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ユーザーが語ったTintriの本質と価値 Tintricity 2019レポート

 仮想化環境・クラウド基盤に最適化されたインテリジェント・ストレージ「Tintri(ティントリ)」の年次カンファレンス「Tintricity 2019 ~ティントリユーザーの集い~」が東京(5月23日)と大阪(5月21日)で開催された。ビジネス近況や今後のロードマップ、ユーザー自身による事例紹介、識者が語る活用のヒントなど情報満載だった当日のセッションの様子をダイジェストにまとめた。

Tintri最前線 ─ビジネス近況と機能強化─

Tintri by DDNとして独自の技術力にさらに磨きをかける

 「Tintri by DDN」の新体制となって半年あまり。最新のビジネス状況や今後の製品ロードマップはどのようになっているのか。イベント当日のセッションを通して明らかになった情報を以下に整理する。

新生Tintri by DDNのビジネスアップデート

 Tintriは2018年9月3日、データダイレクト・ネットワークス(以下、DDN)により買収されTintriby DDNとして再出発した。

 現状のビジネスの状況はどうだろうか。同社ワールドワイド セールス&マーケティング バイスプレジデントのフィリップ・トリコビク氏は、「買収直後から黒字化に成功し、2四半期連続で収益を上げています」と切り出し、順調な再スタートを遂げたことを報告した。

ワールドワイド セールス&マーケティング バイスプレジデントのフィリップ・トリコビク氏

 もっとも、買収前には大きな“覚悟”も決めていたようだ。「大手のお客様の半数くらいは離れてしまうのではないかと考えていました」とトリコビク氏は明かした。しかし、これも杞憂に過ぎなかった。AMD、米国連邦政府、日本でも太陽生命やTKCなど、すべての大手ユーザーが同社の仮想化ストレージの利用を継続し、結果、2018年第4四半期は300%の成長を達成し、2019年も同様に推移していくと予測されている。

 「HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)ワークロードの世界でロールスロイス的な地位を築いてきたDDNと、仮想ワークロードの世界をリードしてきたTintriが一体となったことで、中長期的にも両社のテクノロジーがより大きなシナジーを発揮していくと考えています」と、トリコビク氏は今後の展望を示した。実際、両社の間ではさまざまな経営資源の共有化が進んでおり、“規模の経済”を追求する体制が整いつつある。

DXをリードするヴイエムウェア、Tintriに期待

 ゲストスピーカーとしてヴイエムウェア テクノロジーアライアンス担当部長の森田徹治氏が登壇し、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた戦略を語った。

ヴイエムウェア テクノロジーアライアンス担当部長の森田徹治氏

 ヴイエムウェアは現在、「Any Cloud、Any Application、Any Device」のコンセプトのもと、SDDC(Software-Defined Data Center)、ハイブリッドクラウド、デジタルワークスペース、IoTといったプラットフォームを軸にデジタルトランスフォーメーションを推進していくビジョンを打ち出している。この「データ中心の世界」を支えるパートナーの一社として、Tintri by DDNが提供するテクノロジーに注目している。

 「Tintriはヴイエムウェアのアドバンスト・テクノロジー・アライアンス・パートナーとして、長年にわたり相互に技術協力を行ってきた関係にあり、今後もVMware環境に対応したさまざまなテクノロジーの展開に期待しています」と森田氏は語った。

 一例として挙げたのは「Tintri Management Pack for vROps」だ。Tintri VMstoreシステムをヴイエムウェアのvROps(VMware vRealize Operations)管理コンソールからVM(仮想マシン)単位で直接モニタリングできるようにするなど、仮想環境の運用管理業務の負荷軽減に大きく貢献するメリットを示した。

進化を続けるTintriの最新技術動向

 Tintri by DDNは、今後に向けてどのようなテクノロジーのリリースを予定しているのだろうか。同社 プロダクトマネージメント シニアディレクターのトマー・ハガイ氏が、最新製品情報の発表を行った。

