ソーシャル機能でノウハウ共有、確定申告のUIも一新した「弥生11シリーズ」

SaaS版は11月19日クローズドβ開始


 弥生株式会社は11月9日、業務パッケージソフト弥生シリーズの最新版「弥生11シリーズ」を発表。12月3日に発売すると発表した。価格は「やよいの青色申告11」が10500円、「やよいの給与計算11」が1万9950円。「弥生会計11」はスタンダード4万2000円など。

 なお、「弥生顧客10」のみは今年5月21日の発売からまだ半年しか経っていないため、10のまま継続販売となる。

今後の成長シナリオはソーシャル化による共有、SaaS版は11月19日クローズドβ開始

弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

 弥生は9月決算のため、岡本社長は2010年度を振り返り、この1年で本数シェアは38.2%から43.4%に、金額シェアは58.9%から63.7%といずれも5%前後伸ばすことができたとして、2010年度は「まずまずいい年だったのではないか」と総括。

 岡本社長は続いて今後10年のコンセプトとして「共有・共生・共創」をあげ、従来版から搭載している仕訳アドバイザー機能を弥生11シリーズで新たにソーシャル化しWebで共有するなど、ユーザーと共にノウハウを蓄積し、「日本一の仕訳データベースを作りたい」と述べた。

 また、今年3月にマイクロソフトと共同発表した、Windows Azureベースの小規模企業向け業務サービス「弥生SaaS」については、11月19日から限られた特定顧客向けにクローズドベータの提供を開始する。岡本社長は、「当初予定からやや遅れているが、(発表時に2011年半ばとしていた)サービス開始時期は変わらない」とした。

 岡本社長は弥生11シリーズのコンセプトとして、(1)ソーシャル化、(2)より「かんたん・やさしい」、(3)法令改正対応、(4)サポートのバリエーション化――の4つを上げた。


売上シェア、本数シェアとも対前年で5%前後伸びた弥生11シリーズのコンセプト

ソーシャル機能でノウハウ共有「日本一の仕訳データベースに」

 ソーシャル化については、従来から搭載している「仕訳アドバイザー」機能をWeb版で一般公開。質問や回答など、弥生シリーズのユーザー以外も書き込んで広く利用できるソーシャルサービスとして提供する。ソーシャル仕訳事例データベースは、「弥生会計11」「やよいの青色申告11」シリーズの仕訳事例データベースにも反映される仕組みだ。

 また、テンプレートによるノウハウの共有機能も新たに実装。勘定科目、仕訳辞書、伝票辞書、事業所・消費税設定、決算書項目などのデータテンプレート(KDTファイル)が、「やよいの青色申告11」と「弥生会計11」で共有が可能になった。

 これにより、税理士や会計士が顧客にテンプレートを渡したり、青色申告会が会員にテンプレートを使って指導したりといったことが可能になり、導入時のハードルを下げると同時に、税理士の指導とのズレを防いで効率化も見込めることになる。

 ソーシャル化にあたり、社内で「少しでもおかしい仕訳が目に触れることがあってはならない」「ソーシャルはみなが参加できるべき」などの議論があり「一度は頓挫しかけた(岡本社長)」と言う。

 運用にあたっては、「使い慣れればユーザーのリテラシーも上がっていくと思うが、弥生自身も巡回をかけて正しい情報の提供に務めていく。税理士の先生がOKを出せば、この情報は太鼓判といった情報の正確性を担保することもやっていく」とした。ただし、「掲載後30分など、掲載されて間もない情報は間違った情報も上がっている可能性があるが、そこはソーシャルサービスの特性として考えていただきたい」(岡本社長)。

 なお、仕訳アドバイザーのWeb版は12月、ソーシャル機能は2月下旬の公開を予定している。

仕訳アドバイザーのソーシャル化テンプレートによるノウハウの共有

青色申告・確定申告は提出用紙通りの画面で入力・確認が可能に

 青色申告決算書および確定申告書では、個人事業主の青色申告決算書・申告書の提出用紙に直接入力するようなユーザーインターフェイスを採用。帳票から埋められる数字は自動入力され、入力が必要な箇所や修正が必要な箇所は色分けされて表示されるため、どこを修正・入力すればよいのかが一目でわかるようになった。

 法令改正への対応では、平成23年分以降の所得税から適用される扶養控除などの見直しへの対応や、改正労働基準法で定められた年次有給休暇の時間単位での取得に対応した。

 また、サポートとサービスでは、幅広いユーザーのニーズに応えるためにトータル、ベーシック、セルフの3つのプランを用意。より手厚いサポートを求めるユーザー向けにはトータルプランを設け、コンシェルジェデスクを用意した。また、全プランで利用可能なサービスとして、株式会社インプレスジャパン刊行の「できる」シリーズのMicrosoft OfficeおよびWindows解説書が電子書籍で読み放題となり、Webブラウザーで検索も可能な「業務書籍ライブラリー」を新たに提供する。

申告書そのままの画面で作成できる幅広いユーザーのニーズに応えるためトータル、ベーシック、セルフの3つのプランを用意

強まるマイクロソフトとの連携

 11月19日からクローズドベータを提供開始する、Windows Azureベースの小規模企業向け業務サービス「弥生SaaS」は前述の通り2011年半ばの開始を目指して開発が進められている。

 「弥生11シリーズ」では、仕訳アドバイザーのソーシャル化にあたっては、Silverlight技術を採用。「これにより、Webとソフトのユーザーインターフェイスを統一的に開発できた」(岡本社長)。

 また、実際の申告書類そのままの青色申告決算書と確定申告書作成画面の開発には「Windows Presentation Foundation」を採用した。

 発売キャンペーンのひとつとして、「弥生を買ってOfficeを習おう」と題して、マイクロソフトと弥生がカリキュラムを作り、株式会社オデッセイ コミュニケーションズの持つ1700会場でのセミナー、マイクロソフト会場を使っての各種協業セミナーも展開するなど、マイクロソフトとの連携が開発のみでなく、販売なども含め多面的に進んでいることが伺えた。

 ただし、弥生11シリーズでは、小規模ビジネスに効果が高いとされている検索連動型広告の利活用を促すため、製品パッケージを購入すると検索連動型広告のクーポン券8000円~1万2000円分が入手できるキャンペーンも実施するが、このクーポンはGoogleおよびYahoo! JAPAN両社の検索連動型広告のクーポンが採用されている。

「弥生を買ってOfficeを習おう」と題して、全国各地でセミナーを開催
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