特別企画
不動産業なのに○○がない!? INVESTORS CLOUDがITで創った前人未踏のビジネスモデル
(2014/11/7 06:00)
クラウドで構築した基盤「みんなのアパート経営」
同社が構築したのは、「みんなのアパート経営」という名のクラウド型プラットフォームだ。「ESTATE(土地情報の仕入)」「DMP(オーナー集客)」「SALES(土地のマッチング)」「ARCHITECTS(建築発注・工程管理)」「PROPERTY(アパート管理)」の5機能がそれぞれプライベートクラウド型で運用されている。
不動産業はデジタル化が比較的遅れている。情報のやり取りの多くをFAXや印刷物に頼っているのが現状だ。それらをデジタル化することで顧客管理の効率化が図られた一方、業績という面では、特に「DMP」と「ARCHITECTS」の効果が大きいという。
「DMP」はオーナー集客のための仕組みで、インターネット広告の管理などを行う。「これにより、問い合わせの経路分析が可能となりました。広告の効果測定や分析のノウハウがたまり、今まで取りこぼしていた案件も取れるようになりました」。
「ARCHITECTS」では、アパートの受注管理のほか、建築工程管理を行う。「それまではExcelで管理していました。建築工程はただでさえ多岐にわたる上、当社は『1棟として同じものは建てない』をコンセプトとするため、毎回工程も異なります。Excel管理では時に間違いも起こって顧客に大激怒されることもありました。そこで、これはIT化しないとダメだと考えたのです」。
具体的にはまず、建築工程の業務フローをすべて書き出し、「これさえチェックすれば間違いなく建てられる」という136項目を独自に洗い出した。それでも10棟で1360項目と膨大なため、項目ごとに必要な業務を事前にプリセットし、半自動的にタスク化するシステムを作った。「その日に何をすべきかをすべて把握できる仕組みで、たとえば契約処理の確認、担当者の割り当て、各種申請中のタスクがどこで何時間止まっているか、といったことまで簡単に確認できます」。
システムが一通り完成したのが2010年。それ以降は驚くような業績アップを果たしている。「2013年は売上138億円。不動産業界では100億円を売り上げるには1000名のスタッフが必要だとされていますが、当社は約180名(2013年11月現在)です。ITを駆使しなければ到底不可能でした。今後も従業員を増やすよりも、ITによる効率化でリソース問題を解消していくつもりです」。
同社はキャッチコピーも「ITで、不動産をカッコよく」というもので、IT利活用にこだわりを持つ。それにより実現したのは「不動産のECプラットフォーム化」といえる仕組みで、古木氏の目標は「不動産業のAmazonになること」だとしている。
とはいえ、ITの仕組みを最初から実現できていたのか、というとそうではない。創業は2006年で、当時は在庫型モデルの新築アパート分譲が主な事業だった。方向性がガラリと変わったのは、外部環境の急変で、倒産寸前まで追い込まれたのが理由。それを乗り切るために、ITを活用するしかなかった。
きっかけは、2008年のリーマン・ショックだった。