プロダクトマネージメント シニアデイレクターのトマー・ハガイ氏

 Tintri by DDNとして初のストレージOSとなる「TXOS 4.4」がすでに2018年にリリースされているが、これに続き早ければ今年夏に統合管理ツール「Tintri Global Center 4.1」をリリースする予定だ。「既にTintri Global Centerは複数台のTintriを一元管理することが可能だが、SnapVM、CloneVM、SyncVMといった細かなオペレーションも可能となり、Tintri GUIと同等のオペレーションがTintri Global Centerから可能となります」とハガイ氏は語った。

 さらに、その先のロードマップの中からフォーカスしたのが「Tintri Analytics」「Tintri Data Aware」の2つの機能のエンハンスである。

 Tintri Analyticsは、すでに蓄積されている膨大かつ他社ストレージでは収集できないVM単位の情報に対する洞察を深める。ダッシュボードに新たに追加されるアドバイザー機能は、例えば、容量や性能といったストレージ全体のリソースが残り何日で枯渇するかを警告すると共に警告を回復するためのワークアラウンドを提示してくれる。また、その先には、VM単位だけでなくデータベースやコンテナなど、多様なタイプのワークロードに対してもアドバイザー機能を実装していく。「例えばデータベースの変更状況を理解し、スナップショットを取得する頻度を高めるなど、アプリケーション単位にアドバイスすることも可能となります」とハガイ氏は語った。

 一方のTintri Data Awareは、Tintriストレージによるデータベース統合であり、仮想化されたデータベースだけでなく物理的なデータベースサーバーもサポートする。具体的には仮想環境で既に実現している可視化と自動QoSと言った機能をデータベースでも実現する。データベース単位のワークロードを理解し、それぞれのデータベースは必要なワークロードに応じた必要なリソースを動的に受け取るようにする。
そして、それぞれのデータベースの I/O要求が変化した際にTintriストレージは、必要に応じてリソースを減らしたり増やしたりして、必要なパフォーマンスをダイナミックに確保することができるのだ。

 データベースの運用管理者が手動で行う操作は“ゼロ”であり、完全に自動化された環境でデータベースレベルの処理負荷の可視化と性能保証が行われるのである。

大阪開催:パネルディスカッション ITスペシャリストによるストレージトレンド

【登壇者】

◆ネットワンパートナーズ株式会社 清水敏光氏
◆ノックス株式会社 清家晋氏
◆丸紅情報システムズ株式会社 小島淳志氏
◆モデレータ:Tintri by DDN 八木下洋平氏

大阪開催のパネルディスカッションの様子

──Tintriの優位性やフィットする環境とは?

小島: 事例セッションの登壇者が口を揃えるように「キメ細かい可視化」を筆頭とする手間いらずの設定・運用が挙げられます。一般にVM数が増えると、SIerやユーザーが考慮すべきこと、やらなくてはいけないことも一気に増えるのですが、Tintriは自律的・効率的に対処できるので、圧倒的に工数が少なくて済むのです。我々が顧客に提案するという観点では、設計も見積もりも楽だと言えるでしょう。これは大きなメリットです。

清家: 仮想化環境であれば、VDIだろうがサーバー仮想だろうが何でもフィットするイメージを持っています。VMwareだけでなくHyper-VやKVMなど主要なハイパーバイザーにも対応していますしね。ハイブリッドモデルにおいては、データをフルリードするようなVMが存在するとフラッシュヒット率が極端に低下してしまうケースは確かにありますが、昨今の主流であるオールフラッシュモデルでクリアできます。更には、Tintriにスペック以上の負荷が掛かり性能問題が起きている時、Tintriであれば容易に“モンスターVM”を見つけ、当該 VM に対して最大IOPSを定めるといった細かい粒度でのQoSが可能なことから、想定外の事が起きた際の使い勝手が最高ですね。

清水: 最近の商談を見ていると、IT基盤より上のレイヤー、つまりはアプリケーションやサービスで価値を発揮しようとしているお客様やパートナー企業にTintriの機能が響いている印象があります。市場ではHCIの認知度も上がっていますが、要件に合わせて精緻に見積もると思いのほか高くなって、お客さんがROIの観点から結局はTintriを選択するケースが多々あります。

──HCIに興味がある顧客はまだ多いですか?

