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【SAP TechEd 2013基調講演】すべてのアプリケーションをHANAとクラウドへ収束させる
(2013/10/24 10:20)
「HANAは世界を破壊しない、世界を変えるのだ」――。
10月22日(現地時間)、米ラスベガスで開催されたSAPの年次テクノロジカンファレンス「SAP TechEd 2013」の基調講演において、同社CTOであり“HANAの父”とも呼ばれるビシャル・シッカ(Vishal Sikka)氏はこう発言している。SAPがインメモリデータベースアプライアンスとして最初のSAP HANA製品を世に送り出してから2年以上が経過した現在、HANAは単なるインメモリデータベースからSAPの全ソリューションの根幹を支えるプラットフォームへと進化した。
そして現在、SAPはユーザー企業のSAPアプリケーションのすべてをHANA上、それもクラウドで稼働するHANA上へと移行させる戦略を進めている。だがその動きに「破壊(disruption)は必要ない」とシッカ氏は言い切る。かつて、文字通り業務アプリケーションの世界を“破壊”し、一変させたSAP ERPとは異なる形で変化をもたらすことを約束しているともいえる。
レガシーアプリケーションやオンプレミスの環境を破壊せず、いかにしてHANAプラットフォームへの移行を実現しようとしているのか。ビシャル氏の基調講演の内容をもとに、今回発表された新製品の内容も含め、SAPがHANAプラットフォームで描く世界の一端を検証してみたい。
HANAが変えたアプリケーション開発
シッカ氏はまず「The HANA Effect」と題して、あらためてHANAの代表的な特徴を挙げている。
・超並列インメモリ列指向データベース
・再開発されたプラットフォーム
・OLTP+OLAP
・構造化データ+非構造化データ
・レガシー+新規
・迅速性+スケール
・1コアあたり3.58スキャン/秒
・1コアあたり1500万アグリゲート/秒
・1500万インサート/秒
・2.5TB/時のデータサービス
・システムレプリケーション+HA(高可用性)
・メモリフェイリャーリカバリ
インメモリの超高速性に加え、OLTPもOLAPも扱える柔軟性やスケーラビリティが高く評価され、リアルタイムアプリケーションやビッグデータ分析アプリケーションの基盤として数多くの企業で採用されている。基調講演ではChamber、eBay、バーバリーなどの大企業において数百万~数億ドル規模のコスト削減/利益向上を実現した例が紹介されたが、そうしたエンタープライズでの導入実績だけでなく、クラウド経由でHANAを利用するSMBやスタートアップも少なくない。さらにベンチャーによるHANAアプリケーション開発事例なども多く、すでに1000社を超えるスタートアップがHANAを基盤にして製品開発を進めているとされる。
シッカ氏は「HANAはアプリケーション開発の世界を変えたゲームチェンジャー。ビジネスのスピードを変え、よりユーザー指向のソフトウェアを生み出し、ITの世界をシンプル化した。いわばHANAモメンタムと表現できる」とその実績を強調している。