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職場のWi-Fiを価格だけで選んで後悔しないために アクセスポイントを選ぶ3つのポイント

 Wi-Fi(無線LAN)は、PCやスマートフォンでインターネットに接続するための重要インフラ。その活躍場面はいまやパーソナルな分野に限らない。オフィスは当然として、学校の教室、一般小売店・飲食店のタブレットレジ用など、とにかくあらゆる分野に広がっている。

 とはいえ中小企業の場合、かなりアバウトにWi-Fiを使っているのが実情だろう。オフィス開きの時に標準で用意された機器を管理者不在のまま延々使い続けていたり、故障した機器の買い替え基準も「安いから」「お店でたまたま見かけたから」だったり……。

 しかし実際のところ、Wi-Fiの品質はその親機たる「無線LANアクセスポイント」によるところが大きい。その選定において、ポイントをあえて3つに絞り込むならば、「安定性を重視した本体設計」「さまざまな環境で使える汎用性」「管理機能の充実」を挙げたい。

 本稿では、これら3つのポイントについて解説していく。

法人向けアクセスポイントに期待されること

 「新オフィスの立ち上げにあたってWi-Fiの利用を始める」というシチュエーションを考えてみてほしい。従業員数は約20名、1人が1台ずつノートPCを使うとする。自席でのネット接続だけではなく、会議室にもPCを持ち込みたい。ここまでいけばもう、「詳しい人がいないからWi-Fiを使わない」という選択肢は恐らくないはずだ。

 ただこの規模の会社では、ネットワーク管理者を置くのはやはり難しい。それなりのIT知識がある若手、あるいは総務担当者あたりが、本業の時間をやりくりしながらなんとか設定作業をこなしていることだろう。

 知識なし、時間なし、コストもかけたくない。ならば当然、担当者が普段使っているオンラインストアをのぞいてみて、安価な機器を買いそろえるのは必然だ。実際、小売店では、1台1万円を切るようなアクセスポイントは星の数ほど販売されている。また、インターネット回線契約に付帯するルータにアクセスポイント機能があらかじめ内蔵されていれば、それを単に有効化して使っているケースもあり得る。

 大型電器店の店頭に並ぶアクセスポイントは、基本的にパーソナル用途、一般家庭での利用が前提になっている。新型コロナウイルス感染症対策で長期にわたって、在宅勤務の遠隔会議やオンライン学習など大量の映像や音声をやり取りするような状況でなく、1世帯4名前後でインターネットを楽しむ分にはまったく問題ない品質だ。

パーソナル用途の場合、一般的なアクセスポイントのイメージはこんな感じだろう

 これに対して法人向けのアクセスポイントは、最低でも2万円以上。ローエンドモデルであっても、3万円を超えるものは珍しくなく、家庭用との価格の差は大きい。このため購入する側からは、オフィス・学校・店舗などでの利用に応えるだけの耐久性・電波処理性能を備えていることが期待されているだろう。

 しかし現実的には、必ずしもそうとは限らないという。象徴的なのが、無線端末(子機)の同時接続数と、その考え方だ。市場を見回すと、一般家庭向けのアクセスポイントでは、同時接続数がそもそも公表されていないケースが多い。法人向け製品に限れば、同時接続50台というカタログ仕様は「WLX302」発売以降、一般化した。

 ただ、それだけの数を接続して実用的な通信速度が果たして確保できるかどうかはまた別の話だ。接続数が多くなると、その分、速度が低減してしまう製品は少なからず存在する。同時接続数はあくまで理論値の話で、本当に50台が接続してしまうと処理性能が足りず、結果として速度が遅くなってしまうわけだ。

 また2つ目の問題として、温度対応がある。アクセスポイントに限らずさまざまな電子機器では、“動作環境温度”が規定されている。一般的な家庭向けルータでは0~40℃程度に設定されていることが多いが、法人向け製品では一部で上限が45℃、50℃といった製品も数年前から登場し始めた。

 昨今では下記の気温の上昇が激しく、東京でも最高気温が30℃台後半になるのは当たり前。アクセスポイントはエアコンのない場所(人のいない場所)に設置されることも多いため、風通しの悪い場所などでは、容易に40℃を超えてしまうだろう。重要な通信インフラであるWi-Fiが使えなくなってしまってはダメージが大きく、動作環境温度は極めて重要な要素だといえる。

実地的な検証手順によって接続性能を検証済み

 こうした最大接続台数や動作環境温度は、スペック表に書いてあったとしても、各社にとってそれぞれ考え方があり、実際に試してみないと分からない部分もある。しかしユーザーにとって負担となるそうした問題を、あらかじめ検証しているメーカーがある。