清水: HCIを導入されるお客様は、まだまだ多いと思います。ただし、小規模な環境に導入されるケースが多い気がします。HCIはサーバーリソースを多く消費しますので、構成によってはサーバー、ネットワーク、ストレージを別々に構成した方が安価に済みます。また、HCIの場合は、ノード間のオーバーヘッドが発生しますので、ある程度の規模になると性能の面でもTintriに優位性があります。昨今はこういったHCIの向き、不向きを理解しているお客様が増えてきており、ご提案のフェーズでTintriといった共有ストレージとHCIが競合するケースが減ってきている気がします。

──パブリッククラウドと比較する顧客も増えていると思いますが。

清家: 最近の商談では必ずと言ってよいほどクラウド活用も検討材料になります。かつての「安い、簡単」が取り沙汰されたフェーズから、「高付加価値、高性能」として捉える機運も一定水準で高まっている気がしますね。オンプレミスと同等のサービスレベルを実現しようとすると、IOPS保証やロードバランスなど複数のオプションを追加することとなり、長期的に見ればオンプレミスより高くつくことも知られてきています。また、クラウドベンダーの都合で仕様が頻繁に変わったり、メンテナンス時間が一方的に通知されたりで、振り回されるなんて声も聞く。まだまだオンプレが有意な案件が多くあって、そこでTintriの存在感も増している気がします。

──今後の要望としては何かありますか。

清水: ハードウェアのアップデートに期待しています。2Uのユニットでもっと大容量なモデルがあってもよいかと。あとはサポートVM数とそれに割り当てられるIOPSという観点で、リーズナブルな価格帯でのバリエーションの厚みが増すといいですね。

清家: 既に実装されているストレージの自動チューニングに加え、AIを活用したアプリケーション単位の可視化やストレージ運用の自動化が更に強化されることを期待します。アプリケーション特性を理解してのリソース最適化や、VMのポリシーに対する自動設定なんかができると魅力がさらにアップするんじゃないでしょうか。

小島: 容量の話が出ましたが商談ベースでは10~20数テラの案件が中心です。このクラスにマッチするモデルに対して、各モデルでサポートしているVM数を増やすのも現実的アプローチになるでしょう。昨今は様々な用途のストレージが登場していますが、常に重要なのは性能と容量のバランスだと考えます。

事例から読み解くTintriストレージの導入メリット

ユーザー4社が体感する「手間いらず」の真価

 東京と大阪で開催されたTintricity 2019では、注目すべき4つの事例講演が設けられた。それぞれのユーザーは、どのような狙いでTintriを導入し、どのような恩恵を享受しているのか。以下に各セッションのトピックを紹介しよう。

Case Study 1:Tintri VMstore T800ハイブリッドストレージで安心の“ほったらかしシステム”を実現できた

 大学共同利用機関法人は、大型測定機器やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)のリソースなど、大学単独では購入することが難しい高価な研究施設を共同利用し、共同研究を行う国家政策に基づいた研究機関である。

 同法人 自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室は、基礎生物学研究所(NIBB)、生理学研究所(NIPS)および分子科学研究所(IMS)のいわゆる岡崎3機関のNOC(ネットワークオペレーションセンター)として、主にネットワークの対外接続、基幹部およびネットワーク用サーバーなど共用システムの企画・運用・管理にあたっている。もっとも、専任者わずか3名という体制で、セキュリティ機器の運用も担当し、平成28年度からは情報セキュリティも担当することなり、手一杯の状況にあった。こうした状況下にあって同室の大野人侍氏は、「運用者の立場としては、手離れの良い(手間のかからない)システムを常に求めています」と本音を吐露した。

