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Oracle Cloudのデータセンターがいよいよ日本へ! パートナー企業がOCI Readyのソリューションを紹介

 安定性やセキュリティ、コストの不透明さなど、従来のパブリッククラウドの課題を一掃した“第二世代”クラウドとして、日本にもデータセンターが開設される「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)。その普及を後押しするのが、OCIを基盤として多様なソリューションを提供するパートナーたちだ。日本オラクル株式会社は3月27日、Oracle Cloudに関わるパートナー企業と最新情報を共有するためのプライベートセミナー「第3回 Oracle Cloud パートナーネットワーキング」を開催。同イベントでは、パートナー企業各社からOCI対応ソリューションが紹介された。

パートナーとの情報共有でOCIの底力を引き出す

 「いよいよ今春、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)の新たなデータセンターが日本に開設されます」――最初に登壇した日本オラクル株式会社の風巻陽介氏はこう切り出し、「OCIをビジネスに最適なかたちで活用してもらうには、OCIの性能を企業ごとに最適なかたちで届けるための一工夫もポイントとなります。本セミナーはOCI上で稼動するアプリケーションや提案事例などの情報を共有することで、その実践を支援するための新たな協業の場として活用して欲しいです」とセミナーの趣旨を説明した。

日本オラクル株式会社 Innovation Alliance推進本部 風巻陽介氏

 パートナーネットワーキングは今回でまだ3回目だが、すでに成果はいくつも上がっているという。前回のセミナーではOCI対応のバックアップツールとして「Commvault」を紹介。すると、バックアップや移行、VMマイグレーションなどを目的に社内外からCommvaultに関する問い合わせが多数寄せられている。また、懇親会での交流を通じて、アプリ開発とインフラをそれぞれ得意とするパートナー同士の、強みと弱みを補完し合う新たな協業も活性化しはじめているそうだ。

 セミナーでは情報提供と併せて、実験的な試みにも着手している。Oracle Cloud関連サービスの取り扱いに関して、セミナー参加者に5段階評価で詳細に尋ねるアンケート調査もその1つだ。

 「アンケートの狙いはOracle Cloudを検討する企業へのパートナーの紹介にあります。より良いマッチングのためにご協力をお願いしています」(風巻氏)

 併せて、OCIを基礎から学べるオンライン・トレーニングとして、サービスの概要から開発、実装、運用まで、クラウド環境を使用しながら習得できる「PaaS/IaaS Unlimited Cloud Learning Subscription」を紹介。同教材はクラウド環境を1年間、何度でも繰り返して利用できるため、どれだけ学習しても追加料金がかからないのは嬉しいところ。しかも、今ならパートナー限定特別価格の19万3752円(税込み、1ユーザー1年利用可能)で購入できるという。

OCI技術者育成のためのWebトレーニングコース「PaaS/IaaS Unlimited Cloud Learning Subscription」

 風巻氏は、「当社は現在、OCIの東京データセンターの開設に向けて、さまざまなテーマで毎週のようにセミナーを開催しています。そこで最新の情報をキャッチアップいただくと共に、パートナー様の成功事例を今後の本セミナーでぜひ共有いただきたいです」と参加者に呼びかけた。

費用対効果に優れるIP-VPNがクラウド接続の現実解

 次に、NTTコミュニケーションズ株式会社の稲田遼氏が、クラウド環境でのネットワーク側のリスクと、そこで採るべき対応法について解説した。

NTTコミュニケーションズ株式会社 ネットワークサービス部 ネットワークビジネスエキスパート 稲田遼氏

 クラウドで管理されるデータの重要性が日増しに高まる中、ネットワークには通信途中でのデータの安全性や通信品質を確保するための高いセキュリティと安定性の向上がより強く求められている。その手法として、現在、(1)ネットワークを占有する「専用線」、(2)インターネット上に仮想的な専用経路を設ける「インターネットVPN」、(3)MPLSベースの閉域IP網を中心にアクセス回線経由で接続する「IP-VPN」の3つが一般的に用いられているが、このうち稲田氏が特に推奨するのがIP-VPNだ。

