富士通研、ピーク電力削減技術を開発~クラウドから蓄電池を統合制御
株式会社富士通研究所(富士通研)は14日、ピーク電力削減技術を開発したと発表した。
クラウド技術によって蓄電池を統合制御する技術。従来、ビルや家庭に配置された蓄電池を電力使用量のピーク時に放電して、それ以外の時間帯でユーザーごとに充電することで、ピーク電力削減に対応してきたが、この場合、蓄電池に充電する時間帯が偏ってピーク電力を逆に増加させる危険性があった。
新技術では、オフィスや住宅街などの使用電力と、そこに分散配置された蓄電池の残量、使い方などの情報をクラウド上に収集し、蓄電池を統合制御する。その際、複数パターンの需要予測とユーザーの使い方を考慮した充放電スケジュールを計画することで、ユーザーの使い勝手を損なわずにさまざまな電力需要の変動に対応できるという。
具体的に電力需要予測技術では、コミュニティー全体の過去の電力需要の変動を、午前中・昼間・夕方で使用電力の多いパターンや、一日を通じて使用電力があまり変わらないパターンなど、いくつかのパターンに分類。次に予測時点までの電力需要の変動から起こりうる可能性の高いパターンに絞り込み、補正をかけて予測していく。
一方、蓄電池を統合制御する充放電制御技術では、クラウド上に収集したユーザーごとの使い方や各蓄電池の残量などの情報に基づき、ピーク電力の削減量だけでなく、各蓄電池の充放電による残量の変動も考慮した充放電スケジュールを計画する。これにより、ピーク電力を削減しつつ、放電で残量がなくなって実際に使いたい時に使えなかったり、特定の蓄電池だけを充放電させて寿命を縮めたり、といったトラブルを回避できるという。
同社では、オフィス(約40名)を1つのコミュニティとし、ノートPCの内蔵バッテリを分散配置された蓄電池に見立て、オフィス全体のピーク電力を削減する実験を行った。出張が多いユーザーのノートPCは放電時間を少なくし(バッテリ残量を多めにし)出先でのバッテリ切れを防いだり、放電させる(バッテリ駆動させる)ノートPCが偏らないようするなどの対応もクラウドから実施。その結果、ピーク電力を約10%削減できることを確認したという。
シミュレーション結果。下図のように細やかな充放電スケジュールを組むことで、17時半ごろのピーク電力を10%削減した |
今後は、社内・社外での実証実験を通じて、技術検証を進める方針。さらにスマートシティに設置される蓄電池の特性や電力の送配電などの条件、さまざまなコミュニティの特性を考慮した電力需要予測と充放電制御によるピーク電力削減について研究開発を進め、持続可能な電力社会の実現を目指すとしている。