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 岡崎情報ネットワーク管理室 大野人侍氏

 とはいえ、システム面から確保しなければならない機能や性能があり、どこを落とし所とするのかのバランスが重要となる。特に本番環境ストレージに関しては、「データを決して失わない」「サービスを止めない」の2つが絶対条件だ。

 そうした中で導入したのが、Tintri VMstore T800ハイブリッドストレージである。選定に際しては「IPで大丈夫か」「NFSで大丈夫か」「ハイブリッドで大丈夫か」「そもそもFCのブロックストレージでなくて大丈夫か」など、さまざまな疑問の声も上がったという。

 結論としては、これらの懸念はどれも全く問題ないものばかりだったと振り返る。「ネットワーク屋からすれば、むしろIPのほうが分かりやすくて好都合です。ハイブリッドについても、確かにフラッシュのヒット率が90%を下回る瞬間はありますが、アプリケーションの実行やVM間の通信のパフォーマンスにも特段の問題はありません」と大野氏は語り、「安心してほったらかせるシステムになりました」と絶賛した。

Case Study 2:太陽生命のスマートワークを支えるVDI基盤を3年間にわたりノートラブル、ノーチューニングで運用

 太陽生命ではスマートワークの実現というビジョンを掲げ、ペーパーレス化の推進、オフィス環境の改善、支社業務の改革などを進めている。その基盤として選定したのがVDI (仮想デスクトップ基盤)である。

 同じT&DホールディングスグループのIT会社としてこのプロジェクトを支えてきたT&D情報システム IT基盤管理一課 マネージャーの谷口暢哉氏は、そこで実践した2つのチャレンジを紹介した。1つはVDIのソリューションをVMware Horizon Viewに変更したこと。もう1つはTintriストレージを採用したことである。

T&D情報システム株式会社 IT基盤管理一課 マネージャー 谷口暢哉氏

 当初はVMware社が提供するストレージ機能(VSAN)も検討したが、将来的に予想される全国160拠点の全職員4,300人、ゲストを含めた約6,500台の仮想デスクトップを集約する際の正確なサイジングを行えないという課題に対処するため、Tintriを採用した。「いろいろ悩んだ末でのTintriストレージですが、結果的にこの選定は大正解でした」と谷口氏。

 実際、このVDI環境は導入からすでに3年が経過しVDI数も増加しているが、現在もリリース当初と全く変わらない構成で運用できているという。「目的通りにパフォーマンスを最大限に発揮した運用を継続しています。しかも一切チューニングすることなく、です。これはとにかくすごいこと」と谷口氏は高く評価している。

 加えて、Tintriストレージに起因し、サービスに影響を与えるようなトラブルの発生は、3年間の運用を通して皆無だ。太陽生命においてTintriストレージは、いわば“空気のような存在”となっている。「ストレージ運用の全ての手間から解放されたい。すなわち計画時のサイジングや導入時のチューニング、運用管理に工数をかけたくないと考える企業に向けて、ぜひTintriストレージをお勧めしたいと思います」と谷口氏は締め括った。

Case Study 3:税務と会計に特化した80万件以上のシステム利用を支えるTintriストレージ「フル活用」の実態

 株式会社TKCは、1万1300人を超える税理士・公認会計士が所属する「TKC全国会」とその関与先企業である中堅・大企業に対して適正申告や経営改善支援、地方公共団体に対しては行政効率の向上を支援している。

 このサービスを提供するクラウド共通基盤で全面的に採用しているのがTintriストレージだ。TKCシステムエンジニアリングセンター クラウド化推進部長の三坊鉄平氏は、「2014年に2台から始まったTintriストレージの稼働数はこの5年間で13台に拡大し、その上で運用する仮想マシンの数も約3倍に増加しました」と語る。そして、これらのTintriストレージの効果をフルに活用すべく行ってきた4つの取り組みを紹介した。

