日立ソリューションズ、自社GISを用いた金融機関向け地図情報システム

震災対応で、GeoPDFを自治体に無償提供などの取り組みも


 株式会社日立ソリューションズは5月24日、営業支援システムと地図情報システムを組み合わせた金融機関向けソリューションとして、地理情報システム「GeoMation」を用いたシステム「金融機関向け地図情報システム」を8月1日より販売開始すると発表した。価格は個別見積もりとなる。企業内ネットワーク上に専用サーバーを設置するソリューションとなるが、今後クラウド対応やモバイル対応も予定している。

クロス分析を“見える化”し、営業戦略を支援

日立ソリューションズでGISシステム開発を担当。説明会でデモを行ったトルコ出身のバハディア・ギュルテキン氏

 「金融機関向け地図情報システム」は日立ソリューションズのエンタープライズ型地理情報システム「GeoMation」を基盤に、顧客位置情報表示機能と統計分析機能から構成される。「GeoMation」は、地図の拡大・縮小、回転、スクロール、レイヤ表示制御などをサポート。地図上に顧客位置情報表示や統計分析機能を重ね合わせて、エリアごとの情報を“見える化”する。利用形態としては、本部や営業店からWebブラウザー経由でシステムへアクセスし、利用する形になる。

 顧客情報、外部企業情報、エリア別統計情報を地図上にダイナミックにリンクし、営業活動に関わる情報を視覚的・統計的に把握できるよう、さまざまな形で表示することが可能。具体的には、丁目ごとの地域の人口推移統計データを取り込み、顧客データと合わせてエリアごとのシェアを色分けで表示したり、人口の伸び率を色分けで表示したりすることが可能。さらに、人口の伸び率が高いが自社シェアが低いところなど、クロス分析の結果をビジュアル化して表示させることが可能。このクロス分析をビジュアル化できる点が、最大の特徴となる。

 また、通常の住所から緯度経度に変換することが可能になり、企業の位置情報を地図上で示すことが簡単にできるようになった。企業名と住所の表を取り込むことで、金融機関の支店周辺の企業の位置を一覧するような利用が可能となる。


「金融機関向け地図情報システム」利用イメージシステムの特徴。顧客位置情報表示機能と統計分析機能を持ち、クロス分析の“見える化”表示も可能

 

GISを震災支援に無償提供

日立ソリューションズ 執行役員 村本眞治氏

 
 日立ソリューションズ 執行役員の村本眞治氏は記者説明会で、「今回の東日本大震災に際しては、震災前のゼンリン住宅地図、浸水推定データ、および被災後の衛星画像の3枚をレイヤーで重ねたGeoPDFファイルを自治体などに無償提供し、り災証明の発行などに利用していただいている。今後も復興支援に対する努力をするとともに、グローバル化に対する努力をしていきたい。国産GISのGeoMationを世界に広めたいと考えている」と述べた。

 被災地の自治体などに提供されたGeoPDFファイルは、株式会社ゼンリンの「Zmap-TOWNII」を利用した住宅地図データ、株式会社パスコの「浸水推定データ」、米国DigitalGlobe社の衛星画像を各社の協力を得て利用し、日立ソリューションズのGeoPDF生成ソフト「GeoMation with TERRAGO PUBLISHER」により作成した。

 また、株式会社ニコン・トリンブルの協力を得て、GeoPDFファイルへの書き込みソフトを搭載した同社のモバイル端末「GPS pathfinder SB(ジーピーエス パスファインダーエスビー)」を同時に提供。これにより、現場において現地の情報や写真をGeoPDFファイル上へ入力が可能となる。日立ではあわせて50インチディスプレイも対策本部に提供し、情報共有や復興支援活動の立案に活用するなどの支援も行っている。


東日本大震災の復興活動のために、被災地の対策本部や自治体にGeoPDFファイルなどを無償提供「GeoMation」では今後、震災対応でも活用されているGooPDFとの連携を強化。災害対応などでの実効性を高める

 

GIS事業~GeoPDFとの連携強化、グローバル化を急ぐ

日立ソリューションズ 社会・公共システム事業本部 社会販売企画推進部長 秋田孝洋氏

 社会・公共システム事業本部 社会販売企画推進部長 秋田孝洋氏は、GIS業界の流れや今後の動向などについて解説した。

 「GISシステムでは、地上の建造物だけでなく、水道、電気、通信回線などの地下埋設管路や設備も含め、何枚もの図面をレイヤーとして重ね合わせるようにして情報を保持できる。このため、自治体では以前から災害情報などが注目を浴びている。導入目的としては有事の際の活用ということになるが、税金で導入することになるため、有事の際だけではなく平時にも有効活用できるシステムが求められている」と自治体などのニーズを説明。

 GIS業界の成長率は、調査会社のデータによれば2009年はマイナス4.0%とマイナス成長となったが、2011~2012年にかけては、前年比6~7%程度の安定した伸長が予測されているという。業界動向としては、データ標準化の動きも活発化する一方で、顧客ニーズの面ではスマートフォンやAR対応などが求められていると述べた。ここ数年利用分野も拡大しており、今回の金融機関向けソリューションもそのひとつだという。業界別では、製造・金融・流通分野向けに安定した成長が見込まれるとした。

 自社開発のGIS「GeoMation」については、様々な接続形態やビューワー、OS、データベースをサポートしており、オープンシステムが構築可能。また多様なデータ取り込みに対応するため、顧客のさまざまなニーズに合わせての提供が可能だと述べた。また、基本的にはオンプレミス型の専用サーバーによる提供となるが、SaaS型のGeoMation Netserviceも提供する。今後はGeoPDFとの連携を強化し、GeoMation Farmの海外展開などグローバル化を進めるという。


GISの特長GIS業界の流れと今後の動向
GISによる情報の有効活用市場動向
GeoMationの特長GeoMationの特長~多様性・接続性
GeoMationの特長~拡張性・移植性GeoMationの特長~適応性・柔軟性
関連情報
(工藤 ひろえ)
2011/5/24 15:29