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レノボ、新体制でx86サーバーの日本生産とスマホ参入を表明
(2015/3/26 16:10)
レノボ・ジャパン株式会社は、4月1日付けでNECパーソナルコンピュータ株式会社、レノボ・ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任する留目真伸氏、Lenovo アジアパシフィック地域担当プレジデントに就任するロードリック・ラピン氏が記者会見を開催。4月からスタートする新年度に、x86サーバーの米沢事業場での生産、スマートフォンの日本への投入を行うことを発表した。
顧客に近いところでの生産を実現する
サーバーの米沢生産を行う要因として、ラピン氏は「顧客に近いところの生産が行えることで、5営業日で商品が手元に届く体制を実現できる」と日本のユーザーに大きなプラスになるとした。スマートフォンについては「詳細は後日あらためて説明する」とし、詳細は発表しなかったものの、「法規制の変更によって、日本市場は大きなチャンスを持った市場だと考える」と説明した。
留目氏は新社長に就任する抱負として、「2020年までに、コンシューマ、法人とも日本のIT活用力を世界最高レベルに引き上げたい」と話した。「PC、スマートフォンが普及したといっても、PCの使われ方はPCができた時から大きく進化していない。スマートフォンもコンピュータが持ち歩きできるようになっただけで、コンピューティングパワーが生かし切れていない。法人向けシステム提案は、技術進化、新しいバズワード登場で多種多様になっているが、日本企業の本当の意味での生産性向上にはつながっていない。トップPCベンダーとして、2020年までにトップクラスのIT活用力を日本のお客さまに届けたい」と、コンピュータベンダーとして日本企業のワークスタイル変革実現を目標とした。
4月1日からの新体制では、ラピン氏は東京に常駐しながら、Lenovo アジアパシフィック地域担当として活動。留目氏はNECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役執行役員社長、レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長の両役職を兼務する。
留目氏は自身が社長となる新年度から、新たにIBMから買収したx86サーバーの米沢事業場での生産、スマートフォン参入元年と新しい取り組みを始める要因として、「すでにThinkPadについては米沢事業場での生産がスタートしているが、同様に日本での物作りを、研究開発だけでなく生産にまで広げていく。また2015年度をスマートフォン参入元年として、トータルなコンピューティングデバイスを提供するベンダーとなっていく」と説明。
「ハードだけでなくサービスまで含めた、日本のお客さまに最適なソリューションを提供する。企業のお客さまに新しいワークスタイルを提供したいというのは、使い古されたことばではあるが、本当にそれを実現する製品をお届けすることはできていなかった。これはIT業界としての課題であり、PCのトップベンダーが取り組むべき課題であると考える」と述べ、従来のデバイス提供に止まらない姿勢と製品が必要だという意図を説明した。
ラピン氏は、「米沢事業場は王冠のように輝く、戦略上欠かせない重要な拠点。IBMからx86サーバーを買収した当初から、米沢での生産可能性についてオープンにディスカッションしてきたが、実施に踏み切った要因の一番は顧客から近いということ。CTO生産で、最短5営業日で製品をお届けすることができる。スピード重視という点で最適だった。次にアベノミクスの影響で円安となり、日本での生産を行いやすくなる流れができた。そこで生産を日本に戻すというチョイスをしたわけだが、レノボグループはグローバル体制で、どこで生産を行うのか選択肢はいくつもある。その中で日本での生産を行うことを決定したのは信頼できる生産拠点があるからだ」と米沢事業場に強い信頼を寄せいていることを強調した。
生産体制の詳細については、グローバルサプライチェーンを担当している役員から、あらためて説明を行う機会を設けると話した。
2015年度中盤から後半にスマホ市場へ参入
スマートフォンについては、キャリア経由での販売になるのか、SIMフリー端末として発売するのか、OSとしてはどのOSを搭載したものを発表するのかなどについては、「今日の時点では具体的なことはお話しできない」とした。
が、「法規制が変更になったことで、日本市場は魅力的なものとなった」(ラピン氏)という発言から、SIMフリー端末を発売できるようになったことが参入の要因となっていることを伺わせた。参入時期としては、「2015年度中盤から後半」とだけ説明した。
今後もNECブランドでのPC提供を継続
NECパーソナルコンピュータとの合弁体制としては、「7年前にレノボ・ジャパンの社長に就任するということで来日。したが、その7年、Lenovoには大きな変化があった。7年の間にコンシューマ事業を立ち上げ、NECパーソナルコンピュータとジョイントビジネスを立ち上げた。立ち上げ当初の第1四半期から比較し、10倍の売り上げとなり、大きな成功を収めた。今回、日本人のトップ就任を報告できることを大変うれしく思う。合弁企業を設立する当初は、NECブランドの利用は5年をめどに、とお話ししていたが、NECは日本のコンシューマ市場を最も熟知しており、レノボとの関係はより良好なものとなっている。すでにお話ししているように、NECブランドの利用に関しては期限を設けず、無期限でとなっている。NECブランドをなくしてブランド一本化することは考えていない」(ラピン氏)と、今後もNECブランドでのPCを提供していくとした。
留目氏は一時、本社でNECとのジョイントベンチャー事業に関するオペレーションを手がけ、その時の経験がLenovoグループのM&Aを実現する際のひな形として活用されているという。
「Lenovoもグローバルで複雑でマトリックス型の組織体制となっている。各ファンクションの役員と、全体戦略との整合を進めながら、どこまで統合し、どの部分は統合するべきではないのか、1つずつ各ファンクションの役員と合意していかなければならなかったが、それがうまくいった。多い時には300人、400人が参加するような電話会議もあった」(留目氏)。
ラピン氏から留目氏への社長指名が行われたのは今年の2月末。「ギリギリのタイミングだった。以前から、自身でオペレーションを担当したいと言っていた」ということから、社長就任を即決したという。
留目氏自身はレノボ以前にはデルでも仕事をした時期があるなど、外資系企業で働いた経験も長く、グローバル企業に勤務するプロフェッショナルが「ビジネス界のメジャーリーガーを目指す」という方針のコミュニティ・プロジェクト、「GAISHIKEI LEADERS」を主催している。「外資系企業に勤務すると、日本企業に戻りにくいという風潮もあるが、これからはそうではなく、日本企業、グローバル企業の良いところをお互いに学び合っていく時代ではないか」と、日本企業がさらに強くなっていくことに強い意欲を見せた。