 それが、徹底して実用性能を追求しているヤマハだ。ヤマハがWLXシリーズ初の法人向けアクセスポイント「WLX302」を発売したのは2013年3月のことだが、同社ではアクセスポイント発売のはるか前からルータ開発を手がけており、特にその品質・性能が評価され、高い実績を積み上げてきた。

ヤマハが無線LANアクセスポイントを作った理由

コンセプトは、"トラブルを減らすアクセスポイント"
https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/626204.html

 そして、Wi-Fi製品の開発にもその哲学がフィードバックされ、「WLX302」のリリース時点ですでに、オフィスに必要なWi-Fi品質、つまりは安定性・実用性の追求が大きな命題になっていたという。

 先ごろ発売された最新のローエンド製品「WLX212」でも、実地的な検証手順を経た上で、最大50台(注:5GHz、2.4GHzそれぞれ50台、合計では100台)という接続端末数を明確化している。このおかげで、機器導入の目算も立てやすい。10人のオフィスであれば、1人2台程度の端末を問題なく動かせるし、また学校で利用する場合でも、1クラス40人の学級で「WLX212」を利用することが可能だ。

 一方、動作環境温度についても、初代の「WLX302」こそ0~40℃だったが、「WLX212」を含む現行4製品すべてで0~50℃を実現している。同社によれば、ヤマハはアクセスポイントにおける50℃保証を実施した先駆けだそうで、プラス10℃を確保するために、本体内部のコンデンサーや抵抗など、部材レベルで高品質なものが選択されていると明かす。

 こうした製品哲学が、また、製品の高品質化・長寿命化に寄与しているようだ。

ヤマハ製アクセスポイントの最新ローエンドモデル「WLX212」。同社のアクセスポイント全体としても最新モデルになる

ヤマハのエントリー向けアクセスポイント「WLX212」、クラウド型管理や無線LAN見える化ツールに対応

https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1246700.html

設置性が大幅向上、壁・天井・机・棚のどこにおいても安定通信

 続いて、「さまざまな環境で使える汎用性」のポイントを見ていこう。

 Wi-Fiの肝はなんといっても電波だ。電波を遠くまで飛ばし、安定的に通信を行うためには、見通しの良い高所にアクセスポイントを設置するのが理想である。またWi-Fiを利用する人間は、電波を遮へいする存在でもあるので、その意味でもやはり壁・天井へアクセスポイントを設置すべきというのが、Wi-Fi環境を構築する上での一般的な考え方だった。

 法人向けアクセスポイントは、こうした考え方の元で開発されているものが多いようで、一般的に、壁面や天井への設置オプションがさまざま用意されているし、それはヤマハのアクセスポイントでも同様だったという。

 しかし現実はどうだろう。一介のオフィスワーカーが、脚立や工具を用意してまで自力で壁・天井設置を行えるかと言えば、それはなかなか難しい。また物件契約の制約などからどうしても壁・天井設置ができないケースも十分にあり得る。

 では、どうすればいいのかというと、卓上設置も考慮した製品を検討すればよいのだ。例えば、ヤマハの「WLX212」では従来のコンセプトを一新し、壁・天井設置時に重要だった「本体の薄さ」よりも、「全体として小型で設置場所を選ばない本体」に方向性をシフトして、筐体デザインをあらためた。その上で、専用のスタンドを同梱。机や棚といった比較的低所に置いて運用できるようにしている。

 「企業・法人向けのアクセスポイントで、アンテナを外部接続するというアプローチの製品も一部ありますが、アンテナ内蔵式でかつ壁・天井設置と卓上設置のどちらにも最適化している機種は相当珍しいです。恐らく法人向けは壁設置、小さなオフィスや個人向けは卓上という具合に分かれていて、結果としてWLX212は双方の使い方をカバーできる存在になりました」(ヤマハ株式会社 コミュニケーション事業部 マーケティング&セールス部 マーケティングG 主幹 平野尚志氏)。

 そしてアンテナ仕様が指向性・無指向性の2種類からの選択式になったのも、極めて大きな変更点である。「WLX212」は薄い直方体のデザインだが、「指向性あり」の場合は本体天面方向への利得が最も大きい。例えば集合ビル1階の天井につり下げ設置する場合は、1階フロアへ満遍なく電波を届けつつも、セキュリティや電波障害の近所迷惑の観点から上階2階にはあまり電波が届かないようにしたい。

