ニュース

SAP、HANA基盤のクラウドデータセンターを東京・大阪に開設

代表取締役社長の安斎富太郎氏

 SAPジャパン株式会社は、独SAPのアジア太平洋・日本(APJ)地域で初となるデータセンターを東京・大阪の2都市に開設し、4月1日より稼動を開始した。

 ドイツ、オランダ、米国に次ぐ世界で4カ国目のデータセンターとして、「SAP HANA Enterprise Cloud」(クラウド版HANA)を提供する。クラウド版HANA上で、HANAに対応した基幹業務システム「SAP Business Suite」や「SAP NetWeaver Business Warehouse」、そのほかHANAで強化される新しいアプリケーションを、ペタバイト級のマネージドクラウドとして提供する。

 東京・大阪の国内2カ所にデータセンターを開設したことで、国外のデータセンターと連携することなく、1つのエリア内でのディザスタリカバリ(DR)を実現。両拠点間は10Gのネットワークで接続しており、拠点をまたがるトランザクションのレイテンシや、回線コストの上昇などを解消するという。

 SLAとしては、インフラ、OS、DB、HANA DB、アプリケーションのトータルの可用性は99.7%。24時間365日のグローバルサポートに対応し、マネージドサービスとしてHANA DB管理(バックアップ/リストア、アップグレード、モニタリングなど)や、インフラモニタリング、OS管理(パッチ適用など)を一括してSAPジャパンが行ってくれる。

 代表取締役社長の安斎富太郎氏は、HANAクラウドデータセンター開設の意義として「(クラウド版HANAは)大規模機関系システムをインメモリ&クラウドで提供できる唯一のソリューション。それを日本でも提供することで、お客さまは迅速に・低コストで・シンプルに活用できるようになる」と話す。

SAP HANAクラウドデータセンター開設の意義
日本データセンターのサービスレベル

日本をAPJ地域を統括するハブ的役割に

 また、日本市場にとっての意義も説明。東京・大阪データセンターは、SAPにとってAPJ地域に展開する初のデータセンターとなる。「APJ地域は今後のビジネスにおいて重要な地域、中でも日本は特に重要な地域と位置付けている」とのことで、このデータセンターがAPJ地域をコントロールするハブ的役割になるという。「日本市場への期待がアジア初のデータセンター開設を実現した。今後の継続した日本投資を確約する最初のステップとなる」と、日本市場へのコミットメントの表れとも取れる。

 実際、日本はグローバルでもHANAの第一号ユーザーが出た市場だ。その後も業種を問わず、導入が進んでおり、導入実績は3ケタの100社を突破。「今回のクラウド版HANAについてもすでに数社の導入が決まっている」という。

パートナーエコシステムを重視

 SAPが自身でデータセンターを開設するといっても、「パートナー重視の姿勢は変わらない」(安斎社長)。今回の件がパートナーにもたらす意義について安斎社長は「SAPによるデリバリーモデルの具体化」「SAPが実践するベストプラクティスのパートナーによる活用」が促進されるとコメント。

 HANAのアプライアンス提供、クラウドサービス基盤への採用、検証などのCo-Working、AWS上でのクラウド提供や開発者への無償提供など、すでに国内では多くのパートナー協業実績がある。

 それだけさまざまな形で導入・活用できるのがHANAの売りとなっており、今回の「SAP HANA Enterprise Cloud」の提供もその新たな選択肢の1つとなるが、パートナー戦略の方針としては「オープンエコシステムを今後も推進。データセンターの構築・運用における技術ノウハウ、SAP HANA Enterprise Cloudの導入ノウハウや既存のオンプレミス環境からの移行プロセスなどをパートナーに公開し、パートナー企業が独自のデータセンターからSAP HANA Enterprise Cloudサービスを提供できるよう支援する」(安斎社長)としている。

川島 弘之