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ネットワン、ワークスタイル変革への人事制度改革、成果を説明

日本テレワーク協会主催「テレワーク推進賞」で優秀賞

 ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は2月14日、同社が実践している「ワークスタイル変革を加速する人事制度改革」の概要とその成果について、記者説明会を開催した。

 ネットワンでは現在、「顧客満足度の向上」および「生産性向上とワークライフバランスの両立」を目指して、全社をあげてワークスタイル(働き方)の変革に取り組んでいる。この取り組みの中では、時間や場所にとらわれず働くことを実現する先端のICT(情報通信技術)の導入と合わせて、テレワークやフレックスをはじめとした柔軟な働き方を支援する「人事制度改革」を両輪で進めているという。

藤田雄介氏

 ビジネス推進グループ 第2製品技術部 クラウドソフトウェアチーム リーダーの藤田雄介氏は、「従来のワークスタイルは、物理的なオフィスが中心となっていたため、仕事が場所に依存している状態だった。これに対して現在は、場所にとらわれない仮想オフィスを採用することで、いつでも・どこでも・誰とでも、オフィスと変わらず業務ができる環境を提供している」と説明する。

 「ワークスタイル変革によって、モビリティの向上による『生産性向上』、およびデータを持ち出させないことによる『セキュリティリスクの低減』を実現し、顧客満足度の向上を図る。また、働き方の改善による『コスト削減』、交通障害・パンデミックでも自宅で仕事ができる『BCP対策』の実現により、社員満足度の向上にもつなげていく」と、藤田氏は、ワークスタイル変革に期待する効果について述べた。

下田英樹氏

 このワークスタイル変革をさらに加速させるため、同社が取り組んだのが人事制度の改革だという。人事制度改革に向けたビジョンについて、業務管理グループ 人事部 シニアエキスパートの下田英樹氏は、「人事制度改革では、『時間』を基準にした仕事意識や報酬を見直し、時間外労働を削減することで、『成果』基準の意識と報酬の拡大、働き方の工夫による生産性向上、顧客と社員の満足度向上を目指した。また、新たなワークスタイルとワークライフバランスの創出によって、過重労働や無理・無駄な仕事をなくすことを目指した」としている。

 具体的な施策としては、人事制度改革の中核として、新たに「テレワーク制度」と「フレックスタイム制度」を導入すると共に、従来の「シフト勤務制度」を改訂した。「テレワーク制度」は、在宅勤務とリモートワークにより社外で成果をコミットする働き方で、「セルフマネジメントを徹底し、コミットした成果を出せる人」および「生活事情や交通事情により出勤が難しい人」を対象に適用される。利用単位は1日または半日を原則とし、利用回数の制限は設けていない。

人事制度改革の中核となる3つの制度

 「フレックスタイム制度」は、自分で計画した時刻に業務を開始し、かつ終了する働き方で、非管理職を対象としている。コアタイムは10時から15時。フレキシブルタイムは始業が7時から10時、終業が15時から22時で、時間の精算は「1日あたり7.5時間」×「1か月の労働日数」となっている。

 「シフト勤務制度」は、会社が指定する時間帯に所定労働時間をシフトする働き方。業務遂行上、必要と認めた場合、もしくは仕事と家庭の両立を図るために必要と認めた場合に適用される。勤務時間帯は、必要に応じて設定することが可能だが、「仕事と家庭の両立」での適用の場合、始業時間は7時から13時の間に限定される。

 「新制度の導入にあたっては、当初、裁量労働制の拡大を優先したが、実現には至らなかった。裁量労働制は、技術職群には適しているが、適用範囲が狭く、社員との親和性も低かったことがその要因だ。これに対して、フレックスタイム制は、適用範囲が広く、社員との親和性も高いことに加え、働き方を工夫しようという気持ちと環境を提供できると判断した。また、社員の意識変革を促すために、テレワーク制度のガイドラインを策定したほか、社内報による啓発を行った。さらに、運用面においても、報告メールの活用やスケジュールの共有化などを促進している」(下田氏)と、新制度の導入に向けて様々な試行錯誤と工夫を重ねてきたという。

社員満足度に関するアンケート結果

 新制度の導入効果を調べるために、まず導入直後に社員アンケートを実施。満足度に関するアンケートでは、仕事に対する満足度は「良くなった」が70%、私生活の満足度についても「良くなった」が80%を占め、公私ともに満足度を高める結果となった。生産性の向上に関するアンケートでは、仕事に対する生産性は「良くなった」が54%と過半数を占めた一方で、アウトプットに要する時間は、「良くなった」が34%、「影響なし」が58%となり、大きな効果は得られなかったようだ。その他の効果としては、前年比で売上が20%増加した中で時間外労働が2%削減、また「定年までネットワンに勤めたい」が3年で5%アップしたという。

 さらに、同社では、新制度の導入から2年半が経過した2013年に再度社内アンケートを実施。勤務諸制度の活用度を聞いたところ、「活用できている」が18%、「まあ活用できている」が42%と、柔軟なワークスタイルの利活用が進んでいることが明らかとなった。活用が進まない理由については、「リアルコミュニケーションの重要性・効率性の重視」、「他者、周囲への配慮」といった回答が多く見られた。

勤務諸制度の活用度に関するアンケート結果
成果およびコミュニケーションに関するアンケート結果

 個人のアウトプット(成果)の質については、「満足」が18%、「やや満足」が39%となり、半数以上が満足と感じているようだ。コミュニケーションの実現度も、「実現できている」(17%)、「やや実現できている」(42%)を合わせて、59%が実現できていると回答していた。また、ワークライフバランスの実現度についても、「実現できている」(10%)、「まあ実現できている」(38%)と、半数近くが実現できていることがわかった。さらに、同社が課題としていた時間外労働と過重労働者も、新制度の導入を機に、着実に減少しているという。

ワークライフバランスの実現度に関するアンケート結果
最近の時間外労働と過重労働者の推移

 今後の課題として下田氏は、「顧客満足度のさらなる向上」、「多様化する社員ニーズへの対応」、「社員の制度理解と利活用を促進」の3点を挙げ、「顧客満足度では『顧客の訪問回数と対応時間」、社員満足度では『ワークライフバランスの実現度』、生産性では『時間外労働の時間数』を重点指標として、人事制度改革によるワークスタイル変革をさらに推進していく」との考えを示した。

 なお、ネットワンは2月14日、日本テレワーク協会主催の第14回「テレワーク推進賞」において、優秀賞を受賞したことを発表した。受賞理由としては、社員の創意工夫を最大限に引き出すために、「成果を重視することで、利用者や利用回数の制限がないテレワーク制度とした点」および「仮想デスクトップやコラボレーションツール、BYOD(私物情報端末の業務利用)等の先端ICTを活用し、オフィスと変わらない環境を提供した点」が評価されたという。また、この成果として、時間外労働の減少や社員満足度の向上が実現したことも評価されたとしている。

唐沢 正和