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千葉市、地域課題を市民とともに解決する「ちばレポ」開始

街の不具合を報告するスマホアプリ公開

千葉市長の熊谷俊人氏

 千葉市は28日、市民協働で地域課題を解決する取り組み「ちば市民協働レポート(ちばレポ)」を正式に開始した。

 「ちばレポ」は、スマホアプリを活用し、地域の課題について市民から位置情報と写真・動画などをレポートしてもらい、Web上で公開。地域の課題を可視化して、ともに課題を解決するという取り組み。

 2013年7月~12月に実証実験を実施。一定の効果が上がったことから、2014年度から5年間の運用経費として6600万円を補正予算として計上し、正式にスマホアプリと管理システムを構築。28日よりスマホアプリを公開するとともに、市民レポーターの募集を開始した。

地域の課題に市民協働で取り組む

 目的は「市民の力を発揮できるまち」を実現すること。「ちばレポ」を地域の課題に問題意識を持ってもらい、行政と市民をつなぐための新たなツールとする。

 取り組みの具体的な内容は、市民にAndroid/iOSのスマホアプリを提供し、「道路が破損している」「草が生い茂っている」「ゴミが溜まっている」などの不具合を見つけた市民から、その写真・動画とGPSによる位置情報などをレポートしてもらう。

「ちばレポ」アプリ
写真や動画で不具合状況をレポート。Webからも可能
近景・遠景など写真は3枚まで添付可能
GPSによる位置情報も付加され、ほかの人のレポートの位置も確認可能。対応状況に応じてピンの色が異なり、黄色が「受付完了」、青が「対応中」、緑が「対応済み」を示す
すべてのレポートを一覧表示できる
各レポートごとに市がコメント。対応状況などが表示される

 レポートされた情報は「Salesforce1」で構築されたシステムに一元管理され、各課題に対する市役所の対応状況(受付完了・対応中・対応済み)とともに公開される。

管理画面

 課題と対応状況を公開することで、行政の取り組みを透明化すると同時に、市民に街づくりの意識を持ってもらうことで「協働」につなげようというわけだ。

 各課題は市役所によって「市民の力で解決できるもの」と「市役所でなければ解決しないもの」に切り分けられる。「草刈り」「落書き消去」「清掃」「パトロール」といった市民の力を発揮できる課題は市民に手伝ってもらい、「道路の舗装」「ガードレールの破損修理」といった市役所でなければ処理できない課題は行政側で解決する――そんな役割分担の流れを作っていく。

 例えば、市職員が人海戦術で調査するしかなかった街路灯の電球切れを市民からレポートしてもらえれば、それだけでも市の負担は大きく削減される。対象となる課題は「道路」「公園」「ごみ」「その他(放置自転車など)」の4分野となる。

 これまでも電話やFAXで報告を受け付けてきたが、それらはExcelで情報管理しており、効率が良いとは言えなかった。新システムには電話・FAXの声も集約する予定で、作業の効率化による行政改革も図るという。

 「実際、電話・FAXからは土木関連だけでも年間1万3000件あり、業務所管課からはICT化の要望があった。また、データが集まれば地域の傾向を分析することも可能になる。そうした事務改善も『ちばレポ』で実現できると考えた」と千葉市長の熊谷俊人氏は語る。

今後のスケジュール

 今後のスケジュールとしては、まず8月28日より「ちばレポ」専用サイトで市民レポーターを募集。参加資格は、千葉市在住・在勤・在学中であること。実証実験では、30~50代を中心に、市民765名と市職員391名(計1156名)が集まったとのことで、今後は3年で5000人の参加を目指す。

 レポートの受け付けは9月16日より開始。市民協働で課題を解決する仕組みは2015年3月より運用する。同年4月には「千葉市のおすすめスポット」のレポートも受付を開始し、観光を活性化するためのツールとしても活用。その後もさまざまな便利アプリを同システム上で公開し、市民が一貫して利用できる基盤としていきたい考えだ。

 併せて、全国の自治体へも展開。現在他自治体へ積極的に「ちばレポ」を紹介しており、福岡市や神戸市などから「いいね!」の声をもらっているという。

「市民の意識変化に期待」

 熊谷市長はこの取り組みについて、「市民の街をよくしたいというエネルギーを無駄にせず、その気持ちと課題をマッチングする仕組みを作りたい。何よりも地域の課題に対する市民の意識の変化に期待している」と話す。

 実証実験後のアンケートでも、約60%が「ちばレポを介しての市民協働への参加に肯定的」であり、約70%が「ちばレポに参加することで街を見る意識が変化した」と回答。実際に市民の意識変革に効果が見られたという。

 ただ、レポートをうまく機能させるためには、普段から市民にアプリを使ってもらえるようにする必要がある。そのために「市長ミッション」のようなゲーミフィケーションの要素を取り入れるなど、市民が楽しんで参加できる仕掛けも検討する。

 「朝起きたらまずアプリを見る。そんな習慣ができれば、街と市民の一体感も生まれるはず。市の取り組みとして、世界のモデルケースになるよう取り組んでいきたい」。熊谷市長はそう意気込みを見せている。

川島 弘之