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リコー、中期経営戦略'26の進捗を「オフィスプリンティングの収益維持」など3点から説明

2026年度上期は営業利益2倍超の大幅増益、通期見通しを上方修正

 株式会社リコーは6日、大山晃社長 CEOが「中期経営戦略'26」の進捗について説明。「2026年度上期は、ワークプレイスサービス事業のストックが順調に積み上がった。今後も継続的に業績を上げ、ROEおよびPBRを改善していく。そのためには、リカーリング収益を積み上げることが大切である」と発言。また、「環境の変化に機動的に対応しながら変革を遂行し、企業価値を向上させる」との姿勢を強調した。

リコー 代表取締役 社長執行役員 CEOの大山晃氏

 リコーでは2026年度から、5年先を見据えた計画を打ち出す一方、毎年計画を見直すローリング方式を採用。2030年度には、ROICで7%以上、ROEで10%以上、ストック利益で15%増以上を目指している。

 「中期経営戦略'26」では、オフィスプリンティングで培った技術の強みを生かし、機能する印刷の提供価値を拡大するとともに、顧客基盤や顧客接点を生かしてワークプレイスサービスやAX/DXの価値提供を拡大することを掲げている。今回の説明では、「オフィスプリンティングの収益維持」、「ストック利益の積み上げ」、「リコーの将来を創る取り組み」の3点から進捗に触れた。

事業の方向性

 「オフィスプリンティングの収益維持」では、守りとする「顧客MIF防御」と、攻めと位置づける「グローバル大手顧客を中心とした新規顧客獲得」に取り組んでいることを示した。

 「オフィスプリンティング事業は、業界構図が変化する環境下においては、足場をしっかりと固めることが大切である。上期のA3カラーMFPの販売台数は、市場全体では4%減となっているが、リコーは1%増となっている。また、ETRIA(エトリア)についても、新エンジンの開発が順調に進んでいる」とした。

オフィスプリンティングの収益維持(MIFマネジメント)

 2つめの「ストック利益の積み上げ」に関しては、「オフィスプリンティングのストック利益の推移は、前年同期比5%増と順調である。また、ワークプレイスサービス事業のストックは同6%増となっており、2025年度に売却した北米のITサービス事業会社の影響分を除くと10%増となる。

 ITサービス事業のターゲットが大手顧客にシフトするなか、中小企業を主体としていた北米ITサービス事業を売却した。その代わりに、大手顧客にニーズが高い、ワークプレイスサービス領域におけるAV(オーディオビジュアル)に対応できるインテグレータを買収している」と説明した。

 リコーが対象とするグローバル大手企業では、AVマネージドサービスに対する需要が高まっており、リコーでは、それらの事業を行える企業を、2025年度に米国とカナダ、ブラジルで買収。2026年度には、アジア9カ国をカバーするAVインテグレータを買収したという。

 具体的な上期の成果として、グローバル医薬品会社では、7000会議室を対象にしたWE(ワークプレイスエクスペリエンス)商談を獲得。OP(オフィスプリンティング)も6000台の導入を獲得した。また、グローバル製造業会社では、WEで5000会議室、OPで1万台の導入実績を得たという。

 「グローバル大手企業は、グローバルにフットプリントを持つリコーの強みを生かせる領域である。競争優位性がある分野において需要が高いAVマネージドサービスに対応するために、グローバルネットワークを着々と構築しているところである」とした。

ワークプレイスサービスのストック拡大(WE)

 そして、「リコーの将来を創る取り組み」としては、AXおよびDXに関して言及。「リコーは、1980年代から、AIへの取り組みを進めており、画像および空間処理の技術は、深層学習の登場以前から取り組んできた経緯がある。現在は、リコー独自のLLMを開発しており、日本語処理だけでなく、日本のオフィス文書でよく使われる図表やフローチャートも正確に理解することができる点が特徴だ」とした。

 独自LLMでは、機密情報を社外に出さずに活用できる「オンプレLLMスターターキット」を発表し、レンタルによる提供を可能としていることから、初期投資を抑えながら、短期での導入を実現できる環境を提供したほか、MoE(Mixture of Experts)型LMMとして「リコーLMM_35B-A3B」を発表。推論時の計算量を抑え、必要な機能のみ使い、高速化と計算負荷削減を実現できるようにしている。

