オラクル、経営管理アプリケーション最新版~スピードアップ、コストダウン、リスクヘッジでグローバル経営を支援


 日本オラクル株式会社は10日、オラクルの経営管理アプリケーション製品群の最新版「Oracle Enterprise Performance Management System R11.1.2.2(以下、Oracle EPM System)」の提供を開始した。

 日本オラクル 執行役員 製品事業統括 EPM/BI事業統括本部長 関屋剛氏は、「今回のOracle EPM Systemはメジャーバージョンアップに匹敵するリリース。グローバル経営に求められるスピードアップ、コストダウン、リスクヘッジという3つの要素を押さえた機能強化が図られている」と語り、経営のグローバル化という市場のニーズを機能に反映させた製品であることを強調する。


グローバル経営への要求に応える機能強化

日本オラクル 執行役員 製品事業統括 EPM/BI事業統括本部長 関屋剛氏

 Oracle EPM Systemは企業の経営活動における管理にフォーカスした一連の業務をひとつの基盤で包括的に支援するアプリケーション製品群だ。具体的には、以下4つの管理を指す。

・Strategy Management … 投資計画、財務計画、M&Aなど
・Planning & Forecasting … 予算編成、将来予測など
・Financial Close … 財務連結、管理連結
・Profitability Management … 原価管理、収益性管理など

 新バージョンでは、オラクルの分析専用アプライアンス「Oracle Exalytics In-Memory Machine」に対応し、予測分析やレポート作成で従来比2.5~5倍という大幅なパフォーマンス向上が実現したほか、「スピード」「コスト」「リスク」の3つをキーワードに、グローバル経営への要求に応えた機能強化が実施されている。

Oracle EPM System概要経営に求められる変化対応力グローバル経営に求められる3つの要素:スピード、コスト、リスク


スピード:機敏な展開と大量のデータ処理コスト:システム統合の重要性リスク:財務データ統合の必要性と将来予測の困難性


計画系の機能強化ポイント

日本オラクル EPM/BI事業統括本部 ビジネス推進本部 ビジネス推進部 シニアマネジャー 福岡浩二氏

 日本オラクル EPM/BI事業統括本部 ビジネス推進本部 ビジネス推進部 シニアマネジャー 福岡浩二氏はOracle EPM Systemの新機能について、「計画系、連結系、共通基盤の3つの面で強化が図られている」とし、それぞれについて解説を行った。

 Exalyticsに対応したことで、大幅なスピード処理とそれにともなうコスト削減も実現したが、福岡氏は「Exalyticsサポートにより、エンタープライズプランニング(経営の着地予測)が経営層だけでなく現場の実務層も行えるようになったことが最も大きい」と語る。

 例えば、昨年のタイの洪水で多くの製造業がサプライチェーンを分断されたが、そういった事態をリスクとして想定していた企業は少なくない。「しかし、その問題は経営の着地予測が読めないこと。財務データだけではこういった事態を先読みできない」と福岡氏。これを圧倒的な処理能力を誇るExalyticsで現場の担当者が迅速にインパクトを分析することで、これを受けた経営層は時期を過たずに的確な判断を行うことが可能になる。「Exalyticsへの対応はプランニングの使い方そのものを変える機能強化」。(福岡氏)

 また、プロジェクトという観点で財務計画(ファイナンシャルプランニング)を迅速に行う「Project Financial Planning」も今バージョンアップの目玉機能のひとつだ。

 福岡氏は、従来の財務計画は「ヒトとモノがベースになっていて(リソース中心)、財務の視点が欠けている」と指摘。投資案件ひとつをとってみても、財務インパクトはどの程度か、フォローし続ける価値はあるのか、投資をやめるラインはどこか、といった重要な事項は、リソース中心ではなく投資ライフサイクル全体を考えて最適な選択をすべきだとする。

 Project Financial Planningは、ERPのプロジェクト機能と連携してプロジェクトごとにベストプラクティスを事前定義することができるため、プロジェクト活動と財務計画を密に連携させ、投資サイクル全体の最適化を図ることが可能になっている。ひとつひとつの判断に迷いながら投資案件を回すのではなく、最初から全体最適を考慮した選択を取るというシステムだ。

