特別企画

ハードウェアオフロード技術を活用したWindows Server 2012 R2の新しい仮想化ソリューション【前編】

Hyper-Vのストレージアクセスを劇的に高速化するSMB 3.0とRDMA技術

小規模環境でも導入が容易なSMB Directによる高速ストレージ接続

 InfiniBandや10GbE/40GbEを活用した高速I/Oソリューションは、データセンター事業者などが手がける大規模システムで採用されるものだと考えられがちだが、実は小規模システムでも十分な成果を上げられる。それをすでに実践しているエンドユーザーが、社会医療法人 中信勤労者医療協会 松本協立病院(以下、松本協立病院)である。松本協立病院では、仮想化基盤を支える物理サーバーとファイルサーバー間のインターコネクトとしてInfiniBand FDRを導入している。

 松本協立病院 システム課 課長の白川栄治氏は、同病院のシステム環境にInfiniBandを採用した経緯について「院内のさまざまなシステムを構築する際には、コストパフォーマンスを重視して2~3Uのラックマウントサーバーを組み合わせています。しかし、このような小型のサーバーにはHDDをあまり内蔵できませんので、必然的にディスクストレージを外部に出すしかありません。だからこそ、サーバーとストレージ間のインターコネクトが重要になってくるのです。かつてはパラレルSCSIでストレージを接続していましたが、その当時からInfiniBandの動向に注目してきました。長い間、導入には踏み切れずにいましたが、Windows Server 2012でInfiniBandが正式にサポートされ、2013年にInfiniBandの導入がかないました。InfiniBandのカッパーケーブリングは、サーバーとストレージをローカルに接続するにはちょうどよく、またコストを最小限に抑えられる点も気に入っています」と説明する。

 松本協立病院では、Hyper-Vベースの仮想環境を提供するサーバー、そして外付けのディスクストレージに相当する2台のファイルサーバーにMellanox製のInfiniBandアダプタ(ConnectX-3世代)を搭載し、InfiniBandスイッチを介して相互に接続している。また、RDMA技術をネイティブにサポートするInfiniBandの強みを生かし、ファイルサーバーとのアクセスにはSMB Directをいち早く採用している。

 Hyper-V上ではすでに15台程度の仮想サーバーが稼働しているが、その中で最も大きなシステムとなるのがMicrosoft Exchange Serverだ。2台のファイルサーバーには、Exchange Serverのメールボックスデータベースを冗長的に配置し、システムの可用性を最大限に高めている。今後は、電子カルテシステムや医療システムの統合も視野に入れており、同病院の仮想環境はさらに広がりを見せていく。

 白川氏は、「医療の現場では、法律の定めによって最低5年間のカルテ保管が義務付けられています。医療訴訟を考慮すると10年以上の保存が求められ、当院でも電子カルテを導入した2001年からデータをまったく廃棄していません。胸のレントゲンで1枚あたり40MB、CTでは1回の検査で500KBの画像が200~300枚も生成されます。最先端の高度医療機器では、画像の高精細化によってさらにデータサイズが増加しています。医療システムでは、こうした膨大なデータをスピーディーにやり取りする必要があり、SMB Directのような高速転送プロトコルが威力を発揮します」と述べている。

社会医療法人 中信勤労者医療協会 松本協立病院 システム課 課長の白川栄治氏

 後編では、仮想化基盤の柔軟性を高める上で不可欠なオーバーレイ型ネットワーク仮想化の概要と、こうしたオーバーレイネットワーク処理に対するNICのハードウェアオフロード技術を紹介していく。

伊勢 雅英