 また、2026年11月には、川崎重工とのパートナーシップを発表し、リコーが持つAI技術を活用して、設計文書や図面など、設計業務における高度な知識資産と、熟練技術者が持つ経験や判断、ノウハウなどの暗黙知を横断的に理解、整理して、活用する方法を検証するという。「川崎重工には、社外に持ちだせない重要な資料や情報がたくさんある。リコー独自のLLMを、オンブレミスで活用することができる。利益に合致した提案になる」とした。

 また、AIを活用した3Dデジタルツインにおいては、東京電力パワーグリッドが、建物保全業務に導入したことを、2026年10月に発表。リコーが開発した360度カメラで撮影した映像から、世界最高水準の高精細な3Dモデルを生成する技術を活用して、壁面や床面を含む空間全体を、欠損を抑えた3Dモデルとして生成できるという。

 「画像技術などによって実現する3Dデジタルツインは、将来のフィジカルAIの目としても活用できる」とした。

リコーの将来を創る取り組み(AX/DX)

 将来に向けたリコーの新たな取り組みとして紹介したのが、ペロブスカイト太陽電池である。商用・産業印刷で培った既存技術をレバレッジし、機能する印刷の提供によって、価値を拡大する取り組みのひとつに位置づけている。

 「リコーでは、『機能する印刷』の事業化の柱として、インクジェット技術を活用したペロブスカイト太陽電池の量産に向け、生産体制の構築に取り組んでいる。リコーのインクジェット技術は、粘度の高い液体を飛ばすことができる。また、さまざまな材料を飛ばせるインクへと変える技術や、インクジェットを使ったシステムを構築する技術を持つ。これらを組み合わせることで、ペロブスカイト太陽電池の量産に貢献できる。設備投資額に対して、高い生産性を確保でき、投資効率の高い生産方法が確立できた。生産装置はコンパクトであり、国内各地に分散して設置できる。想定している生産装置では、3台で、原発1基分に相当するペロブスカイト太陽電池を1年間で生産できる。AIデータセンターで使用する電力を再生可能エネルギーで賄うという未来に対しても貢献できる」と述べた。

 なお、リコーのペロブスカイト太陽電池への取り組みは、経済産業省のGXサプライチェーン構築支援事業に採択されており、総事業費は300億円。2030年度までに収益貢献する計画であり、それに向けて市場に向けて製品を投入。さらに、投資の増額も検討する考えを示した。

リコーの将来を創る取り組み(技術のレバレッジ)

 さらに、今回の説明では、2026年1月から、社外取締役および社外監査役によるストラテジック・レビューを開始したことについて触れた。

 「リコーは長年にわたり、ROEやPBRが市場の期待値には達していない状況にある。ストラテジック・レビューでは、さまざまな視点と専門性を持った社外の役員に、株主目線で戦略を再検討してもらう場になる。執行部門としてもポジティブに受け止めている」と語った。

ストラテジック・レビューの全体像

2026年度上期は営業利益107.2%増の大幅増益

 一方、リコーが発表した2026年度上期(2026年4月~9月)の連結業績は、売上高は前年同期比5.9%増の1兆2944億円、営業利益が同107.2%増の734億円、税引前利益は同95.8%増の732億円、当期利益は同126.9%増の557億円の増収増益となった。

連結損益計算書

 リコー 取締役 コーポレート専務執行役員 CFOの川口俊氏は、「増収増益となり、一過性要因や為替効果を除くベースでも前年実績を上回った」と総括した。

リコー 取締役 コーポレート専務執行役員 CFOの川口俊氏

 セグメント別では、ワークプレイスサービスの売上高が前年同期比2%増の5290億円、営業利益は前年同期から28億円増の30億円となった。そのうち、ストック(ノンハード)の売上高が前年同期比9%増の2345億円、売上総利益は前年同期から6%増の655億円となった。

 また、日本における売上高は前年同期比4%減の2598億円、欧州の売上高が同10%増の1457億円、米州の売上高が同9%増の1047億円となった。

 「ワークプレイスサービスは、売上高、営業利益は前年同期実績を上回ったが、欧米を中心に投資が弱含みであり、計画に対しては未達となった。日本は、PCおよびサーバー価格高騰による買い控えが影響しているが、ITサービスやアプリケーションサービスは増収を継続している」とした。