株式会社TKC システムエンジニアリングセンター クラウド化推進部長 三坊鉄平氏

 まずは運用自動化への挑戦だ。Tintri Automation Toolkitを活用し、Latency、Flash hit、Performance reserves、Capacityの4つの項目を常時監視。「Latency、Flash hit、Performance reservesについて10分ごとに閾値超えをチェックすると共に、Capacity(ディスク使用率)についても毎朝一覧にしてレポート配信しています」(三坊氏)。

 次に、Tintri SyncVMを使用したデータベースサーバーのデータ移行である。Tintri SyncVMによってデータが格納された仮想ディスク(vDisk)を新しいバージョンのデータベースがインストールされている仮想マシンに高速に入れ替えることで、本番稼働中のサービスに影響を与えることなく、データ移行先のストレージ増設も行うことなく、バージョンアップが伴う複雑なデータベースの移行作業を標準化することができた。

 3つめは、稼働状況の可視化である。「Tintri Global Center(TGC)」と「Tintri Management Pack for vROps」、「VMware vRealize Operations(vROps)」の連携によるもので、Tintriストレージの稼働状況をvROpsのダッシュボードに自動表示するほか、稼働状況データからPDF形式のレポートを作成し、毎日メール配信しているという。

 そして最後が、オールフラッシュストレージの導入だ。TKCではTintri AnalyticsならびにTGC、vROpsのレポート機能を利用し、オールフラッシュストレージの導入効果を徹底的に検証。「この結果として、約5倍の使用量圧縮・重複排除率を維持できていることを確認できました」(三坊氏)との報告に、会場からは大きな拍手が送られた。

Case Study 4:利用・構築・運用の皆が楽できる「三方良し」を追求 高負荷VDI環境にTintriを選択した理由とは?

 文教、医療、金融、官庁自治体といった顧客にシステムの運用管理やネットワーク環境構築といった事業を手掛けるワールドビジネスセンター。同社が、昨今の技術進展に照らしつつ、2017年から新しい事業の柱として立ち上げたのがクラウド型のVDIサービス「Racdes」だ。「顧客先に常駐し現場のニーズに正対したキメ細かいサービスを手掛けてきたのが当社の強み。そうした中、業務システムに加えてデスクトップ環境も面倒を見てほしい、できればクラウドの形態が望ましいという声が高まってきたのが事業化に至った背景です」と奥田氏は説明する。

ワールドビジネスセンター株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション営業部 部長 奥田健二氏

 使う人も作る人も、そして日々の運用管理をする人も皆が楽できること。それを企画の軸としたものの、そうそう簡単な話ではない。「ヒアリングをした大学などでは、授業と授業の切れ目でログオン/ログオフが繰り返され、I/O負荷の突発的ピークが多発するといった難しい課題があることが聞かされました。“三方良し”を実現するための基盤、とりわけストレージ環境をどうするかが我々の問題だったのです」(奥田氏)。

 悩みを一掃することになったのがTintriだった。その機能の独自性については聞き及んでいたが、百聞は一見にしかずとばかりに検証環境を整えて様々な観点からテストを繰り返した。「サイジングにしてもパフォーマンスチューニングにしても高度な知見を必要としません。不穏な動きがあった場合でも管理画面から原因を特定しやすい工夫が盛り込まれており、とにもかくにも“手間いらず”なんです」とは奥田氏の弁だ。

 先に触れた、ログオン/ログオフがあるタイミングに集注するようなケースでも、従来環境では起動までに65秒を要していたものが、Tintriを持ち込むだけで特別なチューニングを施さなくても31秒にまで半減できることが明らかとなり、技術の優位性が如実に表れた。「世の中のクラウドシフトが加速する中で、当社としてはサービス品質を武器に、換言すれば顧客が納得するSLAを元にユーザーに寄り添って行かなければなりません。それを具現化する上でTintriは不可欠な存在です」と奥田氏は改めて強調した。

Tintriユーザーが本音で語るパネルディスカッション:東京開催

自動QoSなど運用現場の課題を一掃する機能に高評価 実用途から出てきた強化要望の声も

 イベント当日のプログラムの中でも、とりわけ会場に熱気が帯びたのがユーザー企業4社の担当者が登壇したパネルディスカッションだ。使い手ならではの本音が随所に盛り込まれ、来場者は熱心に耳を傾けていた。

