NEC、2010年度上半期決算は営業黒字化達成も、前回予想値を下回る結果に


代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏

 日本電気株式会社(NEC)は10月28日、2010年度第2四半期累計(2010年4~9月)連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比11.2%減の1兆4692億円、営業損益は前年の377億円の赤字から大きく改善し11億円の黒字、経常損益は前年の499億円の赤字から改善したものの223億円の赤字。当期純損益は前年の436億円の赤字から166億円改善し270億円の赤字となった。

 減収増益という結果について、代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏は、「売上の減少は、当社グループで半導体事業を行ってきたNECエレクトロニクス(現ルネサスエレクトロニクス)が連結子会社でなくなったことに加え、キャリアネットワーク事業が減収になったことが大きく影響した。一方、収益面については、NECエレクトロニクスが前年同期において営業損失を計上していたため、連結子会社でなくなったことにより営業黒字化を達成した」と説明した。

 また、今回発表した第2四半期累計の実績値は、売上高、営業損益、経常損益がともに7月28日に公表した予想値を下回る結果となった。「売上高については、キャリアネットワーク事業、ITサービス事業などの事業分野での売上減少により、前回予想に比べて308億円の減少となった。営業損益も、キャリアネットワーク事業とITサービス事業の売上減少にともなう損益の悪化などにより39億円下回った。経常損益は、営業損益の悪化により、前回予想に比べて23億円悪化した」(遠藤氏)と、キャリアネットワーク事業とITサービス事業の不振が大きく響いたと強調した。


上期概況サマリーセグメント別の上期実績

 セグメント別では、ITサービス事業の売上高は前年同期比1.7%減の3710億円、営業損益は61億円悪化の35億円。金融業・製造業などの一部の業種向けのSIサービスやアウトソーシングサービスが改善傾向にあるもの、国内における全般的なIT投資の回復の遅れが響き、売上が減少した。営業損益は、売上の減少やサービス関連事業およびグローバル事業拡大に向けた投資の増加などにより大きく悪化した。

 プラットフォーム事業の売上高は前年同期比6.4%増の1768億円、営業損益は119億円改善したものの15億円の赤字。ソフトウェアや企業向けネットワークなどが堅調に推移したことなどにより、増収を達成。ソフトウェアは、仮想化によるシステム統合、運用管理領域、コンプライアンス対応に向けたセキュリティ領域が伸長した。ハードウェアは、大型案件によるUNIXサーバーの伸長に加え、IAサーバーが堅調に推移し、前年同期並みを確保した。営業損益は、売上の増加や継続的な費用削減などにより、大きく改善した。

 キャリアネットワーク事業の売上高は前年同期比12.2%減の2710億円、営業損益は54億円悪化の70億円。海外向け無線通信機器の売上の減少や、海洋システムの契約手続きの遅れなどによって減収となった。営業損益は、費用削減を行ったものの、海外における売上の減少などにより大幅に悪化した。

 社会インフラ事業の売上高は前年同期比6.3%増の1379億円、営業損益は13億円改善の40億円。交通、消防など社会システム分野が堅調に推移したことで増収を達成。営業損益も、売上の増加やコスト削減などにより増益となった。

 パーソナルソリューション事業は売上高が前年同期比8.2%増の3921億円、営業損益は53億円悪化の29億円。携帯電話機市場における競争激化による販売不振でモバイルターミナル事業が微減したものの、企業向け・個人向けパーソナルコンピュータの売上増加などにより増収。営業損益は、携帯電話機の売上の減少などにより減益となった。

 その他事業の売上高は前年同期比61.1%減の1205億円、営業損益は406億円改善して30億円となった。

 こうした結果を受け、通期連結業績予想を修正した。

業績予想サマリーセグメント別の通期業績予想

 売上高は前年比7.9%減の3兆3000億円、営業利益は前年比96.4%増の1000億円と前回予想通りとなる見込みだが、ルネサスエレクトロニクスに係わる持分法投資損失の計上などを織り込み、経常利益は前回予想に比べ150億円悪化の550億円に下方修正した。なお、当期純利益は前年比31.3%増の150億円としており、前回予想から変更はない。

ITサービス事業の下期重点施策

 通期の業績予想達成に向けた施策について遠藤氏は、「上期に不振だったITサービス事業、キャリアネットワーク事業を重点的に強化する。ITサービス事業については、依然先行き不透明感はあるが、金融業・製造業などを中心に経営課題解決への提案に注力して売上拡大を図る。キャリアネットワーク事業では、ワイヤレスブロードバンドアクセス、モバイルバックホール、海洋システム、サービス&マネジメントの4重点領域での売上拡大と既存領域での売上確保を目指す」との考えを示した。

 また、携帯電話の販売が落ち込んでいるパーソナルソリューション事業については、「上期に不振だった携帯電話を、好調なビジネス系商品(ビジネスPC、パブリックディスプレイ、デジタルシネマプロジェクタなど)や、個人向け商品(高付加価値PC、WiMAXルータ)などでカバーしていく。携帯電話のテコ入れとしては、アンドロイド搭載のスマートフォンを、年度内に海外市場向けに、来年度上期には国内市場向けに投入する」(遠藤氏)としている。


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