弥生、SaaS版の提供延期。来年4月より提供開始へ

既存製品顧客の業務継続性を最優先し、流動的な税改正などに対応


弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

 弥生株式会社は6月23日、弥生シリーズの新製品「やよいの見積・納品・請求書 11」の発表会を開催した。岡本浩一郎社長は、法改正がこれまでにないほど流動的な状況であるため、既存製品ユーザーの業務継続性を最優先し、秋に予定していたSaaS版の提供を2012年4月に延期すると発表した。

 岡本社長は弥生のマーケットシェアについて、本数シェアで2009年41.1%、2010年46.5%、2011年50.2%と2011年も順調に伸び、金額シェアでは2009年58.4%、2010年62.9%、2011年68.6%とさらに大きなシェアを獲得していると説明。

 製品別に見ると、2010年から本数シェアで50%以上を占めていた青色申告および会計に加え、法令改正によって2010年には本数シェア37.7%だった給与計算が57.0%と大幅に伸長した。弥生シリーズでは販売管理が唯一、本数シェアで2010年12.0%、2011年12.3%と伸び悩んでいるが、そこへ今回新製品の「やよいの見積・納品・請求書 11」を投入。これまでExcelなどで処理していた個人事業主などのライトユーザーを取り込み、自社シェア拡大とともに、会計ソフト市場の拡大を目指す。

 「やよいの見積・納品・請求書11」は7月8日発売で、メーカー希望小売価格は1万500円。製品発表と同じ6月23日、弥生は米Microsoftから「Microsoft Country Partner of the Year」を受賞。Microsoftのプレゼンテーションシステム、WPF(Windows Presentation Foundation)技術を採用することで、実際の確定申告用紙と同じ書式を画面で再現し、紙に手書きするのと同じようにわかりやすいユーザーインターフェイスを実現した「やよいの青色申告 11」の確定申告モジュールが受賞対象となった。

 今回発表した「やよいの見積・納品・請求書 11」では「やよいの青色申告」と同様にWPF技術を採用し、紙の伝票に記入するように入力できるユーザーインターフェイスを搭載した。

「やよいの見積・納品・請求書11」7月8日発売、希望小売価格1万500円「やよいの見積・納品・請求書11」帳票編集画面

 また、岡本社長は業績見込みについて、東日本大震災の影響もあり、会計ソフト市場は4月以後やや不安定ではあるが、5月については対前年100%を上回り、6月以後についても震災前と同レベルの成長率を維持することは難しいが、前年を上回る見込みだと述べた。11年度通期としてはおおむね計画通りで、過去最高の売上・営業利益を達成する見込みだとして、震災の影響は限定的となる見通しを明らかにした。

 製品計画については、現状では想定されていた減価償却制度の改正案が見送られたり、算定基礎における保険者算定要件の追加については法令改正が直前に決定されるなど、「法令改正の動きがいまだかつて経験がないほど流動的」(岡本社長)であることから、製品開発の見直しを行うと発表。

 今後、平成23年度税制改正や復興税制、社会保障と税の一体改革などが予測される状況を踏まえ、同社製品の顧客の業務継続性を最優先して流動的な法令改正への迅速な対応を実現するという。そのため、予定していた仕分アドバイザー(ユーザー参加)機能を延期してリリース時期未定に、SaaS版の弥生オンラインの正式開始を2012年4月とすると発表した。

11年度通期はおおむね計画通りの見込み既存製品ユーザーの業務継続性を優先し、新機能やサービスのリリースの延期を決めた

 

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