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EMCジャパン、山野修社長がPivotalやViPRの方向性を説明

EMCジャパン 代表取締役社長の山野修氏

 EMCジャパン株式会社は6日、報道向けの説明会を開催。同社の代表取締役社長である山野修氏が、米国のEMC Worldで発表されたことを中心に、同社の戦略と方向性を説明した。

 山野社長の話のうち、注目が高まっているのは大きく2つある。そのうちの1つが、ビッグデータに特化した新会社「Pivotal」だ。

 米EMCと米VMwareが出資して4月に設立されたPivotalには、EMCが買収したGreenplumなど、EMCとVMwareがかかえるビッグデータ関連の部門や社員が移籍。現在、すでに1250名の社員がいるとのことで、「ビッグデータ関連の企業としては世界最大規模であり、2013年には約3億ドルの売り上げを見込んでいる」(山野社長)のだという。出資比率はEMCが62%、VMwareが28%で、複合企業であるGE(General Electric)も、資本の10%にあたる1万500万ドルの出資をした。

 山野社長によれば、このPivotalのビジネスにおけるキーワードは“ビッグ&ファストデータ”とのことで、単にビッグデータを処理するだけでなく、いかに早く提供するかという“ファストデータ”の視点を盛り込み、プラットフォームを提供するという。

 その具体的な活用シーンとしては、出資もしているGEの例を引き合いに出し、「GEでは、ジェットエンジンを売るのではなく、サービスとしてお客さまへ貸し出し、使っている時間や出力をベースに課金するビジネスモデルに切り替えようとしているという。こうしたモデルでは、いかに効率的にエンジンを使ってもらうかという点で、稼働効率が大事。そのためには、さまざまなセンサーから出てくるビッグデータの活用が不可欠になる」と述べ、Pivotalのアプリケーションプラットフォームにより、こうしたことが可能になるのではないかとした。

 なおPivotalでは、GreenplumやPivotal Labs、GemFire、Cloud Foundryなど、EMCとVMwareが保有するミドルウェアをベースとして、「Pivotal One」という統合プラットフォームを組み上げる予定だが、国内での具体的な話については特に触れられなかった。ただし、2013年後半にもPivotalの国内法人が立ち上がる予定とのことで、その際にはもっと具体的な説明が行われる予定だ。

Pivotalの発足
Pivotalのポートフォリオ
Software Defined Storageの利点

 山野社長が取り上げた2つ目の大きなトピックは、Software Defined Storageを実現するソフトウェア「ViPR」である。山野社長は、「ストレージを抽象化することで、物理的なストレージを直接アプリケーションが意識しなくとも運用できるようにするソフトウェア製品がViPR。容量についても、ストレージをプール化することによってハードウェアの限界を気にせずに利用できるし、運用もできる限り自動化・省力化する」と、そのメリットを説明する。

 またViPRでは、EMC製品だけでなくサードパーティ製のストレージを含めてプール化できるようになるので、必ずしもEMC製品だけにこだわる必要がなくなり、ユーザー側の資産を最大限に活用できる点も特徴だ。

 こうすると、EMCにとっては良いことだけではなくなりそうだが、I/Oや物理容量、管理性や可用性などさまざまな指標においてEMCでは最適なストレージ製品をラインアップしているため、ViPRのようなソフトウェアがストレージの上にかぶさった後も、競合との戦いでは有利に働くとのこと。

 山野社長は、「なぜなら、お客さまの要件は同じではないからだ。要求するサービスレベル、性能、容量などをマトリックスにして、必要とされるであろうSLAを満たすストレージをEMCでは提供できる」と述べ、ViVRが登場した後も、幅広いラインアップを持つ意味が引き続き存在するとした。

 なお導入の対象としては、「Software Defined Storageは、例えば、ごりごりのIOPSを求めるERP環境がすぐにViPRへ移行するとは考えておらず、データセンター事業者のように、さまざまなお客さまの、さまざまなアプリケーションに対応しないといけないところが、要求されるSLAに応じて切り分けていく、といった使い方をまず想定した」と説明している。

 まだ、具体的な製品などは見えていないViPRだが、提供開始が予定されている2013年後半に向けて、徐々に情報が出そろってくるだろう。

ViPRでは、コントロールプレーンとデータプレーンを提供
VMwareはもちろんのこと、他社のさまざまな製品と連携するのも特徴。ストレージハードウェアについても、自社製品以外へ対応していく

(石井 一志)