特別企画

Dell EMC World 2017で発表された新製品・新機能を整理する

オールフラッシュストレージ、HCI、ネットワーキングなどの新製品を一挙紹介

 デルとEMCジャパンは5月31日、5月8日~11日までラスベガスで開催されたイベント「Dell EMC World 2017」のプレス向け説明会を開催し、同イベントで発表された新製品や新機能、日本における今後の展開などを紹介した。

 新製品や新機能は非常に多くのものが発表されているが、本稿では、その説明会の内容をもとにそれらを整理していく。

3つの戦略プライオリティ『クラウド』『インフラ』『サービス&コンサンプション』

 まずは、戦略をおさらいしよう。

 デルおよびEMCが掲げている戦略上のプライオリティには、大きく『クラウド』『インフラストラクチャ』『サービス&コンサンプション』の3つがある。

 このうちクラウドについて、EMCジャパン 常務執行役員 システムズ エンジニアリング統括本部長の飯塚力哉氏は、「企業においてクラウドサービスをどのように利用してくのか、あるいはクラウド技術をどのように活用していくのかなどメリットをきちんと踏まえたうえで、お客さまに対して自分たちがどのように貢献できるかを考えている」と述べ、企業内で利用するアプリケーションを既存のミッションクリティカルな基幹アプリケーション、汎用的なアプリケーション、そしてクラウドネイティブなアプリケーションの3つに分類し、それぞれのカテゴリごとに対応する製品やサービスを紹介した。

クラウド戦略

 次いでインフラストラクチャ戦略については、データセンターのインフラストラクチャを最新の技術に置き換える『モダナイズ』、サービスデリバリの『自動化』、そしてIT全体を支える組織の『運用モデルの変革』を提案している。具体的には、ストレージやサーバーのフラッシュ技術、スケール可能なアーキテクチャ、ソフトウェアデファインド、クラウド対応、そして信頼性であるという。

インフラストラクチャ戦略

 そして、サービスのコンサンプション(消費)モデル戦略によって、デルとEMCは従来の買い切りのモデルではなく、利用したサービスに対して料金を支払うことができるようになった。これによって導入時に多額の投資をすることなく、柔軟なITプランニングが可能になる。

コンサンプション(消費)モデル戦略

オールフラッシュをはじめとする新たなストレージ製品

 ここからは、具体的な製品を見ていく。

 オールフラッシュストレージの新製品として発表されたのは、ハイエンドモデルの「VMAX 950F」と「XtremIO X2」、ミッドレンジの「Dell EMC Unity」と「SC5020」。

 フラグシップ製品のハイエンドストレージである「VMAX 950F」は、既存モデルのVMAX 850Fと比較してIOPSの68%向上、応答時間の30%高速化を実現している。最新のIntel CPUを搭載し、大規模環境においてパフォーマンスが発揮できるように設計されたソフトウェアによって、フットプリントも25%削減している。

 さらに飯塚氏は「99.9999%以上の可用性を提供できるオールフラッシュのストレージ製品」と述べ、パフォーマンスやコスト削減だけではなく、ミッションクリティカル環境で重視される可用性についても強くアピールした。

 一方、オールフラッシュ向けに設計されたアーキテクチャが特徴である「XtremIO」の次世代モデルとして発表されたのが「XtremIO X2」だ。飯塚氏は「容量やパフォーマンスの向上だけではなく、データの収納効率や設置面積などの改善によって大幅なコスト削減できる製品」と述べ、応答時間を最大で80%短縮し、25%のデータ削減、iCDM(統合されたコピーデータ管理)によりクラスタあたり2倍のコピーをサポートなどを説明。さらに、X-Brickの単位容量3倍、ラック密度4倍、有効容量は最大で5.5PBとなっており、容量あたりの単価を前モデル3分の1に削減できるという。

ハイパフォーマンスフラッシュストレージ「VMAX 950F」
次世代オールフラッシュストレージ「XtremIO X2」

 エントリ/ミッドレンジ向けのストレージ製品は、「Dell EMC Unity」および「SCシリーズ」に新製品が追加されている。飯塚氏は「この領域の製品は、できるだけ簡単に操作できることが重要」と述べ、導入のセットアップを含め、わかりやすい操作性を実現していると説明した。