 2026年度下期については、「地域特性を生かした最適なインテグレーションの提供、高収益なサービスポートフォリオの構築および拡大を目指している。日本では、複数サービスを利用する顧客の拡大および深耕を推進しているほか、新会社として、リコーAIコンサルティングを設立し、課題解決型提案を強化していく。さらに、中堅企業でのDifyの活用浸透を図るためのメニューを拡充する。一方で、欧州では、サイバーセキュリティなどのITサービス領域や、WE(ワークプレイスエクスペリエンス)領域でのシナジー獲得や売り上げへの貢献を進めるほか、欧州各国で進むデジタルインボイス規制に対応した商談の増加など、ドキュメント業務のDXおよびAX案件を増やしている。米州では、WEの売り上げが倍増している勢いを維持。GMA(グローバルメジャーアカウント)では、WE領域での受注を拡大しており、各地域で買収会社を核とした体制強化を進めていく」と述べた。

ワークプレイスサービス

 MFPやスキャナー、プリンターなどのデジタルプロダクツの売上高は、前年同期比7%増の5424億円、営業利益は前年同期から24億円増の443億円となった。そのうち、ストック(ノンハード)の売上高が前年同期比8%増の2831億円、売上総利益は同5%増の1814億円となった。

 「売上高は、為替影響を除くと前年並みとなり、米国の関税還付などを含むと増益になる。一方で、メモリ価格の影響や中東情勢の影響がマイナスに影響している。MIFマネジメントはしっかりと進めており、台数を稼ぎながら利益計画を達成している。日本では、ハードウェアでの収益性を確保しながら拡販を進めている」と語った。半導体およびメモリのコスト向上によるマイナス影響は、価格転嫁施策などもあり20億円程度となっている。

 なお、複合機などの開発、生産を行うETRIAについては、資源循環を競争力に転換する「Circular New」のコンセプトを発表したほか、半導体およびメモリのコストアップに対して、購買および生産努力、価格転嫁に取り組んだという。

デジタルプロダクツ

 グラフィックコミュニケーションズの売上高は前年同期比9%増の1444億円、営業利益は前年同期から95億円増の45億円と黒字に転換。そのうち、ストック(ノンハード)の売上高は前年同期比11%増の761億円、売上総利益は同12%増の436億円となった。

 「商用印刷ハードは、中東情勢の影響や景況不透明感から、欧州を中心に不振となっているが、米州では改善の兆しが出ている。第2四半期は為替影響を含めてプラスに転じている。商用印刷ノンハードは、これまでのストックの積み上げにより、堅調に推移し、収益を下支えしている。産業印刷は、前年度までは苦戦していたが、販促用途プリンター向けのインクジェットヘッドの出荷が好調。厚木事業所内に、インクジェットヘッドの生産を行う新棟を2028年度上期に稼働させることも発表した。インクジェットヘッドは、今後の収益貢献を期待している分野である」と位置づけた。

グラフィックコミュニケーションズ
リコー厚木事業所 新棟

 インダストリアルソリューションズの売上高は前年同期比11%増の567億円、営業利益は前年同期から4億円増の19億円となった。サーマルが米州での需要が回復して、増収増益になった。

 その他の売上高は前年同期比20%増の259億円、営業利益は前年同期から29億円増の3億円となった。RICOH GRシリーズを中心としたカメラ事業が好調で黒字化。Smart Visionは、ハード単体の販売から、ストック収益基盤につながるクラウドサービスの展開へとシフトが進んだという。

インダストリアルソリューションズ・その他

 一方、2026年度(2026年4月~2027年3月)通期業績見通しを修正した。売上高は据え置き、前年比3.5%増の2兆7000億円としたが、営業利益は80億円増額し、同13.5%増の1030億円、当期利益は75億円増額し、同24.8%増の695億円とした。ROEは、5.1%から6.0%に計画を引き上げた。

 「下期の営業利益の計上は300億円にとどまるが、このなかには、メモリ価格の影響、販売促進、グラフィックコミュニケーションズでの開発費の増加などで、約200億円のコストがかかる。これを含めたものになる」とし、「上期の事業実績を踏まえ、販売ミックスは見直さなくてはいけない。半導体やメモリ価格の上昇、中東情勢によるコスト上昇に対して、価格対応などで吸収を図るが、影響額は期初想定を上回ることになる。経費削減、コストコントロールなどで対応する」と語った。

2026年度 通期業績見通し