仮想化道場

マルチベンダー環境のSoftware Defined Storageを実現する「EMC ViPR」

 2013年5月に米国で開催されたEMC World 2013で発表され、11月に日本国内での提供が開始された「ViPR(ヴァイパー)」は、メーカーや種類が異なっているストレージを統合的に管理・運用できるようにするソフトウェアプラットフォームだ。

 EMCでは、ViPRはストレージレイヤを抽象化し、Software Defined Storageを実現するためのプラットフォームだと説明していたが、新しいコンセプトに基づいた製品だけに、詳細がわかりにくかった。

 そこで今回は、ViPRとはどのようなプラットフォームで、どのような目的に利用できるのかという点を、EMCジャパン システムズ・エンジニアリング本部 プロダクト・ソリューション統括部 ソリューション部 Sr.vSpecialistの吉田 尚壮氏に聞いた。

Software Defined Storageを実現するViPR

――ViPRの製品コンセプトを教えてください。

今後データセンターは、抽象化、プール化、自動化をサポートするSoftware Defined Data Centerへと進化していく

 2012年の8月末に開催されたVMwareのカンファレンスVMworld 2012において、同社CEOのパット・ゲルシンガーが、Software Defined Datacenterというコンセプトを打ち出しました。ご存じの通り、VMwareは仮想化ソフトでトップを走る企業であり、またEMCの子会社です。

 ゲルシンガーは、VMwareのCEOになる前は、EMCの情報インフラ製品部門を担当する社長兼COO(最高執行責任者)でした。また、前VMwareのCEOだったポール・マリッツ氏は、EMCが主導して設立したPivotalのCEOになっています。

 EMCにとって、データセンターで使用されるすべてのハードウェアにおいて、“Software Defined化”は重要なコンセプトになっているのです。

 Software Defined Datacenterを構築するためには、Software Defined Compute(CPUやメモリなどのコンピュート部:SDC)、Software Defined Networking(ネットワークの仮想化:SDN)、Software Defined Storage(ストレージの抽象化:SDS)といったコンポーネントが重要になってきます。

 SDCでは、CPUやメモリなどのコンピュータの中核部分を仮想化するのですが、VMwareのハイパーバイザーであるESXiや、複数のサーバーを管理するvCenterなど、さまざまなソフトウェアがそろっています。またSDNに関しては、オープンソースでの開発が進んでいたり、VMware自体もvSphere上で稼働するNSXというSDNソフトウェアをリリースしたりしていますし、今、一番ホットな部分ですね。

 このように、SDCとSDNに関しては、さまざまなデファクトスタンダードや標準規格などができ、多くのソフトウェアベンダーが製品を提供している状況です。しかし、ストレージに関しては、多くのストレージベンダーが各社独自のストレージシステムを提供しているため、さまざまなメーカーのストレージを統一的に管理したり、運用したりすることはできませんでした。これでは、SDCを実現することはできません。

 そこでEMCは、ストレージシステムを一元的に管理・運用できるソフトウェア、ViPRをリリースすることにしたのです。

ComputeやNetworkの仮想化が進み、バックエンドにあるストレージの仮想化も必要になってきている
ViPR以前は、各社・各ストレージ独自に管理を行う必要があった。ツールや管理コマンドは製品ごとに異なっているため、それぞれのエキスパートしか管理ができなかった

(山本 雅史)