レッドハット、IaaSの構築・管理製品「CloudForms」と開発者向けパブリックPaaSを説明

米国で先行発表したクラウド新製品群


レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏

 レッドハット株式会社は25日、米国で5月3日~6日に開催された「Red Hat Summit & JBoss World 2011」において発表されたクラウド新製品「CloudForms」および「OpenShift」について記者説明会を開催した。

 説明会に先立ち、レッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏があいさつし、「本年度は、期が始まってすぐに東日本大震災が発生したが、当社ではこの震災を乗り越えて成長していくために、4つの方針を掲げている。まず1つめが『震災復興にオープンソースで貢献する』、2つめが『パートナーエコシステムを使ってLinuxビジネスをさらに成長させる』、3つめが『JBossとクラウド事業を2倍に拡大する』、そして最後が『戦略的ソリューションを積極提案する』。この方針のもと、今回、クラウド事業に関して新たに2つの製品が発表されたが、当社としては初めて、オープンソースのプロダクトではなく、クラウドのソリューションが登場した瞬間だった。この発表は、大きなインパクトになった」と、新製品が同社のクラウド事業を支える重要なソリューションであることを強調した。

米Red Hat プロダクトマネージメント&マーケティング シニアディレクターのブライアン・チェ氏

 続いて、米Red Hat プロダクトマネージメント&マーケティング シニアディレクターのブライアン・チェ氏が、クラウド新製品の概要を説明した。

 まず、「CloudForms」は、IaaSおよびハイブリッドクラウドを構築し、管理していくためのソフトウェア製品。「インフラの仮想化を進めている企業は多いが、すべてのリソースを仮想化できていないのが実情だ。そのため、企業のインフラの中には、物理マシンから仮想マシン、クラスタシステム、パブリッククラウドなどまで、さまざまなリソースが含まれており、それぞれを管理する必要がある。しかし、現在提供されているIaaSソリューションは、インフラに含まれる一部のリソースしか管理することができず、クラウド環境をサイロ化させてしまうことにつながる」とチェ氏は指摘する。

 さらに、「企業内に構築した既存のアプリケーションをクラウド上に移行する場合も、従来のIaaSソリューションでは簡単に対応することはできないだろう。アプリケーションをクラウド環境に移行して使うことができなければ、企業はクラウドの本当のメリットを受けることはできない」とし、「今回発表した新製品『CloudForms』は、IaaSによって何ができるのかを再定義し、IaaSを革新的に変化させるものだ」と述べた。

「CloudForms」の3つの機能「CloudForms」のアーキテクチャ

 「CloudForms」が提供する機能は、(1)アプリケーションライフサイクルマネジメント、(2)計算リソースマネジメント、(3)インフラストラクチャサービス--の3つに大きく分けられるという。「これらの機能により、企業のもつインフラ全体にかけて、一部のリソースだけでなく、すべてのリソースを管理することが可能になる。そして、『CloudForms』のテクノロジーを活用することで、より早くプライベートクラウドやハイブリッドクラウドに移行し、そこから多くの価値を得ることができる」としている。

 もう一つの新製品「OpenShift」は、Java、Python、PHP、Ruby用開発フレームワークに対応した開発者向けのパブリックPaaS。「この製品は、従来のようなソフトウェアプロダクトではなく、当社がクラウドサービスとして展開するもの。OSからミドルウェア、サービス、管理機能、拡張機能、モニタリング機能まで、すべてがPaaSとしてインフラ上に構築され、自動化されている。これにより開発者は、アプリケーション開発に専念でき、開発したアプリケーションをPaaSにアップロードするだけで、迅速に市場に展開することが可能となる」と、チェ氏は「OpenShift」の特徴を説明する。

「OpenShift」の概要「OpenShift」の3つの異なるレベルのサービス

 また、「『OpenShift』は、当社が15年間にわたって蓄積してきたオープンソーススタックの集大成となるもの。対応する開発プラットフォームは、JavaからPython、PHP、Rubyまでをカバー。ストレージサービスについてもMySQL、mongoDBに対応している。他社の提供しているPaaSと比較しても、これだけの選択肢を用意しているものはほかにはない」と、同社ならではのPaaSのメリットを訴えた。

 「OpenShift」では、自動化と制御の機能レベルに応じて、「EXPRESS」「FLEX」「POWER」の3つのバージョンを容易。「EXPRESS」では、「OpenShift」にコードをアップロードするだけで、アプリケーションの拡張や管理、配信などをすべて自動化できる。「FLEX」は、自動化レベルを軽減することで、開発者のコントロールできる機能を増やしたバージョン。例えば、ミドルウェアのプラットフォームの構成設定の変更などが行えるようになっている。そして、「POWER」では、開発者に完全なコントロールを与え、自身でカスタマイズしたプラットフォームを構築することができるという。

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(唐沢 正和)
2011/5/26 10:04