 ミッドレンジ向けの「Dell EMC Unity」には、4つのオールフラッシュモデル「350F」「450F」「550F」「650F」が発表された。高密度の80ドライブ、3Uのフットプリントで、最大500TBの有効ストレージ容量を提供。前モデルとの比較では、密度が8倍、ファイルシステムの有効容量も8倍、パフォーマンスも33%向上している。最大80台のドライブを内蔵でき、有効容量は最大で500TBとなる。

 エントリ/ミッドレンジ向けのハイブリッドストレージ「SCシリーズ」には、新たに「SC5020」が追加された。現在幅広く普及している「SC4020」アレイの後継モデルとして、30の内蔵ドライブベイ、デュアルコントローラ、FC、iSCSI、ダイレクトアタッチSASへの接続性をサポートする新しい3Uフォーマットで、最大45%強化されたIOPS、2倍(2PB)の最大容量、3倍の帯域幅を提供する。

エントリ/ミッドレンジ向けストレージ

 ソフトウェアによってストレージを仮想化するSoftware Defined Storage(SDS)の製品についても、ブロック型の「Dell EMC ScaleIO.Next」が追加され、オブジェクト型の「Dell EMC ECS」はアップデートが発表された。飯塚氏は「最新のハードウェアで最新の仮想化技術が利用できる」と述べ、いずれのSDS製品も第14世代「Dell EMC PowerEdge」サーバーでの動作が保証すると説明した。

 また、スケールアウト型ストレージの「IsilonSD Edge」のアップデート、ストリーミングIoTデータを格納・分析し、リアルタイムの意思決定を支援するSDS「Project Nautilus」のリリース、「Ready Node」製品群の拡張なども発表されている。

新しい統合データ保護アプライアンス「IDPA」

 データバックアップなどデータ保護については、ストレージ、データ保護ソフトウェア、検索および分析機能を1つのアプライアンスに統合したコンバージド型ソリューションとして「Integrated Data Protection Appliance(以下、IDPA)」が発表された。

 飯塚氏は新しいアプライアンスのIDPAを「これまでお客さまの要件に合わせて個別に導入していたData Domain、Avamar、Data Domain Boostなどの製品を、統合されたアプライアンスとして提供することで、導入期間の短縮、パフォーマンスの向上、重複排除機能、使用可能容量を最大で1PBまでサポートするなどのエンハンスが得られる」と説明する。IDPAは、アプリケーションとプラットフォーム全体を通じたデータ保護を実現するとともに、ネイティブクラウドティアリングによってクラウドへの長期保管データの階層化をサポートするという。

 また、IDPAは主要な基幹業務アプリケーションおよびプラットフォームとの統合が可能なため、バックアップのパフォーマンス向上だけではなく、MongoDB、Hadoop、MySQLなどアプリケーション管理者をオーナーとしたセルフサービス型データ保護環境を提供する。

 今回発表されたIDPAのラインアップは、エントリモデルの「DP5300」「DP5800」および、ハイエンドモデルの「DP8300」「DP8800」の4モデルとなっている。

統合データ保護アプライアンス「IDPA」

 データ保護ソリューションの「Dell EMC Data Protection」は、クラウド対応の新たな機能を追加した新バージョン「Data Domain Virtual Edition(DD VE) 3.1」がリリースされる。これによって、企業はクラウド環境でData Domainのパフォーマンス、効率性、信頼性を活用することができるようになる。DD VE3.1はAWSやおよびMicrosoft Azure内に構築可能で、ワークロードのバックアップ、クラウド間やクラウド内における効率的なレプリケーションが可能になるという。

 また、データ移行をサポートする「Dell EMC Services」では、データ移行プラットフォームにおいてベンダーに依存しないメソドロジー「Intelligent Data Mobility(IDM)2.0」を提供する。このIDMによって、ユーザーは稼働中のアプリケーションとデータへの影響を最小限に抑えながら、低コストで短期間に価値を引き出すことが可能になる。

