ」「AI技術の開発で蓄積した知識と応用力」の3つを挙げる。つまり、ハードにもソフトにも強いということだ。
今回紹介するWIZIoTにも、AIを活用した画像認識技術など、同社が蓄積してきた強みが活かされている。
WIZIoTは、設備点検記録から報告書作成・承認までペーパーレスでまるごと効率化する、製造業・工場向けのサービスだ。
点検対象のメーターをスマートフォンで撮影すると画像がクラウドに送信され、メーターの値がAI画像認識によって読み取られ、記録・集計される。
対象とするメーターは、アナログメーターやデジタルメーター、回転式カウンター、フロート型、レベル型など多岐に渡るほか、「正常」「異常」などを示すランプの認識にも対応する。多様な形状のメーターでもスマートフォンだけで、スムースに読み取ることができるのがポイントだ。
また、地下や大型機械設備に囲まれているなどの電波の届きにくい場合でも、撮影した画像をスマートフォンに一時的にためておき、オンラインになってからクラウドに送信する仕組みも備えている。
さらに、スマートフォンによる撮影以外にも、オフィスから遠く日々の点検が難しいところや、高所など人が立ち入りにくい場所などにも対応できるよう、安価な固定カメラによる読み取り機能も用意されている。
また、異音や異臭、水漏れなど、点検作業の担当者が現地で確認した点検項目を、その場で入力することもできる。なお、撮影時に読み込むQRコードは、点検対象のメーターを特定するために使用している。点検時に確認する内容や項目はカスタマイズ可能だ。
メーターだけではなく、現地で確認した点検業務もスマートフォンだけで実施できるため、誰でも点検が可能で、記入漏れ・誤記といったヒューマンエラーを低減できることもポイントと言える。
さらには、データを取得して異常を検知するだけでなく、オンライン承認、報告書作成まで、一連の点検業務のペーパーレス化を実現できるようになった。点検業務終了後、点検者がアプリから承認依頼を行うと承認者にメールで通知され、承認者はオンラインで点検結果を確認・承認できる。そして承認が完了すると、PDFの日報が自動作成される仕組みだ。
もちろん、集計されたデータは、グラフ分析やCSV出力などで活用できるようになっている。
中村氏によると、カメラなどによって離れたメーターを確認するソリューションはこれまでにもあったという。ただし、カメラ1台あたりが数万円以上と高価であったり、専用システムが必要であったりするなど、すべての設備に設置するのは難しかったとのこと。それに対してWIZIoTでは、スマートフォン1台で読み取りを実現できるほか、固定カメラを設置する場合でも、安価なモデルで導入可能となっており、すべての設備をカバーできることが利点だと、同氏は説明した。
今後の機能強化としては、マルチメーターやモニター画面に表示された設備情報など、読み取り対象の拡大のほか、使いやすさの改善など、現場の労働力不足解消に貢献する強化を検討しているという。
さらに、記録した点検データを活用するための、AIによるデータ分析アシスト機能を強化したいと中村氏は語った。
「現場DX」で点検作業時間を約80%削減、さらに「攻めの点検」へ
このように、WIZIoTを利用すると、現在行われている点検業務の効率性を安価に向上させることできる。
繰り返しになるが、人が工場を巡回して設備のメーターを目視で確認して手書きで記録しておき、オフィスに戻ってPCに数値を転記し報告するといった設備点検業務は、現場で大きな負担になっているだけでなく、メーターの読み間違いや書き間違い、判別できない文字などのヒューマンエラーが発生している。
こうした環境にWIZIoTを導入することで、点検作業時間を約80%削減でき、さらに読み取りや記録といった作業が自動化されているため、ヒューマンエラーがゼロになる点もメリットだろう。
これだけでも効率化はできるのだが、AIoTクラウド社が真に目指すのは、単なる業務のデジタル化ではなく、「現場DX」による生産性の向上だという。中村氏は「設備点検のような事業の運営に欠かせない、現場において必要となる『守りの点検』を簡単にしたい」と語る。
設備安全稼働を確保するためには、生産設備を付加価値のある最新のものに交換するといった手段もあるのだが、組織全体の取り組みは大変な手間がかかるし、多くのコストが必要となる。
