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EMCジャパン新社長の大塚俊彦氏が会見、「新たな定義に向けて変革のかじを切る」
(2014/12/10 12:57)
12月8日付でEMCジャパン株式会社の代表取締役社長に就任した大塚俊彦氏が、12月10日、同社本社で就任会見を行い、今後の経営方針などについて語った。
大塚新社長は、「この時期に社長に就任することは大変エキサイティングである」と切り出し、「第3のプラットフォームを強力にリードする企業を目指す」とコメント。さらに、「EMCジャパンは新たな定義に向けて、トランスフォームのかじを切っていく」と宣言した。
変化し続けることが一番大事
会見で大塚社長は、「私は、これまでに数々の企業の経験を通じて、全産業領域にも携わってきた。また、時代のニーズに応じたトランスフォーメーションにも取り組んできた。中でも、オラクルに在籍した際には、Sun Microsystemsの買収に携わり、異なる企業文化を統合していくことが大変なことであるということを、身を持って学んだ。そして、30年間にわたり、IT業界に在籍して感じたのは、変化し続けることが一番大事であるという点。そうしなれば差別化できる価値を、提供し続けることができない。EMCジャパンが新たなステージに向けて進めるように、社長として取り組んでいきたい」と抱負を述べた。
さらに、「EMCジャパンは、紛れもなく変化し続ける企業である。ナンバーワンのシェアを持つ領域も多い。そして、イノベーションにおいてたゆまぬ努力を続けており、全世界の売上高の12%を研究開発に投資し、10%を企業買収に投資している。これがEMCに感じた第一印象。2つ目には顧客第一の企業文化を持つこと。顧客価値を高めるために、企業の力を発揮し、本社と地域法人、各部門同士が、フラットで、オープンな組織風土の上で協力できる環境がある。3つ目には社員の能力を、いかに引き出すかということに取り組んでいる企業だということ。Best Place to Workの企業として世界で18位に入っている点からもそれが証明される。就任3日目だが、EMCジャパンの社員はハードワーク。顧客に向かって仕事をしているということを強く感じた」とした。
また大塚社長は、「日本も大きな転換期にある。顧客も生産性を高めることや、グローバル展開を模索しており、そこで使われるITの役割も大きく変わっていくべきである。私は第1のプラットフォームで社会人人生をはじめたが、いま迎えている第3のプラットフォームは、新たな事業を創出し、競争力を左右するものであり、やり方次第で大きな可能性を持っている」と指摘。
「EMCジャパンも最も信頼され、貢献される企業であると同時に、第3のプラットフォームを強力にリードする企業を目指す。まずは信頼され、最初に相談される企業になり、俊敏なIT環境の構築をお手伝いしたい。一方で、第2のプラットフォームにも、プラットフォームベンダーの1社としてきちんと対応し、信頼性の高い基盤を提供。効率性を高め、コスト削減に貢献していきたい。その結果、顧客が新たな価値を創造する投資にシフトできるように支援していく」と述べた。
新たなEMCジャパンに向けて5つの観点から説明
新たなEMCジャパンに向けては、「顧客とのリレーションシップ」「パートナーとの協業」「Best Place to Work」「グローバリゼーション」「EMCブランドの価値向上」という観点から説明した。
「顧客とのリレーションシップ」では、「顧客との信頼関係を新たに定義したい。EMCジャパンのビジネス領域が広がるなかで、企画、構築、運用段階までを含めた、顧客のライフサイクル全体のなかで関係を構築し、信頼性される企業を目指す。また、顧客にとってのビジネスインパクトをわかりやすく提供できる企業を目指したい」とした。
2つ目の「パートナーとの協業」では、「パートナーとの協業についても新たに定義し、パートナーとの共存関係を一層強化したい。これが、顧客の成功に貢献することにもつながる。一方で、EMCジャパンがリーチできていない市場がまだ多いとも感じている。パートナーとともに、新たな市場をカバーしていきたい」との意気込みを示す。
また「Best Place to Work」では、「EMCジャパンの社員の力を100%、120%、150%発揮することができる、ダイナミックな企業文化を目指したい。そして、社員が前向きにチャレンジし、成長を実感できる組織にしたい。これが、顧客、パートナーへの価値を生み出す原動力になる。事業範囲が拡大するなかで、One EMCとして展開していくことも必要である」と語った。
さらに「グローバリゼーション」では、「EMC自らがグローバルカンパニーであり、全世界のアセットや人材といった総力を結集していくほか、グローバルに貢献できる人材をEMCジャパンから排出していきたい。顧客のグローバル化にあわせて、各国のEMCとの連携も重要である」と発言。「EMCブランドの価値向上」では、「市場におけるブランド価値を高めていきたい。顧客から最も信頼させるプレーヤーを目指す」と語った。
事業戦略をもっとわかりやすく伝えたい
