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クラウド成長率は400%――SAPジャパンの「脱ERP」構造改革、着々と

代表取締役社長の安斎富太郎氏
2013年度の業績

 SAPジャパン株式会社は6日、2014年ビジネス戦略説明会を開催。代表取締役社長の安斎富太郎氏が就任後3年間続けてきた「Non-ERP」「クラウドファースト」への取り組みと成果を説明した。

 2013年の総売上は、グローバルが176億3600万ユーロ(前年比8%増)、日本が7億8800万ユーロ(0%)。2011年からの3年間CAGRはグローバルが14%増、日本が20%増となった。特筆すべきはクラウド成長率。グローバルの130%増に対して、日本は400%増という数字をたたき出した。インメモリデータベース「HANA」も日本の成長率は130%増と好調だ。

 SAPジャパンは安斎氏が社長に就任してからの3年間、“ERPからの脱却”“クラウドファースト”をはじめとする事業構造の変革に取り組んできた。その成果が数値に表れ始めたという。

 構造改革の成果として挙げたのは、「クラウド事業の急伸」「HANAプラットフォームの成長」「サービスビジネスの積極展開」「パートナービジネスの成長」の4点だ。

クラウド急伸の背景

構造改革の成功例(1)クラウド事業の急伸

 クラウド事業の急伸としては、2013年4月にクラウドファースト事業本部を設立。当時40社ほどだったクラウドサービスの導入数を100社に拡大、「目標だった3ケタ」(安斎社長)に乗せた。その成果が400%増という数値だ。

 クラウド事業のハイライトは、(1)クラウドERP「ByDesign」の東南アジア展開におけるNECとの協業、(2)人事クラウド分野におけるパソナとの協業、(3)小売業におけるオムニコマースを実現する「hybris」の採用、(4)住友重工をはじめとした「HANA Enterprise Cloud」の採用加速、(5)IIJをはじめとしたクラウドサービスパートナーの拡大。

 安斎社長は、IIJが自社クラウドサービス基盤にHANAを採用したことに触れ、「SAPクラウドのシンプル化がかなりの速さで進んでいる証」と説明。またNECとの協業では、これまで手が届かなかった領域にも踏み込めると語る。すなわち「今までは国内本社がSAPを使っていても、海外拠点では手に余るということで別製品を使っている例が多かった。クラウド型ERPを東南アジアに展開することで、これからはそうした海外拠点にもリーチできる」というわけだ。さらに人事、オムニコマースと新しいビジネス領域にもチャレンジできるようになったことが、SAPクラウド急伸の裏側だと語った。

HANAが名実ともにOLAP/OLTP単一基盤に

構造改革の成功例(2)HANAプラットフォームの成長

 HANAビジネスは130%増の成長。新規SAP ERP向けデータベース50%以上にHANAが採用され、また、OLTP(オンライントランザクション処理)へのHANAプラットフォーム採用はHANA案件全体の30%超に。当初、HANAはOLAP(分析)向けと見られていたが、SAPジャパンはOLAPにもOLTPにも対応すると訴求し続けてきた。上述の数値は「OLAP/OLTP統合基盤としてのHANA」が確立された証だと安斎社長は語る。

サービスビジネス発展に伴う組織改変

構造改革の成功例(3)サービスビジネスの積極展開

 サービスビジネスにも注力してきた同社。2013年には、早期導入を支援する「RDS(Rapid Deployment System)」関連サービスの受注が229%増。顧客の個別ニーズに対応する「Custom Development」の受注も53%増、プレミアムサポート「Premium Engagement」の受注も50%増と成長を遂げた。

 「2014年の課題は受注した案件に対する確かなデリバリー」と安斎社長。サポートの質をさらに高めるため、従来分断されていたコンサルティングとサポートを1つの新組織にまとめあげ、2014年4月に400人体制でシナジー創出を図るという。「導入前と導入後でお客さまと接する部隊が分断されていると、サービス品質の一貫性が保てないことがある。デリバリー部隊として統合することで、よりシームレスなサポートを実現する。そのために社員の意識改革を進めているところだ」。

パートナービジネスでもNon-ERP比率が向上

構造改革の成功例(4)パートナービジネスの成長

 パートナービジネスについては関連売上が23%増。全ソフト売上のチャネル販売比率が30%にまで向上した。SAP認定コンサルタント数も年20%増で1万1000人を超えたという。「何よりうれしいのが、パートナービジネスにおけるNon-ERP比率が35%から51%に向上したこと」(安斎社長)。

2014年のフォーカスポイント

2014年のフォーカスポイント

 2014年は「Simplify everything, so we can do anything」を標ぼうし、ビジネスのすべての領域で簡素化を図っていくという。その一例が「クラウド」「モバイル」「アナリティクス」「アプリケーション」という注力領域すべてにおいて、クラウド・オンプレミス問わずに、HANAをプラットフォームに採用することだ。

 併せて、インダストリごとの特性に合わせた組織強化を図り、顧客のそれぞれのニーズに応じた支援を行っていく。また、新しいチャネル開拓、パートナー企業とのCo-Innovationなどエコシステムの強化にも注力。パートナー企業の広い市場カバレッジを活用し、年商500億円以下の中堅・中小企業はすべてパートナービジネスとして取り組んでいくとした。

 目指すは「プラットフォームカンパニー&クラウドカンパニー」という評価。すでにクラウド知名度調査でSAPは15位に。「いよいよSAPもクラウドの会社として認識されだした」(安斎社長)。この流れをさらに加速させる考えだ。

川島 弘之