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富士通、SAPシステムの運用最適化を支援するサービス群を体系化

富士通 産業・流通システム事業本部 ERPビジネスセンター長の前村和史氏

 富士通株式会社は7月3日、SAP製品を利用中の顧客に向けて、システム運用の最適化とコスト削減などを実現するサービス群を「FUJITSU ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューション」として体系化するとともに、それに基づく新サービス2種と強化サービス3種を本日より順次提供すると発表した。

 今回の発表にあたり、富士通 産業・流通システム事業本部 ERPビジネスセンター長の前村和史氏が、富士通のSAPビジネスの概況について説明した。「当社は、1996年からSAPビジネスに参入し、テクノロジー、サービス、ホスティングの3領域にわたるSAPグローバル・パートナー認定を取得している唯一の日本企業となっている。そして、SAPと共同で、高品質なSAP関連ソリューションを全世界に提供している。2013年10月には、SAP-Certified Provider of HANA Enterprise Cloudの認定を取得するなど、SAPの新しい動きにもいち早く対応している」と、SAPとの戦略的協業をベースにビジネスを展開しているとした。

 「SAPビジネスの体制としては、各専門分野のSAPコンサルタントをグローバルで2800人以上配備しており、データセンターも世界で100拠点を超えている。これまでに、グローバルで8000件以上のSAPシステムの構築・運用保守を行ってきた実績がある」という。

 今回、こうしたSAPビジネスのノウハウを生かし、顧客のSAPシステムの現状を評価・整理することで、最適化やコスト削減を支援するサービス群を「FUJITSU ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューション」として体系化した。

 前村氏は、「ビジネスを取り巻く環境が大きく変化している中で、ICTの役割も従来の業務支援から経営を支える存在へと変わっていくことが求められている。しかし、現在の情報システムは維持運営のコストが78%を占めているのが実状。このコストをモダナイゼーションによって低減し、変革・成長へとまわすことで競争力強化を加速させていく必要がある」と、業務効率化から競争力強化へ、ICTの重要性が拡大していることを指摘。「特にSAPシステムを利用している企業は『業務の変化に迅速に対応できない』『拠点ごとに様々なシステムが乱立している』『運用コストがかさんでいる』といった課題を抱えている。これらの課題を解決し、効率的かつ効果的なSAPシステムの運用を支援するために、今回のモダナイゼーションソリューションを新たに体系化した」と、その狙いを説明している。

「FUJITSU ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューション」の体系

 体系化された新ソリューションでは、システムのスリム化のためのサービスの移行や運用方式の設計、稼働後のサポートまでを同社が一貫して行う。利用中のSAPシステムの状態を見える化・診断しスリム化や最適化を図ることで、コスト削減やビジネス環境の変化に強い柔軟なシステムを実現する。体系化にあたっては、新規サービスとして「SAPトータル診断サービス」と「SAP HANAマイグレーションサービス」をリリースするとともに、「SAPクラウドサービス」「SAPグローバルテンプレート」「フロント統合ソリューション」を強化した。

 新サービスの「SAPトータル診断サービス」は、顧客企業のビジネス状況・事業とグローバルマーケットの変化を加味し、SAPシステムにおける業務プロセス、運用保守プロセス、インフラシステム性能を見える化し分析する。「SAPアプリ業務分析サービス」「システム性能分析サービス」「運用保守プロセス分析サービス」の3つから構成され、この分析結果に応じて、最適化するためのサービスを組み合わせることで、TCO削減、コア業務への投資注力、業務・システム運用の改善などを実現する。

「SAPトータル診断サービス」の概要

 具体的に「SAPアプリ業務分析サービス」では、実際のデータから業務の痕跡をたどり、業務プロセスを見える化し、ボトルネックや滞留プロセスを特定する。「システム性能分析サービス」では、性能データを収集し、同社ツール「System Inspector」を活用して性能処理能力を分析・評価する。「運用保守プロセス分析サービス」では、運用保守を構成する管理プロセス(ITIL)、品質、リソースなどを網羅的に分析し、顧客の運用保守プロセスの課題と改善策の提示を行う。

 もう一方の新サービス「SAP HANAマイグレーションサービス」は、SAPの主力製品であるSAP ERPシステムの既存データベースを短時間・低価格で「SAP Business Suite powered by SAP HANA」に移行するサービスを提供する。業務アプリケーションをメモリ上で実行することにより、オンライン・バッチ処理を大幅に高速化でき、経営判断にすぐに役立てることが可能となる。

 強化サービスの「SAPクラウドサービス」では、従来からSAPシステム向けクラウドサービスに対応してきた「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted LCP」に加え、今回Windowsベースのクラウドサービス「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted A5+専用サービス for Windows Server」(プライベートクラウド)と「FUJITSU Cloud A5 for Microsoft Azure」(パブリッククラウド)にも対応させる。顧客のオンプレミスシステムと連携させたハイブリットクラウドとしても利用できるという。

 「SAPグローバルテンプレート」では、顧客がビジネスを展開している国や、業種・業務要件に合わせて提供していた海外展開向け「SAP ERPテンプレート」を、SAP Business Suite powered by SAP HANA対応版として、日系企業の進出が加速しているアジア諸国向けを中心に強化する。アジア11カ国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、中国、韓国、米国、日本)の標準化された基幹業務プロセスと各国の法制度対応機能が事前設定されているため、システム構築期間を短縮することが可能となる。

 「フロント統合ソリューション」では、業務アプリケーションの構築に必要なユーザーインターフェイス、ビジネスプロセス管理、サービス連携などの機能をオールインワンで提供する。従来、プログラム開発していた画面やWeb Serviceなどを自動生成することができるため、効率的なシステム構築が可能となる。また、企業内システムやクラウドサービスと連携させることで、組織を横断した業務プロセスの実行や経営・業務で必要な情報の見える化、新規業務の迅速な構築を実現する。

 税別価格は、「SAPトータル診断サービス」が150万円から、「SAP HANAマイグレーションサービス」(1システム環境につきマイグレーション1回)が480万円から、「SAPクラウドサービス」が各種サービス個別見積、「SAPグローバルテンプレート」が個別見積/1か国、「フロント統合ソリューション」(2014年10月提供開始)が個別見積/画面・機能数となる。

唐沢 正和