使い続けてもらえるIT管理ツールを提供したい~米SolarWindsの哲学


 「従来型のIT管理ツールはパワフルだが使いにくく、売り込み対象は企業の幹部になるが、当社ではパワフルで使いやすい製品を、実際に製品を使うユーザーに焦点を当てて売り込んでいる。導入のしやすさにもメリットがある」--。IT管理ツールベンダーの米SolarWindsは1日、リセラーの丸紅情報システムズ株式会社(以下、MSYS)とともに記者説明会を開催。自社の特徴や日本市場への取り組みを説明した。

 SolarWindsは、日本ではまだなじみのない企業だが、ワールドワイドではすでに10万社の顧客を持ち、2010年度には前年比31%増となる1億5200万ドルを売り上げた、勢いのあるIT管理ツールのベンダーだ。

 もともと、ネットワーク管理ツールから出発した同社の製品は、現在ではストレージ、アプリケーション、仮想化といった分野にも広がっており、同時にネットワークの分野でも、その提供機能を増やしてきた。この理由は、「今日のITインフラは個別に管理されるのではなく、相互に依存しながら行われるようになったため」(SolarWinds バイスプレジデント ネットワークビジネス担当マーケットリーダーのサンジェイ・カステリノ氏)だが、大きく製品が増えても、SolarWindsの基本的な戦略は昔から変わっていないという。


SolarWinds製品のラインアップ。ネットワーク管理ツールの「Orion」や「Engineer's Toolset」などを中核に、アプリケーション管理、仮想化管理、ストレージ管理などさまざまなジャンルの管理ツールを提供している

 その基本戦略とは、導入や利用法が簡単であること。かつ、きちんと使えるものを提供すること。カステリノ氏は、「簡単でなくとも、ユーザーは何とかして使おうと努力してくれるが、最終的には使われなくなってしまう」という点を指摘。SolarWindsの製品では、無償トライアル版でその価値を試し、納得してから導入できる上、ユーザー自身が数分でインストールを行える簡単さを持つとアピールする。

 また利用できる規模についても、1台から数万台まで利用可能な柔軟性を備えているとのことで、実際の顧客にも、小さく入れてから規模や種類を拡大した事例が多いと強調。日本国内での代理店である、MSYS 営業一課担当課長の伊東輝明氏も「従来のIT管理ツールでは、ミニマムでも相当高くついてしまうが、SolarWinds製品では30万円を切る価格から導入可能。小さく入れて大きく広げられるのは魅力的」と話す。

 従ってSolarWindsでは、従来のIT管理ツールのように、最初から大企業の統合管理インフラとして導入を狙う、というような戦略は積極的に取らないという。同社 エンジニアリング担当シニアバイスプレジデント兼アジア太平洋事業担当ゼネラルマネージャのダグ・ヒバード氏は、「規模が小さな企業などでは、大型のIT管理システムは高すぎて購入できない場合が多い。まずは安価に当社製品を使ってもらい、成長に応じて増やしていただく」と、その戦略を説明。

 また、「最大手の企業では、一元化された管理インフラがすでにあるのが普通だが、そうした企業の各部署では、既存の管理ツールでは解決できない問題を抱えているところがあるので、そうしたところに試してもらって、機能をわかった上で購入していただくアプローチもある。既存のツールとは共存する形で使っていただくが、新しく出てくる問題をさらに解決するなどして、各企業に占める割合を拡大する。当社はそうして成長してきた」とも述べ、大企業の部門などにも積極的に展開するとした。


従来型のIT管理ツールと異なり、実際に製品を使うユーザーに焦点を当てて開発されているという簡単で、使い続けてもらえるツールを提供するというのが、同社の哲学だ

 なお、国内ではMSYSに加えて、ミツイワ、ダイキン工業の3社が代理店を務めており、この3社を中核に販売を推進する考え。すでに800社の顧客を抱えているが、今後さらに取り組みを強めて、日本語化などのローカライズを進めていくという。ヒハード氏は「日本語化は段階的に進めており、2012年の早いうちに最初の日本語版が提供される予定だ。また、豪州ブリスベンにオフィスを設け、日本語サポートができる人員を獲得するなどの取り組みを行っている」と述べ、日本でのビジネス拡大に尽力する意向を示した。

 なおMSYSでは1998年からSolarWinds製品の取り扱いを始め、業種を問わず250ユーザー、350システムの販売実績を持つとのこと。現状は大企業が中心だが、「高機能で完成度が高いのに低価格のため、これまで当社が獲得できていなかったスモール、ミッドの層への販売に期待している」(伊東課長)とした。

 またMSYSでは、導入・利用が簡単とはいっても、国内ではユーザー企業からリセラーやSIerには手厚いサポートが求められる点を考慮し、インストール代行ではサポートなどのメニューも提供していく考えで、そうした部分で同社ならではの付加価値を訴求するとしている。


日本市場への取り組みMSYSの狙い
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