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デジタルとリアルの連携やビッグデータ対応を強化した「hybris Commerce Suite」最新版

独ハイブリス社製品戦略担当バイスプレジデント ステファン・シュミット氏

 ハイブリスジャパン株式会社は4月22日、「hybris Commerce Suite(ハイブリス・コマース スイート)」の最新版Release 5を提供開始した。

 「hybris Commerce Suite」は、B2B、B2C企業に実店舗やWebショップなど複数の販売チャネルへの在庫管理機能などを単一基盤上で提供するコマース向けソリューション。マルチ言語、様々な通貨に対応する。日本市場へは昨年4月に参入、今回新バージョンRelease 5を提供開始するもの。「hybris Commerce Suite」は、パートナー契約を結んだSI事業者から提供する。

 hybris Commerce Suite最新版では、複数販売チャネルを持つ顧客企業に、実店舗、Eコマースなどで一元化した製品情報管理や顧客管理、在庫管理などを提供。

 新しいオーダー管理機能では、倉庫、調達、仕分けにおける在庫の一元的ビューの提供のほか、店舗内の業務プロセスをサポートするピッキング、梱包、配送機能を提供する。これにより、企業は業務コストを削減できる一方、消費者はネットで購入して実店舗で受け取るといった、販売チャネルを横断する購入が可能になる。

 また、 「hybris InStore Module」は、デジタルとリアルな場所、製品データ、在庫の連携を可能にする。QRコード読み取りに対応できるほか、NFC(近距離無線通信技術)にも対応。全店舗での在庫状況を表示するほか、最適な商品を選択できるよう店員がその場で製品情報を確認して顧客にアドバイスするなどの利用方法が可能になる。

 システムの中に格納できる量も拡大。3000万製品、6テラバイトの顧客データがこれまでの導入事例で最大のシステムとなるが、今後は1億5000万の製品が扱えるようになった。ビッグデータのメモリスケーリングで複数のトランザクションの並行実行が可能となったほか、動的エラスティックスケーリングのサポートも可能だとしている。

 また、「Next Generation Cockpit」はウィジェットベースのフレームワークで、企業に合わせたビジネスユーザー向けツールを構築する機能などを持つ。

 iOS および Android用Mobile App SDKを提供。モバイルコマース用アプリを迅速に開発、展開することができる。Mobile App SDKには、あらかじめ設計されたモバイル店舗用テンプレートがあり、はQRコード読み取り、NFCタグ認識、顧客管理、モバイル検索、すぐに使えるチェックアウト機能が含まれる。各種デバイスのモバイルに最適化されたブラウジング機能を持ち、ソーシャルメディアへのプラグインも可能となっている。

「hybris Commerce Suite」のアーキテクチャ
新バージョンのオーダーシステム
インストア・モジュール。QRコードやNFCもサポートした
マルチデバイスをサポート
ビッグデータ対応

 ハイブリス・ジャパンの親会社である独ハイブリス社製品戦略担当バイスプレジデント ステファン・シュミット氏は、「これまで既存の販売店、小売店は、店舗、メールオーダー、インターネット販売などチャネルごとにそれぞれのフローを確率しなければならなかった。また、このチャネル間では顧客情報、製品情報が共有できていなかった」とこれまでのコマース業界の問題点を指摘。

 ハイブリス社をはじめとしてEコマースのソリューションはいろいろな情報を一元化するという製品が出てきているが、その中にうまく取り込まれなかったのが実店舗で、店舗のみが取り残されてしまった形だと述べた。

 リアルとネットの統合をするには課題があり、さまざまなバックオフィス(基幹システム)があるが、ERPなどはインターネットを想定して作られていないうえ、プロセスが複雑化してしまって、大きなネットワークのようになってしまっており統合が難しいとした。

 「過去は、実際にものが作られてからメーカー→卸→小売→消費者と直線の流れだったが、消費者はチャネルが増えたことで、ネットで買って店舗で返品するといった柔軟な対応を期待するようになる。そこで、基幹システムの前にあるアップラットフォームを単一プラットフォームにすることが必要になる。在庫、顧客、注文、商品のビューを統一することが求められている。」(シュミット氏)

 また、「競合他社にはIBMやオラクルがいるが、IBMやオラクルはソフトパッケージを買ってきて、システムに組み入れてひとつのパッケージとして販売する。それに比べ、ハイブリスでは複数のパッケージを購入する必要はない」と複数のコマースチャネルを単一プラットフォームで提供するアドバンテージを強調した。

 一方で、「ハイブリスが提供する「hybris Commerce Suite」はこれまでのERPを置き換えるものではなく、既存のERPの上にかぶせて、均一的なエクスペリエンスを提供できる」として、一度にこれまでのシステムを置き換えるのではなく、APIなどを利用して導入しやすい一部の業務や一部のコマースチャネルから導入を開始し、徐々に置き換えるという柔軟な導入が可能であると述べた。

Eコマースサイトの例。在庫の有無がリアルタイムで確認でき、在庫が少なくなった場合は残り何個という表示もできる。左ペインには最寄り店舗が表示される
店頭在庫が店舗ごとに確認でき、現在地からの距離も表示。ネットで購入して店頭で受け取りも可能
店舗で店員が利用するタブレット画面。店舗在庫とメーカー在庫の有無が確認できる
顧客が実店舗で購入したい場合は、タブレット画面で在庫のある店舗とそこへの距離が表示できる

 ハイブリスジャパン代表取締役社長の森田正昭氏は、日本法人では、日系多国籍企業と日本市場に進出している外資系多国籍企業をターゲットとしてパートナーのSIerを通じて販売していくと販売戦略を述べた。

 日本では、2012年4月に日本市場参入を発表した際に、第1号の日本の顧客であるオーエスシーを紹介したが、B2Bのオーエスシーは11月に稼働したと説明。さらにアスクル系の資本が入っているAlpha Purchaseは7月に導入し、4月にEコマースサイトが立ち上がる予定だとした。

 また、B2Cではアシックスが8月にグローバルのEコマースプラットフォームとして採用、現在展開中で近々に米国、次いで日本サイトが立ち上がる予定だと紹介。同じくB2Cのトリンプは9月にグローバルプラットフォームとして導入、今月10日にハイブリスで日本のサイトが稼働開始し、今後ヨーロッパ、アジアに展開予定だと述べ、在庫管理などリアルとネットをつなぐシステムでありながらスピード感のある導入が可能であることを強調した。

(工藤 ひろえ)