ニュース

NEC、クラウドサービス基盤を迅速に構築する3製品――海外重視、鮮明に

西村知泰氏

 NECは20日、統合型システム「NEC Solution Platform」の新製品として、データセンター内設置に特化し、クラウドサービスやビッグデータ分析などのサービス基盤として最適化した3製品を発売した。7月末より順次出荷する。

 ホスティングやIaaS/PaaS/SaaSといったクラウドサービスや、ビッグデータ分析など新市場が急速に伸長している。NECは「クラウドサービス事業者や企業・官公庁のデータセンター管理者にとって、クラウドサービスの利用拡大に伴うIT機器の導入コスト増加と、これらを運用管理するための冷却・電力設備・設置スペースなど、データセンター全体の運用コストを低減することが大きな課題」とし、新製品は「NEC神奈川データセンターでの運用ノウハウを取り込み、省電力・高集積サーバーや最先端冷却技術、先進OSSを活用することで、これらの課題に応えるクラウドサービス基盤に最適な製品」として訴求。

 具体的には、ホスティングサービス基盤「Cloud Platform for Dedicated Hosting」、IaaS基盤「Cloud Platform for IaaS」、ビッグデータ分析サービス基盤「Data Platform for Hadoop」の3製品を投入する。

新製品のラインアップ

 事前設計・構築・検証済みの製品と説明書、運用ガイドラインなどのドキュメントをまとめて提供することで、短期間での導入や増設・拡張が容易なクラウドサービス基盤構築向けのセット製品となっている。導入期間の短縮効果として、従来の設計・構築・試験にかかる3~6カ月間を1~2カ月間に、最大1/6に縮められるという。

 新製品の基盤には、1ラックあたり700台のサーバーが収容でき、設置スペース・消費電力ともに従来比75%削減した省電力・高集積サーバーを採用。ファシリティコストを約3割削減できるとしている。

省電力・高集積サーバー「Micro Modular Server」を採用
ファシリティコストを約3割削減

 また、NEC中央研究所が開発した、電力を使わずに熱の移送を可能とする「相変化冷却技術」をラックの背面に搭載することで、空調電力を従来比30%削減した。同技術は、冷媒を気化させることで熱を奪い、さらに気化させた空気が上昇する原理を利用することで、排熱や冷媒の循環動力を省いたのが特徴。「ICT機器からの発熱の半分を電力を使わずに、また空調機の追加や増強をすることなく既存の空調設備で冷却可能」(ITプラットフォーム事業部 事業部長の西村知泰氏)と説明している。

 さらに標準化が進むOSSベースのソフト基盤を採用し、分散処理に最適なハードウェアと組み合わせることで、「最新機能を取り込んだクラウドサービス基盤を低コストかつ早期に導入できるようにしている」(同氏)。

 OSSとしては、「Cloud Platform for IaaS」にOpenStackを、「Data Platform for Hadoop」にHadoopを採用。ストレージサービス基盤にはCephを採用し、プラットフォームの運用を容易にするダッシュボード機能を独自に盛り込んだ。SDNとの連携も予定している。

 これらOSSとハードウェアの組み合わせ、特に分散処理のHadoopとスケールアウト型ハードウェアの組み合わせで検証して、高性能を発揮するソリューションとして提供することで、クラウドサービス基盤の早期導入を実現するのが新製品の狙いだ。

「相変化冷却技術」を採用
先進OSSを活用

 販売ターゲットは、クラウド先進ユーザーが多い北米から立ち上げ、新規データセンターの開設が進むアジア太平洋(APAC)地域のデータセンター事業者へ展開。そのほかの地域へは順次としている。販売支援体制も、北米・APACからグローバル拡販組織を新設し、欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域はパートナー連携で強化する方針。

 日本もターゲットに入ってはいるが、海外重視の姿勢を鮮明にした形だ。この理由を執行役員の福田公彦氏は「先進ユーザーの多い北米、データセンターの新設が進むAPACで大きな需要が見込めるため。もちろん日本にも提供するが、すでにインフラの整う日本市場でサーバー700台の製品を導入するケースは少ないのでは。ただ、ビッグデータ分析サービスなどのように新領域のビジネスを展開する企業では、新たな需要が生まれる可能性がある」と話した。売上目標は2016年度に100億円。グローバルと日本の比率は7:3ほどを想定する。

 価格はベース製品となる「Cloud Platform for Dedicated Hosting」が5000万円(税別)から。OpenStackやHadoopを追加した「Cloud Platform for IaaS」「Data Platform for Hadoop」の価格は未定。出荷時期は「Cloud Platform for Dedicated Hosting」が7月末から、残り2製品が12月から。

新製品の筐体
背面に突き出ているのが相変化冷却ユニット
サーバーに格納される各モジュール
Micro Modular Server

川島 弘之