それに対してAIoTクラウド社では、現場DX、つまり現場サイドからのスモールスタートによるDXを提唱する。組織全体の業務プロセスを対象とする前に、現場の業務プロセスやオペレーションを対象とし、その効率化を図るというわけだ。
中村氏はさらに、点検業務の労力削減にとどまらず、データを使ってコストダウンや業務効率向上で経営に貢献する「攻めの点検」を提案する。データ化することにより、前月に比べて高めの数値が続いているからそろそろ運用を見直した方がいいとか、早めに部品を交換すべきといった判断が可能になるのだ。
「点検業務は、設備安全稼働には必要なことですが、どうしても優先度が低くなりがちです。そうではなく、日々の点検は将来の異常を防ぎ、生産時間を増やして生産効率を上げる手段として、"経営に貢献する攻めの点検"にしていきましょう、と提案しています」(中村氏)。
現場の課題に対して、ITの知識がなくても誰でも使いこなせる「身近なIoT」で現場DXを支援するのが、WIZIoTに込めた思いだと中村氏は説明した。
「『WIZIoT』の『WIZ』は、『Wizard(魔法使い、達人)』と『With(いっしょに新しい価値を創造)』の両方の意味をかけています。工場や、製造現場が直面する、高齢化、人手不足といった課題を、AI・IoT x SaaSという最先端の技術をインテグレートすることにより、誰もが使いこなせる『身近なIoT』で解消します。いますぐ・簡単・現場DX「WIZIoT」をさらに発展させていきます」(中村氏)。
アルコール検査を、スマートフォンを使ってクラウド管理
なお、WIZIoTの前にAIoTクラウド社がリリースしたのが、アルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」である。これは、ドライバーのアルコールチェック結果を適切に管理するためのサービスで、道路交通法施行規則の改正により、白ナンバーの業務用車両でもアルコールチェックが義務化されたことを受けてサービス化された。
AIoTクラウド社が調査した結果によると、アルコールチェックの課題として、「本当にアルコールチェックを実施しているか確認ができない」「直行直帰・深夜早朝の点呼など確認が大変」「紙やExcelの管理が大変」といった、実施や管理の手間が上位に挙げられているという。
スリーゼロは、このようなアルコール検査・管理の負担の問題を、クラウド管理により解決しようというサービスなのだ。
アルコール検知器で検査した結果は、Bluetoothに対応している機種であれば通信によってクラウドと連携。対応していない機種でも、検知器の結果表示をスマートフォンで読み取ることによってデータ化し、同じようにクラウド側に記録される。
Bluetooth非対応の検知器を利用した検査時には、まず、検査対象となるドライバーがアルコール検知器に息を吹いている様子を、スマートフォンのインカメラで撮影し、続いて検知器の結果表示をアウトカメラで撮影する。こうして、人間と数値を両方とも撮影することにより、誰が検査を行ったのかを記録して、なりすましを防ぐ仕組みだ。
また画像を送信した後に電話を発信する機能を備えており、リモートで検査を実施する場合でも、対面に近い形での点呼を実施できる。
こうした、検知器の表示結果を読み取るスリーゼロの機能には、やはりAIによる画像認識技術が生かされており、その点で、スリーゼロとWIZIoTは直接つながっているといえる。対応するアルコール検知器は何と130機種以上におよび、日々追加されているが、こうした対応を取れるのもAIoTクラウドの技術力ゆえといえるだろう。
さらに2025年2月には、運転日誌に記録するために、自動車のオドメーター(走行距離計)をスマートフォンで読み取る機能がスリーゼロに追加されている。こちらは逆に、利用者の要望とともに、WIZIoTの技術がスリーゼロに反映されたものといえそうだ。
AIoTクラウド社の提供するサービスは、AIという技術を誰にでも使える形に応用し、現場のDXを実現し、社会問題の解決を図ろうとしている。
これは、シャープの経営理念の一節にある「誠意と独自の技術をもって、広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」を体現したものと言えるだろう。シャープのDNAを受け継ぐAIoTクラウド社が、現場DXをさらに加速することを期待したい。