その一方で、課題については、「顧客、パートナーの声を聞くことが大切である。いまのEMCに対する期待値を聞きながら、EMCの今後の方向性を提示し、次のステージに取り組みたい」と前置きし、「事業戦略をもっとわかりやすく伝えたい。ハイブリッドクラウド、ビッグデータが、EMCジャパンの強みであること、さらにはコンバージドインフラストラクチャの強みはなにかということもわかりやすく発信したい。EMCグループを持つ価値が、顧客やパートナーにわかりやすく伝わっているのかということを自問自答し、もう少しわかりやすくソリューション、ポジショニングを伝えていくことが課題だといえる。また、さまざまな製品があるなかで、顧客ごと、パートナーごとに最適なポートフォリオと価値を提供できるOne EMCを目指したい。ひとつのチームとして取り組んでいくことが課題だといえる」とした。
なお、大塚社長は、「EMCジャパンは、2015年1月から次の新年度が始まる。事業戦略、成長戦略、製品戦略は年明けに発表する予定である。新定義によって、エキサイティングな次のステージへの変革に取り組む」とした。
新社長に就任した大塚氏は、1962年12月24日生まれ、東京都出身の51歳。1985年3月に早稲田大学理工学部卒後、1985年4月に日本アイ・ビー・エムに入社。98年2月には米IBMに出向。2003年1月にIBM Asia Pacific社長補佐、2004年1月に理事 公共システム事業部長に就任。2005年4月に執行役員に就任し、公共事業を担当した。
その後は2006年10月にシスコシステムズに入社し、執行役員 エンタープライズ営業担当に就任。2008年5月に専務執行役員 経営企画・オペレーションズ担当。2010年4月には日本オラクルに入社してサン・マイクロシステムズに出向し、同社社長執行役員に就任。2010年6月からは日本オラクル 専務執行役員 システム事業統括兼事業推進統括として活躍したほか、2011年6月 副社長執行役員に就任し、ソフトウェアライセンス事業統括ののち、アライアンス事業統括を担当した。
そして今回、2014年10月に日本オラクルを退社し、2014年12月にEMCジャパンの代表取締役社長に就任している。
前社長の山野修は、エグゼクティブアドバイザーに就任し、新経営体制を支える。
変革をリードしてくれることを期待
一方、就任会見に同席した米EMC シニア・バイスプレジデント兼アジア太平洋/日本地域プレジデントのデビッド・ウェブスター氏は、「今後、EMCジャパンのビジネスをREDEFINE(再定義)していきたい。半年前から各国のビジネスの現状と成長性を分析し、今後5年、10年のEMCジャパンのビジネスを考えた。そのためにはEMCジャパンが、日本の企業のグローバル化をとらえた形で変化し、これまでとは違った形で日本の企業とおつきあいをとしていかなくては成長がないと判断した。そこで、山野氏と話をして、ビジネスを変化し、新定義していく上では、経営トップから変化することで合意した」と、社長交代の経緯を説明。
さらに、「新たな経営トップには、これまでの成長とは違ったスキルが必要であると考えた。人選に当たっては、ハード、ソフト、サービスといったさまざまな領域の経験者や、変化を重視している企業に身を置いてきた人、あるいは自らも変化している人など、EMCジャパンにとって、完璧なリーダーを模索していた。そのなかで、『この人と話をした方がいい』と何人かから言われたのが大塚氏であった。話をした結果、EMCジャパンの新たな定義や方向性についても興味を持ってもらい、今日に至った。これまでとは一段違ったところを目指していくことになる。変革をリードしてくれることを期待している」と、大塚氏を選んだ理由を述べた。
またウェブスター氏は、「山野氏には、感謝の気持ちでいっぱいである。今後も、EMCジャパンはグローバルにおいて、重要な組織であることに変わりはない。米国、中国、日本は三大市場であり、EMCジャパンは、日本の再生にも貢献していくことになる」と語った。
続けてウェブスター氏は、ジャック・ウェルチ氏の「もし外部環境の変化の速度が、企業内部の変化の速度を上回ったら、その企業には終わりが見えてきたことである」との言葉を引用。「世の中では、クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデータの4つのメガトレンドが起こっており、ITカンパニーだけでなく、大きく企業に影響を与えている。いまや、組織が速いスピードで変化しなくては生き残れない。第2のプラットフォームの時代に生まれ、育ってきた企業は、いずれも変化の速度が遅い。Dell、HPといったIT企業は、市場の変化に対応するために自らを変化させようとしているが、それを実行に移すのに時間がかかっている」という点を指摘する。
そして、「EMCも同じ時代に生きてきた会社であるが、他社とは異なり、市場変化よりも速いスピードで変革に取り組んでいる。EMCは、最新四半期において、業績を回復させている。製品部門は、従来からのストレージ部門と新たな技術部門とに分け、組織構造の改革では、新たにクラウドのビジネスユニットの立ち上げ、Cloudscaling、Maginatics、Spanningといったクラウド関連の重要な技術を買収し、グローバルでの営業組織の改革も実施してきた」などと語った。