 さらに、経営管理をいわゆるKKD(勘と経験と度胸)から脱却させるためのリスク予測機能として「Predictive Planning」が取り入れられている。表を使った予測モデリングやシミュレーションを行うアプリケーション「Oracle Crystal Ball」の統計的予測技術に基づいた回帰分析機能を追加することにより、予測精度の大幅な向上を実現。「人間の視覚では検知できないパターンを導き、属人的なリスク判断からの脱却を図れる。」(福岡氏)

 以前からの機能を強化したものとしては「Oracle Hyperion Profitability and Cost Management(HPCM)」のMicro Costingが挙げられる。これは詳細データを損益構造に高速分解する機能で、データの格納および配賦処理の出力先を従来のORAPだけでなく、リレーショナルデータベースにも変更できる。

 サービス業や通信業など、製造業以外では損益分岐の見極めが難しく、特に間接費の振り分けは困難だ。配賦エンジンをOLAPだけでなくRDBにも対応させたことで、大規模/詳細データの配賦シーンでの活用が期待される。


Oracle Exalyticsの計画機能対応大規模ユーザー展開でのレスポンスタイムの検証結果Oracle Exalyticsが実現するEnterprise Planning


Oracle Hyperion Project Financial Planning投資サイクルを可視化してROIを最大化Predictive Planning:リスクを踏まえた将来予測機能の強化


連結系の機能強化ポイント

 Oracle EPM Systemsの連結管理アプリケーション「Financial Close Management」はダッシュボードでの決算プロセスの可視化が図られたほか、新機能として「Account Reconciliation Manager」が追加されている。これはグループ企業各社の財務情報の整合性を取ることを目的としており、残高照合作業の効率化や統制強化を実現する。

 「残高の照合を人力でやっている会社はまだ多いが、非効率的であるばかりでなく、ミスも生じやすい」と福岡氏。新機能により決算プロセスのスピードアップだけでなく、監査リスクとそれにかかわるコストの回避を図れるという。

 また、各種法令対応やスピード展開を実現するため、各ビジネスニーズを踏まえた業務テンプレートが追加されている。これにはIFRSも視野に入れた日本会計基準対応テンプレート「Japan Starter Kit 2.0.0」やGRIガイドラインに準拠した「Sustainability Reporting」、ソルベンシー規制を踏まえた保険業界向けの「Solvency Reporting for Insurance」などが含まれる。

 財務情報をテンプレートに従って分析する「Oracle Financial Management Analytics」も強化されており、Hyperion Financial ManagementやFinancial Close Managementに直接接続し、可視化された連結データプロセスの情報を出力できる。もちろんパッケージ化した分析のカスタマイズ/拡張も可能。さらに分析したデータをビジネスユーザーにモバイル配信できる。

連結アプリケーション群:Financial Close Suite概要Financial Close Management新機能業務テンプレートの追加


共通基盤の機能強化ポイント

 「単一のERPを全社で使っている企業は少ない。仮にそうであっても、1年後に同じERPを使っているかどうかはわからない」と福岡氏。特にM&Aなどで新たな会社がグループに加わった場合、ERPだけでなく、ビジネスコードや勘定項目が違うなどの不整合は常態化しているといっていい。しかしそれがビジネスの妨げになってはならない。

 オラクルは今回、Oracle EPM SystemsとERPの統合も強化するため、基幹連携アダプタの強化も図っている。「Oracle E-Business Suite」「JD Edwards Enterprise One」「PeopleSoft Commitment Control」といったオラクル製品のほか、SAPの会計モジュールである「SAP Financial Accounting & Controlling」にも対応している。これにより製品間の統合コストを大きく抑えることが可能だ。

ERPとの統合を強化


スピードアップ、コストダウン、リスクヘッジ

 スピードアップ、コストダウン、リスクヘッジ―――日本企業のグローバル化を進めていくにあたってはどれも非常に重要な要素である。

 「M&Aである日突然、海外の子会社で事業を始めるということが普通に起こるようになっている。その際、子会社の財務情報や経営状況を迅速に入手し、将来予測やリスク予測を高い精度でロジカルに行えることが求められる」と関屋氏は語る。

 Oracle EPM Systemが強調するもうひとつのテーマは、経営管理における属人的手法からの脱却。過剰な属人的手法をそぎ落とすことで、スピードアップもコストダウンもリスクヘッジもカバーでき、加速するグローバル経営の潮流にも乗れるとしている。今回のOracle EPM Systemの機能強化はその流れをさらに推し進めるものとして注目される。

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