モデレーターは、Tintri by DDN シニアシステムエンジニア 八木下洋平氏が担当した

Tintriストレージの導入で得られた効果とは

──まずは皆様の企業において、Tintriストレージを導入するに至った経緯と良かった点を教えてください。

木村: 三菱地所コミュニティとしてTintriを導入したのは、SIパートナーの丸紅情報システムズ、丸紅ITソリューションズからの強い推奨がきっかけです。実は本格的に仮想環境を導入すること自体が初めてで、Tintriについてもほとんど検証できていなかったのですが、思いのほか簡単に扱うことができて驚きました。現在、Tintri VMstore T800ハイブリッドストレージを利用し、基幹系のデータベースをフルパワーで稼働させているのですが、他のアプリケーションサーバーなどの運用を圧迫することもなく、ユーザーからのクレームも全くありません。自動QoSのお陰で手間を掛けずに運用が出来ています。

三菱地所コミュニティ株式会社 情報システム部 システムサポートグループ チーフ 木村温氏

山崎: NECソリューションイノベータがTintriを導入したのは、7~8年くらい前にITインフラの評価環境として採用したのが最初です。現在は、Windows 10のVDI (仮想デスクトップ)基盤の評価検証などを行っています。各VMにCドライブを割り当ててさまざまな機能を試していますが、データの重複排除・圧縮率については20倍くらいの効果がでています。また、3,000VM を一斉にブートしたり、セキュリティパッチを同時に適用するといった高負荷状態にあっても、自動QoSがパフォーマンスのバランスを上手くとってくれるのもありがたいですね。

舩窪: TISではお客様に提供しているITサービスにおいて、よりI/O性能の高いVMを新メニューとしてリリースすべく準備を進めていました。そうした中で出会ったのがTintriです。トータルで必要となる容量とI/O性能を確定すれば、1ボリュームで導入できるという容易性のおかげで、お客様が要求するビジネススピードに対応できました。また、VMからネットワーク、ストレージまですべてのレイヤーをまたいだI/O性能を一元的に可視化し、問題が起こった際にボトルネックを早急に特定できる点も高く評価しています。

高橋: DMMがTintriを導入したのは、2015年に開催されたVMwareのイベントで知ったのがきっかけです。実はそれ以前、当社はベアメタル至上主義といっても過言ではない状況で、次々に物理サーバーを購入していました。さすがに共通のリソースプールを設けるべきではという議論が持ち上がったのですが、基盤構築を任されたのは私一人だけ。そうなるともはやストレージの選択肢は、Tintri以外にありませんでした。

合同会社DMM.com インフラ部 サーバインフラグループ 高橋尚史氏

他社共有ストレージやHCIと比較した場合はどうか?

──他社ストレージと比べた場合、率直なところTintriをどのように評価しますか。

山崎: 当社は他社の共有ストレージも利用していますが、先にも申し上げたように、TintriはVDI環境で重複排除・圧縮を効かせるといった運用面で優位性を発揮するストレージという理解です。ポスト型の重複排除と違いインラインの場合は性能や容量効率が良く、またインライン型の中でも性能劣化するストレージがある中で、性能と容量効率の両面でTintriは優れていました。誤解を恐れずに言えば、仮想環境に特化されたストレージと割り切ることで、さまざまなメリットを最大限に享受できます。

NECソリューションイノベータ株式会社 グループICT事業本部 マネージャー 山崎国弘氏

──HCI(ハイパーコンバージドインフラ)と比較した場合はどうでしょうか。

木村: 当社でもHCIの導入を検討し、見積りまでとったものの、ホストのスペックとディスクのサイズが合わず、結局のところ断念しました。HCIは基本的に“セット売り”となるため、例えばサーバーのCPUパワーが欲しいのに、ストレージまで足さなければならないといったことが起こります。そこがHCIの不便なところかな、と個人的には思います。特定のリソースが必要になった時に、必要なだけ追加するといったことを行うと、HCIは非常に割高になってしまうケースがあるのです。