 「インターネットVPNは料金が最も安価な反面、通信品質はネットの混み具合により大きく左右されます。逆に専用線は品質は高いもののコスト負担も高額です。対して、IP-VPNは、ユーザーを制限して通信品質を確保した上で、利用料もほどほど。かつセキュリティは専用線に匹敵するなど、最も優れていると考えております」(稲田氏)

クラウドへの接続方式の比較

 NTTコミュニケーションズではIP-VPNによるクラウド接続サービスとして、企業向けVPNサービス「Arcstar Universal One」から冗長構成での閉域接続を実現した「Multi-Cloud Connect」を提供中だ。同サービスでは現在、AWSやBox、Oracle Cloud(米国)など約10のクラウドに直接接続しており、日本のOCIデータセンターにもサービスインと同時に対応を予定している。

 クラウドへの閉域接続を自社で行うには、データセンターにルータなどの機材を追加する必要があるが、「Multi-Cloud Connectはサービスとして、ネットワーク直結でクラウドへの接続環境を提供するため、それらの手間やコストは一切不要です」(稲田氏)。加えて、ルーティング設定や設定変更などに関する充実したサポート体制も敷かれており、スキルに不安がある企業でも安心して利用に乗り出せることから、Multi-Cloud Connectの導入企業はすでに1,000社を超えるという。

NTTコミュニケーションズのMulti-Cloud Connectは、その名の通り主要なクラウドに直結(冗長構成)できるサービス。OCIの東京リージョンにも対応予定

 社内システムの一部にクラウドを利用するケースでは、インターネットの通信遅延やセキュリティがクラウド利用の課題となりがちだ。対して拠点間ネットワークをArcstar Universal Oneに置き換え、Multi-Cloud Connectでクラウドを直収することで課題が抜本的に解消される。また、複数クラウドによるDR環境では、ネットワークやルータを個別に用意する必要がなくなることで手間とコストを格段に削減できる。

 マルチクラウド化が進む中、IP-VPNの活用法は、今後、さらなる進化を見せそうだ。

データドリブンを加速させる「MapR on OCI」

 クラウド利用でホットな領域の1つがビッグデータ活用だ。だが、大量データの「利用」と「管理」の両立の難しさや、技術トレンドの移り変わりの激しさが取り組みの“深化”を困難にさせている。

 マップアール・テクノロジーズ株式会社の朝枝浩毅氏は、「これらの課題に対応し、ビジネスを加速させるためにも、今、サイロ化されたデータやシステムの統合化を実現できる“データウェア”が、企業で強く求められています」と指摘。データウェアを実現する同社のデータ基盤製品「MapR」を紹介した。

マップアール・テクノロジーズ株式会社 朝枝浩毅氏

 朝枝氏によると、データウェアとはデータの管理から保護、ガバナンス、オーケストレーションまでを一貫して実現する仕組みでありアプローチだという。MapRは、そのための(1)広範なAPIによる、(2)構造化データからストリーム、非構造化データまでの多様なデータの、(3)あらゆる分析アプリでの活用を可能とする、(4)エクサバイト級の拡張性と高い性能を実現し、しかも、(5)エッジからクラウド、コンテナまでのデータ管理/処理を大幅に簡素化、といった要件のすべてを満たすデータ基盤であるという。

 開発にあたりApache Hadoopが抱える課題を踏まえ、その互換性を保ちつつアーキテクチャーを見直して再実装。Javaで実装されていた分散ファイルシステムの「HDFS」を、C/C++により独自の「MapR FS」として実装することで、コンパクションやガベージコレクションの問題を解消したほか、多数の機能やツールを新たに用意することで、企業ユースに最適な、Hadoopを超えたより高度な分散ファイルシステム環境を実現した。

 朝枝氏が他のHadoopディストリビューションとの代表的な差別化点として挙げるのが「分散ファイルシステムをNFSストレージとしても利用できること」だ。

 「これにより、通常のストレージと同様のデータアクセスを可能にすることで、データ基盤の違いによるアプリ側の改修が不要となります。加えてFUSEベースのPOSIXクライアントの利用により、より高速なRead/Write処理も実現できます」(朝枝氏)