 対して「指向性なし」を選択した場合は、本体の天面・底面・側面のどの方向にも比較的均等に電波を放射する。よって、机上・卓上設置でかつオフィスの中心部に「WLX212」を設置する場合に、まさにうってつけの機能となっている。

壁設置のイメージ
卓上設置のイメージ

 こうした電波の指向性変更は、ミッドレンジモデルの「WLX313」では実現していたが、エントリークラスの前身モデルにあたる「WLX202」では未対応だった。また、「WLX313」は外付けのアンテナで実現していたのに対し、「WLX212」では内蔵アンテナをソフトウェアで切り替えられるようにしており、明確な機能強化ポイントのひとつだと言える。

 なお、「電波の利得については、かなり詳しい情報を公開しています。もちろん初心者の方にはなかなか理解が難しいかもしれませんが、リテラシーを深めるきっかけとして活用いただければと思います」(平野氏)。これも、約10年のアクセスポイント開発史を経て進化した要素だといえる。

 また余談だが、本体カラーにブラックを加え、ホワイトとの2色展開にしたのも、10年のアクセスポイント開発の経験が生きているとのこと。最近ではカフェや飲食店でWi-Fiの需要が高まっているが、そうしたロケーションではインテリアとの親和性からブラックカラーの製品が求める声が大きいことから、2色展開が実現している。

アクセスポイントってインテリアになるの?

ヤマハ WLX202をカフェに持ち込んでみた
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/1009719.html

 そしてもうひとつ、動作の安定性の項目で先に説明した、動作環境温度が広いことも「さまざまな環境で使える汎用性」を高めている要素のひとつだ。アクセスポイントは引き出しの奥にしまいこまれるような性質の製品ではないが、例えば調理場などには置かれるかもしれない。高温に対応できるのであれば、それだけ設置の自由度が高くなるといえる。

ホワイトに加えて、ブラックが初めて提供された

管理を便利にするあんな機能、こんな機能

 続いて、「管理機能の充実」を見てみよう。法人向けアクセスポイントが家庭向け製品と比べて飛び抜けて優秀なのが、まさにこの部分である。

 家庭におけるWi-Fiの運用は、それほど難しくない。子供にアダルトサイトを見せないためのフィルタリング機能等は必要だが、利用者は多くても平均5~6名。アクセスポイントを新調して接続先IDが変わっても、口頭なりメールでそれを伝えれば十分だ。

 しかし、企業ではそうはいかない。最初のうちは10人程度のユーザーで済んでいたとしても、企業規模の拡大によって30名、50名と利用者が増えていった時、アクセスポイントをより高性能なものに刷新するとして、その都度いちいち設定を変えられたら、既存ユーザーに負担をかけることになる。故障対応も、現地に詳しいスタッフがいればよいが、飲食店など限られた人数で運営しているところでは困難だ。

 法人向け製品であれば統合管理機能を備えているものがあり、遠隔から何らかの手段でアクセスポイントの設定を変更したり、トラブルに対応したりするための機能を備えているが、やはり、製品によってかなりの差が生まれている。

 今回、最新モデルの「WLX212」を提供するにあたってヤマハが打ち出してきたのが、「WLX212」で初搭載となるクラスター機能である。これは、設定・管理を可能な限り自動で行えないか?という発想に立って新しく作られたもので、新たな「WLX212」をLANに接続するだけで、自動的に設定が同期され、5分以内に運用を開始できるという。また故障時の対応も同様で、故障機を取り外して新たな「WLX212」に交換すれば、設定を自動同期してくれる。

 これにより、例えばオフィスや売り場の拡大に応じてWi-Fiのエリアを広げる際の設定作業、また故障時のメンテナンス作業の負担が、大幅に緩和されることが期待される。「この機能によって、2台目以降の『WLX212』は本当に“箱から出してつなぐだけ”で設定が完了してしまうのです」(平野氏)。

 逆に、従来のWLXシリーズが持っていた無線LANコントローラー機能のように、細かい設定を手動で行うことはできないが、この規模で利用するアクセスポイントであれば、運用の簡単さの方がメリットは大きいと考え、「WLX212」ではクラスター機能が選ばれたようだ。

 なお、細かい管理を行いたい場合や、遠隔の複数拠点に設置された機器の統合管理を行いたい場合などは、クラウド型管理サービス「Yamaha Network Organizer(YNO)」を活用すればよい。「WLX212」を設置している拠点に足を運ぶことなく、複数の機器をリモートで統合管理できる年額制サービスで、「WLX212」には最大1年分の利用権が付属している。