山崎: 当社もHCIについて、机上でコストシミュレーションしたことがあるのですが、やはり大規模になるに従ってコストメリットを出すのが難しくなります。木村さんが仰ったようにCPU、メモリー、ディスクといったリソースを全部同時に増設しなければならないのがその理由です。ホストサーバーが3~10台程度の規模であればHCIのメリットを十分に享受できるのですが、それ以上の規模になるとさまざまなリソースのバランスが、だんだん悪くなっていきます。Tintriストレージを利用する限り、そうした課題に悩まされることはありません。

パブリッククラウドとの棲み分けはどうなる?

──昨今のITインフラで無視することができないのがAWSやMicrosoft Azureといったパブリッククラウドですが、そこから提供されているストレージサービスとTintriの棲み分けをどのように考えていますか。

舩窪: パブリッククラウドとオンプレミスの棲み分けについて、一般論として語られている通り、ある一定以上の規模または長期間の利用になると、オンプレミスの方がパブリッククラウドよりも運用コストが安くなる分岐点が必ずあります。そもそもオンプレミスではパブリッククラウドよりも大きな自由度を得ることができ、利用料金(リース費用)を固定化して計算できるといったメリットもあります。当然、Tintriストレージについても同じことが言えます。

 ただ、一方で当社においてもパブリッククラウドの利用が増えているのは事実です。小規模でなおかつ短期間の利用であれば、パブリッククラウドの方がはるかにコストを抑えることができます。また、スモールスタートでリソースを拡張していく場合でもコストを最適化できます。そしてもう一つ、パブリッククラウドではコンピューティングリソース以外にも多種多様なテクノロジーがPaaS(Platform as a Service)として提供されています。要するにその機能を利用したいという理由から、パブリッククラウドを選択するケースもあります。

TIS株式会社 サービス事業部統括本部 プラットフォームサービス第2部 上級主任 舩窪聡氏

高橋: 舩窪さんから「オンプレミスの方がパブリッククラウドよりも運用コストが安くなる分岐点がある」というお話しがありましたが、当社が提供している各サービスはまさにその最たるものです。例えば動画配信サービスを取り上げると、そのコンテンツ容量は数十ペタバイト級の規模に達しており、パブリッククラウドを選択することによる経済合理性はまったく得られません。もちろん、そんな当社においてもパブリッククラウドを選択する余地がないわけではありません。当社が創業したのは1998年のことで、レガシー化したアプリケーションも相当数あります。これらのアプリケーションのモダナイゼーションを進めていく中で、パブリッククラウドを活用することの経済合理性が表れてくると考えています。

Tintriストレージに対する今後の期待

──今後のITインフラの在り方を展望する中で、Tintriストレージが果たしていくべき役割が見えてきたような気がします。その意味でも、皆様からTintriに対する要望や期待することがあれば、ぜひお聞かせください。

舩窪: 当社はこのたび、コンテナ技術を活用したアプリケーションプラットフォームをプライベート環境において月額課金型で利用できるエンタープライズ向けコンテナサービスをリリースしました。今後、これらのコンテナイメージの中身についても、VMと同様の粒度で可視化やデータ保護を行える仕組みを提供していただけるとありがたいですね。

山崎: 私からは、Tintriストレージのデータ移行をより簡単に実行できる機能をお願いします。実際問題として5年前に導入したTintriストレージはそろそろリプレースの時期が近付いているのですが、そこで運用している多数のVMを、まとめて新ストレージに移行できる機能やツールを提供していただけると嬉しいです。

──本日は貴重なご意見をありがとうございました。皆様のご期待に応えられるよう、私たちもTintriストレージのさらなる機能強化と進化に全力を挙げていきます。

【問い合わせ情報】

Tintri by DDN
info.japan@tintri.com
https://tintri.co.jp/