特集

ジョンソンコントロールズ、2026年度はデータセンター市場への注力を強化

松下新社長のもとで脱炭素化やAIエコノミーへの貢献を加速

 ジョンソンコントロールズ株式会社は、2026年度(2025年10月~2026年9月)の事業戦略を明らかにした。同社の松下太郎社長は、「2026年度は、データセンター市場が重要なフォーカス領域となり、市場全体の成長を上回る事業成長を目指す。また、半導体産業向けのミッションクリティカルな環境にもアプローチする」などと述べた。

 2026年度は、データセンター向けの中央監視や自動制御に加えて、HVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning)への取り組みにも力を注ぐ計画だ。データセンター向けのYORK YZターボ冷凍機は、前年比3倍の受注を見込むという。また、「チラーは特定のデータセンター事業者からの引き合いだけだったが、2026年度からは、より多くのデータセンター事業者を対象にビジネスを推進する」ことも明らかにしている。

 日本におけるデータセンター事業は、ほかのセグメントに比べて高い成長を達成しており、今後も高い成長率を維持する考えだ。

ジョンソンコントロールズ 代表取締役社長の松下太郎氏

 松下社長は、2025年2月にジョンソンコントロールズに入社し、同年4月から代表取締役社長に就任。2026年度は年間を通じたかじ取りを初めて行うことになる。

 それ以前は、ベーカーヒューズの日本統括代表と、その日本法人である日本ベーカーヒューズ、ベーカーヒューズ・エナジージャパン、日本ドレッサーの代表取締役を兼務していた。また、ゼネラル・エレクトリック(GE)やアクセンチュアなどでシニアリーダー職の経験も持つ。学歴としては、慶應義塾大学法学部を卒業し、米国パデュー大学でMBAを取得している。

 松下社長は、「ジョンソンコントロールズは高い技術力を持ち、将来に対する社員の熱意とパッションがある。高い可能性を感じており、いい状態で会社を引き継ぐことができた」としたほか、「私は、GEでの勤務が最も長く、電力関係のビジネスに携わっていた。その経験を生かし、ジョンソンコントロールズをエネルギーソリューションプロバイダーと位置づけ、ビジネスを推進していく。日本でもグローバルの変革に後れを取らずに大きな変革を遂げたい」と語った。

 2025年3月には、米国本社でもCEOが交代し、ヨアキム・ワイデマニス氏が就任。企業変革に取り組んでおり、2025年度(2024年10月~2025年9月)のグローバルでの業績は、買収などを含めないオーガニックの売上高成長率が5%、年間受注高が7%増加。株価も約30%増加し、最高値を更新したという。

 「新たなCEOの体制になってから、物事をシンプルにとらえ、フォーカスする領域を明確にするといった動きが強まっている。目標と現在地とのギャップを埋めるための施策に取り組んでおり、CEO自らが率先して推進している。液冷ソリューションへの戦略的投資もそのひとつであり、最優先項目になっている」と位置づけた。

2025年度グローバルビジネスの総括

 また日本法人も、2025年度の売上高・利益ともに2桁増を達成し、過去最高を更新。過去10年間で、いずれも約2倍の規模に拡大したという。「営業部門が顧客とのコミュニケーションを重視し、業務の効率化により、顧客との接点に時間を割くことに力を注いできた。データセンターなどの短工期のビジネスが売上増加につながっている」としている。

2025年度日本事業の総括

 日本における2026年度の事業戦略としては、建物の熱管理を最適化し、エネルギーと炭素の節約を推進する「脱炭素化」、冷却技術によるイノベーションを通して、データセンターの経済性を変革する「AIエコノミーへの貢献」、社会的意義が高く、厳格な環境における施設に、正確で高性能なソリューションを提供する「ミッションクリティカルな環境の安定稼働・効率化を支援」の3点を挙げた。

2026年度の事業戦略:高成長市場への対応に積極的に投資

 特に、「AIエコノミーへの貢献」では、包括的に管理、制御できる冷却システムを通じて、データセンター全体の効率化を実現するほか、同社独自のテクノロジーコントラクティングの提案により、コンサルティングから施工、サービスまでを、ワンストップで提供する体制を構築。さらに、2024年12月に茨城県坂東市に開設したHVACサービスセンターを活用して、機器の起動試験や補修などの作業、予備品などの機器の保管などが可能になり、品質の高い製品を、迅速に供給できる体制を整えたことも示した。

AIエコノミーへの貢献

 2026年からは、「YORK YVAM空冷式磁気軸受チラー」の国内受注を開始すると発表。日本の顧客ニーズに基づいた提案を加速するという。同製品は、従来と同等の冷却能力を維持しながらも、年間電力消費を40%削減でき、現地での水使用ゼロを実現。メンテナンスフリーであるのも特徴だ。

YORK YVAM空冷式磁気軸受チラー

 松下社長は、「データセンターは最もエネルギーを費やす施設のひとつであり、一般的なオフィスビルと比較して、床面積あたり10~50倍の電力を消費する。データセンターからの電力需要は、2025年に16%増加し、2030年までには2倍になるとの予測もある。日本国内においても、データセンターが日本全体の電力需要拡大の60%を占めるとの見通しが出ている」と指摘。「データセンターの市場はまだ拡大する。データセンター領域において、ジョンソンコントロールズがサポートできる部分は大きい」と述べた。

 なお、米国本社では、データセンターにおける効率的な液冷ソリューションへの戦略的投資を進めており、2025年9月には、Silent-Aireクーラント・ディストリビューション・ユニット(CDU)プラットフォームを発売している。ただし、同製品の日本市場での展開は、現時点では未定とのこと。

 一方、「脱炭素化」においては、建物のパフォーマンスを最適化するデジタルソリューションパッケージ「OpenBlue」や、自律制御機能の提供、各種HVAC製品群を通じた建物の省エネおよび脱炭素化を支援する。中央監視システムの領域においては、2025年9月に、クラウドベースのビルディングオートメーションシステム(BAS)である「Managed Metasys Server(MMS)」の提供を開始。5年以内に、中央監視システムの国内出荷数の半数をクラウド化する考えを示した。

脱炭素化

 また、「ミッションクリティカルな環境の安定稼働・効率化を支援」では、製薬業界や病院、空港、鉄道、研究機関などにおいて、冗長性の高い自動制御システムの構築や、IT技術を用いた省力化と安定稼働を支えるサービスを提供し、クリーンルーム、冷蔵保管など、高度に規制されているミッションクリティカルな環境の実現を支援するという。日本の政府が投資している半導体分野に向けても、取り組みを強化することになる。

ミッションクリティカルな環境の安定稼働・効率化を支援

 なお、ジョンソンコントロールズは、現場の危険予知などにAIを利用する考えも示した。