仮想化道場

マルチベンダー環境のSoftware Defined Storageを実現する「EMC ViPR」

既存のストレージをさまざまな用途で利用できるようにするData Services

 実はViPRには2つの大きなコンポーネントがあり、ここまでご説明してきたのが、「ViPR Controller」の機能になります。そして、もう1つのコンポーネントが「ViPR Data Services」です。

 ViPR Data Servicesでは現在、ViPR Object Data Servicesを提供しています。これは、すでに利用されているNAS(ファイルストレージ)やSAN(ブロックストレージ)をオブジェクトストレージに変換して利用できる、ゲートウェイのようなものです。

 OpenStackのオブジェクトストレージのSwiftでは、各サーバーノードが持つストレージを合わせてオブジェクトストレージにしていましたが、ViPR Object Data Servicesでは、NASやSANを直接オブジェクトストレージとして利用することができます。

 また今後は、NASやSANなどの既存環境を流用してHadoop分析が実行できる「HDFS Data Service」などなど、ViPR Data Servicesのラインアップを拡張していく予定です。例えば、ブロックストレージ機能、Fileストレージ機能、Replication機能、Migration機能などを、2014年のアップデート時に追加していく予定になっています。

ViPRのアーキテクチャ。ControllerとData Serviceが仮想アプライアンスで提供されている
ViPRは、2014年の早い時期にアップデートを行い、さまざまな積み残しの機能をサポートしていく予定だ

 現状のViPRに関しては、SDSを実現するための第一歩を踏み出したばかりという印象を持った。ただし速いスピードでアップデートを行うことで、SDSを実現するソフトウェアとして欠かせないモノにしていこうという、EMCの意気込みを感じることもできた。

 できれば、EMCやNetAppといった海外ベンダーのストレージだけでなく、日立、富士通、NECなど、国産ストレージもViPRで扱えるようになれば、国内の企業も導入しやすいだろう。

 また、各ストレージの使用状況やアラートなどのデータも、ViPRからグラフィカルに監視できるようになれば、日常の運用・管理などはViPRを使い、特別な操作を行うときだけ、それぞれのストレージシステム専用のツールを使う、といったすみ分けがより進むと思う。

 ViPRが中心になるかどうかはともかく、多くのストレージベンダーが、ストレージの管理のためにREST APIのような共通の仕組みを用意するようになれば、ストレージの抽象化も進んでいくことになるだろう。

山本 雅史