MapR-FSはHDFS互換の分散ファイルシステムとしてHadoopエコシステムからアクセスできるほか、NFSストレージとしても利用できる
MapRデータプラットフォームのユースケースと導入効果

 MapRで成果を上げた企業はすでに数多い。米ウォルマートは、117PBを超えるデータ基盤をMapRで構築し、2,500人のデータサイエンティストのデータ分析環境を整えることで10億ドルの売り上げ向上を実現しているという。また、アメリカンエキスプレスでも高速な不正検知やレコメンドなどを目的とした機械学習の統合基盤にMapRを採用している。

 OCIの視点では、米Oracleと米MapRのR&D部門同士による共同技術検証も見逃せない。その成果はOCIでの実行テストにおける、コンピューティング能力で最大36%、ストレージ能力で同50%の向上という結果に表れている。

 朝枝氏は「OCIとMapRによる分析基盤の性能は群を抜いており、MapR on OCIがデータドリブン経営を加速させます」と強調した。

AIの“繰り返し学習”を効率化する学習/管理基盤

 最後のセッションではスカイマインド株式会社の藤松良夫氏が、今後のデジタル変革の主役となる人工知能(AI)の開発/管理支援ツール「Skymind SKIL」を紹介した。

 藤松氏は、「AI利用と一言で言っても一筋縄でいくものではありません」と断言する。背景には、AIの分析/予測精度を高めるうえで繰り返しの学習が欠かせないが、その取り組みは試行錯誤の連続であるため、効率的かつ的確な開発は現実的に極めて困難なことがある。

スカイマインド株式会社 執行役員 藤松良夫氏

 「ディープラーニング(DL)のツールはいくつもあり、どれを利用するかの判断がそもそも難しい。また、企業のビッグデータ基盤はAI研究者に馴染みが薄く、必要なデータを取り出すのも一苦労です。既存のデータ基盤に直結して継続的にモデルを自動的に学習するプロセスを構築することは、手間のかかる作業です。無論、間違った学習や精度の低いモデルをロールバックさせるためのバージョン管理も必要です。さらに、AIの本番環境の実装では、研究者と開発者の知識面のギャップも厄介です」(藤松氏)

AIのビジネス活用における課題。AIの精度を向上し、維持するにはAIモデルの調整と再学習が不可欠であり、モデルを適切にバージョン管理する必要がある

 Skymind SKILは、この問題を打開する「世界初の商用DLプラットフォーム」(藤松氏)だ。具体的には、同社が開発するオープンソースのDL用計算フレームワーク「Deeplearninng4j」と、AI学習の全プロセスにおける管理機能、DL関連ツールとの接続機能をワンパッケージ化。これ1つで多様なデータソースから、学習用データを迅速に収集し、研究者と開発者がAIの共同開発に効率的に取り組める環境整備を可能とした。

Skymind SKILのシステム構成図。AIモデルの開発・運用・管理をシステム化することで、企業のAI活用を支援する

 携帯キャリアの仏Orange(旧称フランス・テレコム)はSkymind SKILの採用により、既存のHadoopクラスタに格納されていたデータでのDLによる学習環境を整え、年間数十億円もの国際電話の詐欺被害額を格段に減少させている。また、盗電により年間で数億円の被害が発生していた、世界最大の電力会社である中国の国家電網公司(State Grid Corporation of China)では、Skymindの開発したAIモデルにより高い精度で検出できるようになった。

 最後に藤松氏は、Skymind SKILが、AI開発・運用基盤に必要とされる「パフォーマンス」「セキュリティ」「ポータビリティ」「柔軟性」「エコシステム」のすべてを兼ね備えていることについて触れ、「その良さを理解してもらうために、ユーザー企業と販売パートナーの双方に対して説明会も実施しています。OCIの新たな提案材料を検討しているパートナーの方々の参加をお待ちしています」と語り話を締めくくった。

◆OPN限定◆第4回 Oracle Cloud パートナーネットワーキング

開催日時:2019年4月18日15:30-18:00(受付開始15:00~)
URL:https://eventreg.oracle.com/profile/web/index.cfm?PKwebID=0x629642abcd