 この「YNO」との使い分けによって、容易な管理性・拡張性を担保しつつ、大規模ネットワーク管理にも引き続き対応し続けているのだ。

YNOにより、複数拠点、複数グループのWLX212を遠隔から統合管理できる

 もうひとつ、Wi-Fiで大きな問題となっているのが、文字通り“無線”であることだという。Wi-Fiでトラブルが起きた場合は、何が原因かを把握しづらくなってしまっているのだ。

 そこでヤマハでは、Wi-Fiの状況を独自の指標で可視化する「無線LAN見える化ツール」を提供している。これは、周辺に別のアクセスポイントが新設されて電波干渉を起こしていないか、接続端末(子機)の無線方式や信号断回数などを把握するための機能で、トラブル発生時のログを後から確認することも可能となっている。

 「例えば社内Wi-Fiの利用者から『うまく接続できない』という第一報があった時、それが果たして社用PCなのか、私物スマホの話なのか、どういったレベルでのトラブルかを判別するのがまず大変です。ですから、トラブル云々以前に『いま何が起こっているか』を把握したいという声が多くありました」。

 実際、「朝9時になるとWi-Fiのつながりが悪い」というクレームについてツールで調べたところ、その時間帯に近傍を通勤・通学で通りがかる人が急増し、アクセスポイントに負荷がかかっていることを発見した例もあったという。

 この機能も従来、より価格の高いミッドレンジやハイエンドの製品向けに提供されており、ローエンド製品には未搭載だったのだが、新発売の「WLX212」では、ローエンドながらも利用可能になった。

 こうした機能があるのかないのかでは、トラブル解決のための時間が大きく変わってくるだろう。

無線LAN見える化ツールにより、周辺のWi-Fiの状況を視覚的に確認することが可能だ

 さらに、初期段階はともかく、将来的にWi-Fi周りのセキュリティ強化を考えている場合は、RADIUSサーバー機能が「WLX212」にはあらかじめ統合されていることをチェックしておきたい。

 RADIUSはユーザーを認証する方式の一種。通常、Wi-Fiでは接続先となるIDとパスワードの組み合わせが1種類しかなく、これを社内ユーザー全員で共有する格好になってしまうが、これでは強固なセキュリティ体制には程遠い。そのため、デジタル証明書や、ユーザーごとに異なるID/パスワードを発行して、個別にWi-Fiへのログイン可否を制御するために用いられる。

 RADIUSサーバー機能の内蔵は、一般家庭向けアクセスポイントではまずあり得ない。もちろん企業であっても、従業員が数名程度の規模の場合には必ずしも必要ないかもしれない。しかし機能があること自体は、将来的な発展を考える上でも見過ごせない。機能を使いこなすための事前練習に役立てるのもいいだろう。

自社にとって“本当に必要な機能・性能”をしっかり満たすモデルを選ぼう

 ここまで、法人向けのアクセスポイントで必要とされることについて順に見てきた。

 このうち「安定性を重視した本体設計」「さまざまな環境で使える汎用性」は、まさに実機を使ってこそ分かる部分だ。スペック表を見ても、それだけで同時接続数の凄味は伝わりづらい。動作環境温度50℃対応も、いくら日本の夏が暑くてもその差を常時感じられるわけではない。

 ただし「神は細部に宿る」ではないが、見えづらい・分かりづらい部分の作り込みが、結果として製品の最終的な実力につながる。50℃対応の高性能な部品は、結果として“壊れにくさ”にも寄与しているだろう。

 そして「管理機能の充実」は、これまた一般家庭向けアクセスポイントだけを使ってきたユーザーには想像がつきにくいかもしれない。ただ、ビジネスの現場では「Wi-Fiを故障なく使い続けたい」「トラブル対応に時間を割きたくない」など、家庭とはまた違った需要・ニーズがある。これらを満たすために、やはり管理機能は欠かせない。

 あくまでもヤマハの「WLX212」はひとつの選択肢であるが、ラインアップのなかのローエンドモデルでありながら、これらのポイントを満たしている点は評価できる点だろう。With コロナで遠隔会議が増える中、Wi-Fi環境のベースアップを検討してみたらどうだろうか。

 決して“ハードルが高い”製品ではなく、カメラ量販店の店頭・オンラインストアなどでも取り扱いがある。オフィスや店頭での導入にあたってチョイスしておけば、その後の運用がグッと楽になるはずなので、ぜひお試しいただきたい。