ハイパーコンバージドインフラの新製品および新機能

 HCI製品には、アプライアンス「Dell EMC VxRail」および「Dell EMC XC」の新モデルが発表されている。

 デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 ソリューション本部 本部長の正田三四郎氏は、ITシステムを自動車にたとえ、「自動車は購入すればすぐに走る状態で提供されるが、ITシステムはパーツのレベルで提供されている状態。これらのパーツをビルドするためにお客さま自身、あるいはSIerにコストをかけている。ITによりビジネスを革新するためには、ROIを出すまでの時間は短くなければならない。ベンダーによる動作検証が済んでいる構成を利用することで、お客さまはもっとビジネス革新に力を注ぐことができるようになる」と、ハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)の重要性をアピールした。

デル株式会社 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 ソリューション本部 本部長の正田三四郎氏

 Dell EMC VxRailには、同じグループ企業でもあるVMwareとの共同エンジニアリングにより、サーバー仮想化ソフトウェア「VMware vSphere 6.5」とSDS製品「VMware vSAN 6.6」を搭載するモデル「VxRail 4.5」を発表した。

 なお、同製品は近日発売予定の第14世代「Dell EMC PowerEdge」サーバーで利用可能な新しいエンタープライズ機能を提供する予定であるという。

 また、3ノード構成で300万円からの低価格シングルプロセッサオプションも用意されており、最大64ノードのスケールアップをサポートしつつ、プロセッサベースのライセンスコストを低減することができる。

VxRail 4.5は2017年後半にリリース予定

 コンピューティング、ストレージ、仮想化のすべてのリソースを、ユーザーの要望に合わせてカスタマイズしたターンキー(導入してすぐに利用できるように設定されている)アプライアンスのDell EMC XCには、新モデルとして「Dell EMC XC430 Xpress」が発表されている。中堅中小企業など小規模利用向けにHCIの機能を提供することを想定し、3ノード構成で300万円からという低価格帯を実現している。

小規模利用向けエンタープライズHCI「Dell EMC XC430 Xpress」

 なお、ラックスケールのHCIシステムであるDell EMC VxRackについては、SDNのScale IOを活用する「VxRack FLEX」および、統合されたSoftware Defined Data Center(SDDC)である「VMware Cloud Foundation」を活用する「VxRack SDDC」など、ポートフォリオがアップデートされている。

 さらに、Microsoft Azure Stackをベースにしたアプライアンス「Dell EMC Cloud for Microsoft Azure Stack」のリリースを2017年後半に予定されている。正式な製品発表はMicrosoftの製品リリースの後、検証を完了してからになるが、すでに野村総合研究所が同社のマルチクラウド統合管理プラットフォーム「mPLAT Suite」のグローバル展開を視野に、Dell EMCとの協業を表明している。

 正田氏は「Microsoft Azure Stackをアプライアンスで提供できるベンダーは、当社を含めて4社しかいない。Dell EMCは戦略的プランニングから導入、運用、継続的なサポートまですべてのステップで幅広いサポートを提供することができるベンダーだ」と述べた。

「Dell EMC Cloud for Microsoft Azure Stack」は、Microsoftの製品リリース後、検証を行ってから正式な発表となる

オープンネットワーキングでも新製品を投入

 Dell EMCは、オープンネットワーキングについてもポートフォリオを拡大している。

 「S5100-ON」スイッチは、25GbEオープンネットワーキングスイッチとして、インラック コネクティビティで10GbEスイッチの2倍以上のスループットを提供する。さらに、100GbEのファブリック・コネクティビティ用に設計されている100GbEアップリンクが、ラック間のネットワークトラフィックを促進するという。

 「S4100-ON」スイッチは、多機能型のデータセンター向けオープンネットワーキングToRスイッチ。高密度の10GbEネットワーク、LAN、SAN(Storage Area Network)の通信に最適化されているという。

 また、「S5100-ON」スイッチと「S4100-ON」スイッチは、Dell EMCのネットワーキングOS「OS10 Enterprise Edition」とともに標準出荷される最初のスイッチ製品となる。

 なお、「N110-ON」スイッチは、電力効率とコスト効率に優れたキャンパス環境向けのスイッチファミリーも発表されている。

オープンネットワーキングの新製品