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ベトナムフエ省で住民参加型防災の有効性調査、住民がスマホで「洪水」報告

 富士通株式会社とFujitsu Vietnam Limited(以下、富士通ベトナム)は10日、ベトナム・フエ省で住民参加型防災システムの有効性調査に着手したと発表した

 住民が街の不具合を行政にレポートする千葉県千葉市の「ちばレポ(参考記事)」と同じような取り組みが海を越えて実施される。

 具体的には、独立行政法人国際協力機構ベトナム事務所の支援を受け、フエ省で住民が目視測定しスマホアプリで通報した、省内主要拠点の河川水位と雨量、周辺地域の状況画像、コメントなどをGPS情報や通報時刻とともに富士通のデータセンター内に集約し、フエ省農業農村開発局の防災・減災活動に活用する。

 フエ省に選定された防災員6名が各区域の河川水位計測地点で水位と雨量を目視測定し、スマホアプリの現場報告画面から測定値・現場写真・コメントを報告。富士通データセンターに集約されるデータをリアルタイムに地図へマッピングし、水位変化が分かるグラフ化が行われたあと、同局に提供される。

 同局の防災担当者はWebブラウザからこれらの情報を監視し、河川水位・雨量の変化を把握することで、避難指示に活用。将来的に、水位・雨量の測定値が蓄積されれば、過去のデータを分析し、洪水の予兆分析にも利用できる見込みという。

 住民と同局のコミュニケーション促進も狙いの1つで、スマホアプリにコミュニケーションが可能な機能を搭載。特に被災時の効果的なコミュニケーションを実現するため、防災員用の状況確認機能や、農業農村開発局用の通知機能などが実装される。

 防災員はスマホアプリを通じて現場の状況を容易に同局へ計測値を通報できるほか、同局担当者と電話で直接話すこともできる。同局からはスマホアプリの通知画面から宛先とコメントを入力するだけで、防災員への避難誘導が可能。周辺住民の避難誘導にも容易につなげられるという。

 富士通と富士通ベトナムは農業農村開発局とともに2015年12月まで同調査を行い、従来型センサーや屋外カメラを利用した場合の測定結果と比較し、住民参加型の有効性を検証する。また、ベトナムの過去2年間のTwitter情報をデータマイニングすることで、当時のつぶやきの内容と災害が発生した場所・日時との関連性分析も並行する。

 実施期間は2015年1月~12月。実施地域はフエ省ボー川上流タールォン橋付近、およびフォン川上流アロン村など。フエ省住民の防災・減災に対する意識向上もめざす。

 なお、富士通は、スマホ、スマホアプリ(相互通報)、データ蓄積・集計・災害発生予測分析を行う情報集約基盤およびネットワーク環境、農業農村開発局イントラサイト用災害情報Webサイト、Twitter情報の蓄積・分析環境を提供する。

川島 弘之